多職種で考えよう!リアリティショックの現状と対策

近年、リアリティショックなどが原因として、入職から数ヵ月で休職・退職に至ってしまう事例が問題となっています。現場ではどのような対策ができるのでしょうか。

多職種で話し合ってみると、何かヒントが見つかるかもしれません。メディッコメンバーに、経験談を聞いてみました!

memo
リアリティショック:実際に職場で働くようになって感じる「現実」とのギャップに衝撃を受けてしまうこと

参加者

 大平拓巳(PT)
理学療法士。1年目は急性期の整形外科・形成外科病棟に配属

 イサミ(Ph)
薬剤師。 1年目は病院の調剤室に配属

 坂場(OT)
作業療法士。1年目は精神科単科の病院に入職

 タサモ(ME)
臨床工学技士。1年目は100床の透析メインの病院に入職

 白石弓夏(Ns)
看護師。1年目は総合病院の小児科に配属

リアリティショックを感じた場面

白石(Ns)

皆さんは、新人時代にリアリティショックを感じましたか? どんな場面であったか、教えてください。

薬学部では薬を「成分名」で勉強するのですが、働き始めると「商品名」を使うことがほとんどです。最初は何の薬かさっぱりわからず、まずはそこから勉強しなきゃいけないのか! とショックを受けました。

イサミ(Ph)

白石(Ns)

看護師でも同じようなことがあります。薬剤関連は苦労しますよね…。

他には、病棟で働き始めてから病態の理解が重要であることも知りました。薬学部は調剤薬局や製薬企業など、病院以外の就職先も多いので、病態の理解が浅くてもそこまでとがめられないように思います。働き始めてから勉強するのは大変でした。

イサミ(Ph)

僕は作業療法士ですが、精神科への配属が決まったばかりのときは、暗いイメージの病棟を想像していました。しかし、いざ病棟に入ったら明るい表情をしている入院患者さんもいて、「本当にここは病院なのかな?」と思うことも多かったです。

坂場(OT)

白石(Ns)

なるほど。明るいイメージに変わったんですね。

また、患者さんの症状は教科書通りの症状とは限らないことも学びました。学校で勉強した作業療法は個人の作業についてでしたが、精神科での作業療法は集団で行うといった相違点があり、どうすれば良いかわからないこともありました。

坂場(OT)

僕は理学療法士として、入職時に脳卒中病棟の配属希望を出しました。しかし、いざ入職してみると整形外科の急性期に配属だったので、ネガティブな気持ちを抱えていました。急性期だと患者さんがどんどん入れ替わるので、自分が思っていたよりも患者さんとの関係作りができず、担当拒否をされたこともあり、最初のころはショックでしたね。

大平(PT)

白石(Ns)

希望の配属先と違うと、悩むことも多そうですね。

僕は臨床工学技士として現場に出て、血液透析や呼吸療法に携わっていましたが、やはり教科書通りにいかないことが多かったです。透析患者さんからすると、新人や若いというだけで穿刺を拒否されたり、話を聞いてくれないということもあり、技術や経験が足りないという事実を痛感しました。また、医療機器のトラブルについてはあまり教えられていなかったので、故障したから見てほしいと言われて、焦ってしまうこともありました。

タサモ(ME)

白石(Ns)

看護師である私も、実際の患者さんと教科書で習ったことは違うなと感じることは多かったです。でも、実習中からも感じていたことだったので、私自身はあまりギャップを感じなかったですね。それよりも、コストカットだとか電子カルテ操作、書類関連で覚えることが多くて大変でした。

リアリティショックをどうやって乗り越えたか

白石(Ns)

皆さん、さまざまなリアリティショックを受けていたようですが、どのように乗り越えましたか?

僕が一番ショックを受けたのは「卒業した後もこんなに勉強しなきゃいけないのか」ということでした。そこで、同期と協力して教えてもらった業務や学んだことを共有しました。要は仲間を大切にしようということですね。おかげさまで、今では勉強が大好きです(笑)。

イサミ(Ph)

そうですね~。僕は症状の個別性をより重視し、教科書通りではない患者さんの状態把握のため、カルテの情報や実際の会話から個人の特徴を掴むように意識しました。働き始めてからの方が、作業療法の勉強を熱心にしていると思います(笑)。臨床に触れながら勉強することで、学生時代にはあいまいだったことが、納得できる場面も多くなりました。

坂場(OT)

白石(Ns)

ふむふむ

僕は希望通りにはいかなかったけれど、それを引きずっていても仕方ないので、とにかく整形外科領域の勉強をしました。また患者さんとの関係作りは、現場でのトライアンドエラーを繰り返す中で先輩にアドバイスをもらったり、主任に訓練同行をしてもらい指導を受けたりすることで克服しました。

