皆さんの病院で最も多く扱われている薬剤の剤型は何でしょうか?おそらくそれは錠剤です。
ところが、一口に錠剤と言っても意外と種類がたくさんあり奥が深い剤型です。
今回は様々な特徴のある錠剤のうち内、特によく見かける錠剤についてご紹介します。
一番基本の素錠・フィルムコーティング錠
最も基本的な錠剤です。素錠は有効成分と添加物を混ぜ込み、打錠機(錠剤を成型する機械)で打ち込んだシンプルな錠剤です。
フィルムコーティング錠は錠剤の外側にコーティングが施されています。
コーティングすることにより味・匂いをマスキングしたり、不安定な有効成分を守ることができます。
素錠の中には後述する口腔内崩壊錠のように少量の水で崩壊するものがあり、基本的な錠剤とはいえなかなか侮れません。
後発医薬品の普及で一気に数の増えた口腔内崩壊錠(OD錠)
少ない水分で崩壊する錠剤です。製品名の後ろの方に”D”や”OD”がついています。
たまに水なしで飲めると紹介されることがありますが、唾液がでる患者さん限定のお話です。
高齢の患者さんのように唾液が十分出ない人は錠剤を崩壊させることができないので、水が必要になります。とはいえ通常の錠剤よりは少ない水で飲めるので非常に便利な剤型です。
最も味が多彩な錠剤がこの口腔内崩壊錠です。ミントやオレンジヨーグルト、バナナ、パイナップルなど色々な味があります。とはいえ、本当にその味と感じるかは人によります。
高齢の患者さんでも服用している場合が多いのですが、少し注意が必要です。
少量の水でもよく崩壊しますが、とろみ調整食品でとろみをつけた水分とは相性がよくありません。
できる限り普通の水分で服用してもらうようにしましょう。
取り扱い注意が必要な徐放錠・腸溶錠
薬剤を長く効かせたい、副作用を減らしたい、胃酸で分解されてしまう有効成分を体内に吸収させたいといった目的のための錠剤です。
錠剤の表面のコーティングで成分の放出速度を制御しているものや、放出を制御している顆粒を含んでいるなどの高度な工夫がされています。
その工夫を壊すような服用方法(噛み砕く、粉砕する)をしてしまうと、薬の効果がなくなったり、血中濃度が一気に上がって有害事象のリスクが上がってしまいます。
噛み砕いて服用している患者さんがいないか注意しましょう。
病棟で粉砕している人がいたら止めてあげましょう。
最後に
今回は錠剤の中でも特によく見かける錠剤の種類を紹介しました。もし興味を持ってもらえたら、薬剤師に採用薬の錠剤について聞いてみてください。意外な発見があるかもしれません。
参考文献
1)YAKUGAKU ZASSHI 138, 353-356 (2018)
後発医薬品企業勤務の後、病院薬剤師。いわゆる中小病院で糖尿病・感染症領域を主にうろうろと。