適切な褥瘡管理のために欠かせない外用薬の知識


皆さんは褥瘡の管理に関わったことはあるでしょうか。

褥瘡は看護師、管理栄養士、理学療法士、作業療法士などのさまざまなメディカルスタッフの領域に関わる疾患です。

最近はデバイス褥瘡”とも呼ばれる「医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)」への対策の必要性も叫ばれ、臨床工学技士による介入も求められています。

多職種での適切な管理・治療が効果を発揮する褥瘡は「チーム医療」の効果を最も上げやすい疾患の1つだといえるでしょう。

褥瘡の管理といえば除圧・体位変換・栄養管理・ドレッシング材による保護などが思い当たりますが、欠かせないものとして外用薬があります。この外用薬ですが、どのように選び、活用するのが最適なのでしょうか。

実は、外用薬の選択には「薬効成分」だけでなく「基剤」と呼ばれる賦形剤についての知識が重要になります。

「薬効」と「基剤」の知識を得ると、褥瘡治療薬の奥深さと面白さが少しずつ見えてくるはずです。

 

褥瘡治療に使用される4種類の基剤


主に使用される外用薬の基剤には4つの種類があります。

1.油脂性軟膏剤


油脂そのもので、ワセリンやミツロウ、植物油など。創部の保護と保湿にとても優れています。

2.水溶性軟膏剤


マクロゴールやグリセリンなど。吸水性が高く、創部の浸出液が多い場合などに重宝します。

3.油中水滴(w/o型)クリーム剤


クリームのことですが、油分を主成分として、水分が分散しているものを指します。油分が多いので油脂性と同じく創部の保護・保湿に効果があります。

4.水中油滴(o/w型)クリーム剤


同じく、クリームのことですが、水分が主成分であり、簡単に水で流れるような成分を指します。創部へは水分を補う、補水性を発揮します。

創部の状態から考える基剤の選び方


褥瘡の管理のうえで欠かせないのが創部の湿度管理です。パリパリに乾ききってしまうと肉芽の成長を妨げてしまいますし、浸出液でビチャビチャしていると感染が心配です。

乾きすぎず、かつ湿りすぎていないdry-wetのバランスを保つことが重要です。
その点において、基剤が強く存在感を発揮します。

例えば、軟らかい壊死組織に対して化学的デブリードマン(薬剤を使って壊死組織を除去する方法)が行われる場合です。ポビドンヨード・シュガー軟膏(商品名:ユーパスタ軟膏)やスルファジアジンクリーム(同:ゲーベンクリーム)が一般的に壊死組織除去効果を持つため、よく使われますが、この2剤は基剤が異なります。

ポビドンヨード・シュガー軟膏はマクロゴールという水溶性基剤、スルファジアジンクリームは水中油滴型(o/w)基剤です。つまり、浸出液が多い場合は、ポビドンヨード・シュガー軟膏が適しており、少ない場合はスルファジアジンクリームが適していると考えられます。

このように、褥瘡治療のために外用薬を選択する際、同じ用途に使われる薬剤であっても、基剤の違いが薬剤選択に大きく影響します。外用薬の構成はほとんどが基剤であり、基剤の特徴を捉え、使い分けることが大切です。

明日から、褥瘡の患者さんの治療に当たる際は、使用されている外用剤の基剤の違いにも思いを馳せていただければ幸いです。

 

Fats(薬剤師/イラスト部)

がんの専門病院で働く薬剤師。Common diseaseや他職種領域・連携についての知識の不足とその重要性を感じてメディッコに参加。今まで薬剤師がいなかった領域でのニーズを掘り出したい。イラストとゲームとねこが好き。