こんにちは、薬剤師のぽりまーです。今回は「薬の用法」について、意外と知られていない基本から、覚えておくと役立つかもしれない応用知識までをざっくりお伝えしたいと思います。これまであまり用法について意識したことがなかった人も、気にせずにはいられなくなるかも…!?笑
さっそくですが、クイズです!!
これは、とある薬の添付文書に記載されている《用法・用量》です。では次のうち、この薬の正しい飲み方はどれでしょうか?
1)1日3回 毎食後
2)1日3回 毎食前
3)1日3回 朝夕食後、就寝前
答えは……ドコドコドコ
1~3すべてです!(ジャジャン!)
そう、引っ掛けでもなんでもありません。「1日3回」を素直に受け取れば正解にたどり着けるはずですが、なんとなく「薬は食後に飲むもの」という先入観、持っていませんか?
薬は食後に飲んだほうがいいんじゃないの?
クイズの用法には服用時点の記載がありませんでしたが、縛りがある場合は「食後」「食前」「朝」などが明記されます。
よって、特に書いていない場合は基本的に食事と関係なく飲んで大丈夫なのです。しかし!飲み忘れを防ぐためには、生活リズム上の食事タイミングと合わせたほうが良いです。また、食後に飲むことで胃粘膜保護もできるので、ある意味「薬は食後に飲む」という認識は正しいのかもしれません。味のついた薬をご飯前に飲むと、食事の味を損ねる可能性もありますしね。
まとめると、薬は基本的に“食後に飲むもの”という認識でOK。ただし、服用時点が用法に記載されている場合はそれを守るべし!
用法を守らないとどうなるの?
「薬は用法・用量を守って正しく使う」なんてこと、医療者の皆さんはよーくわかっておられると思いますが、実際に守らなかったらどうなると思いますか?
薬の用法に細かい縛りが設定されている理由には、いろんな背景があります。
・食事によって吸収性が良くなったり悪くなったりする
・特定の服用時点で飲まないと期待する効果が得られない可能性がある
・特定の用法・用量でしか臨床試験をしていない など
よって、用法・用量を守らない(=指定されたタイミング以外で使う、一日量・一回量を明らかに超えた量を使うなど)と、薬がうまく効かない、副作用が出やすくなるなど、飲む側にとってデメリットが生じる可能性があるわけです。
さらに重要なこととして、適応外の使い方をしていた場合は、万が一重大な副作用などが生じたとしても補償の対象となりません!! 薬の効き方には個人差があり、いつどんな薬で副作用が起きるかはわかりません。自分を守るという意味でも、用法・用量は必ず守りましょうね!
おまけ:服用回数にまつわる豆知識
ところで、薬を飲む回数は1日1回から3回以上のものまでありますが、この違いについても少し説明しておきましょう。飲む回数が少ない=効き目が強いと誤解されていることもありますが、飲む回数が少ない=効き目が長いというのが正しい認識です。
一日は24時間なので、単純計算すると1日1回の薬は24時間おき、1日2回の薬は12時間おき、1日3回の薬は8時間おきに飲むのが理想的ではありますが、実際には食事や睡眠時間との兼ね合いなどがあり、守れないこともあるでしょう。次の服用時間が近い場合は1回飛ばす対応で問題ありませんが、目安を覚えておくと役に立つ場面があるかもしれません。
《最低限あけるべき間隔の目安》
・1日1回の薬は、8時間以上
・1日2回の薬は、5時間以上
・1日3回の薬は、4時間以上
間隔が短かった場合も、その次から本来飲むべきタイミングに戻せば大丈夫です! ぜひ、用法・用量は薬を使う前にしっかり確認してくださいね☆
調剤薬局時代に研修認定薬剤師を取得し、現在の本職は編集者。糖尿病クリニック、在宅専門薬局で週1回ずつ薬剤師をやっている。臨床現場のリアルな声を届けられる編集を目指している。
Twitter:@care_nekko