大平(PT)

僕も教科書だけでなく専門書や医学雑誌も読むようになりました。先輩や上司、メーカーや近隣病院の同職種に聞くと、学校と現場での知識の差を早く埋められると感じました。

タサモ(ME)

白石(Ns)

ふむふむ

技術面でも先輩のよいところを盗み、若くてもしっかりとした知識と技術を持った医療者だと思ってもらえるように、根気強く接していました。また、機会があるたびに医療機器を分解し、構造を理解して組み立てられるようになったり、メーカーのメンテナンス講習会に参加したりすることで、見た目だけでなく実際の知識と技術も習得しました。

タサモ(ME)

白石(Ns)

難しいですよね~。私は学校と現場ではあれこれ違うと言い出したらキリがないなと。なので、半分諦めたというか、「こういうもんだ」と思うようにして、気持ち新たに現状を受け入れるようにしていました(笑)。

新人への指導場面で気を付けていること

白石(Ns)

反対に新人への指導場面で、リアリティショックが少なくなるように工夫していることはありますか?

ショックを受けている新人には、自分も同じようにショックを受けたって経験を話しますね。それは皆が通る道なので、まずはそれを受け止めて、じゃあどうすればいいかを一緒に考えてみようと伝えます。

イサミ(Ph)

僕はあまり新人さんと接する機会がないのですが、現状を共有し、新人さんが勉強してきたことを踏まえて、一緒に学ぶ姿勢で接することができればいいなと思います。

坂場(OT)

僕も自分の経験を伝えるようにしています。また、新人指導の際に否定はせず、新人の良さを認めながら「より良くするためにどうすればいいと思う?」と問いかけるようにしています。新人がショックを重ねないよう、早めの声掛けを意識していますね。

大平(PT)

僕は、新人さん自身がまずリアリティショックを受け止める必要があると思うので、少し離れて、どうすればいいのか悩む時間も見守るようにしています。どうしてもわからないときに、経験を伝えるようにはしています。

タサモ(ME)

白石(Ns)

私も同じように思います。新人として入ってくる看護師は、私たちが学校では学べなかった最新の情報や知識を得てくるというプラスの面もあるので、逆に教わることもあるだろうな~と思っています。また、学生のうちからギャップがないように、実習生には「現場ではこうだよ」と意図的に伝えるようにしています。

社会人としての教育、フォロー

白石(Ns)

業務に関するリアリティショックの他に、社会人なら誰でも共通する、組織や対人関係に関するリアリティショックも感じることがあると思います。その場合の対処法はどうしましたか?

病院は患者さんのことだけを考えればいいと思っていましたが、経営のことも考えなければいけないことを再認識しました。限られた人的資源をどう活用していけば良いのか、今も日々模索しています。

坂場(OT)

僕は飲み会ですね。体育会系で飲み会のルールや気遣いが多くて驚きました。これはもう慣れるしかないですが、自分の後輩には、事前に雰囲気や対処法を伝えておいて、手本を見せつつ徐々に真似してもらうようにしました。

大平(PT)

飲み会の謎のルール(笑)わかります! 今までは気の良い友人とだけ付き合ってきましたが、働き始めると馬の合わない方々ともコミュニケーションを取る必要性があり、そこには非常にストレスを感じましたね。

イサミ(Ph)

組織や対人のコミュニケーションはとても難しいですが、こちらから教えを乞うスタンスをとることで、社会はうまくやっていけるのだなと思いました。そして、ここで事前の根回しの大切さを知りました(笑)。

タサモ(ME)

白石(Ns)

バイト経験のある新人は、社会人としてのギャップをそこまで感じにくいのではないのかと思います。しかし、ローカルルールのような、細かいこともいっぱいあって大変ですよね。看護師はとくに女性が多い職場なので、女心や察してほしい文化など、独特の気遣いがあります(笑)。もうこれに関しては、その場で教えていくしかないなと思います。

うわ~…。色々な場面でショックを受ける場面があるんですね。身近に相談できる仲間や先輩を見つけられるといいですね。

イサミ(Ph)

社会に出ると、価値観や考え方が違う人たちともうまく関わらなくてはいけなくて、ストレスになりますよね。どのように受け流していくか、発散していくかのスキルなども必要だなと思いました。

坂場(OT)

まとめ
多職種でも皆さん同じようにギャップを感じていることがわかりました。しかし、毎日を必死に働くうちに、だんだんと「そんなこともあったな」と忘れていってしまいがちなので、初心を忘れないようにしたいですね。読者の皆さんも、新人教育に携わる機会が多いかと思うので、ぜひ指導する場面で参考にしてみてください!