簡単に見えて意外と知らない、とろみ剤のハナシ

医療、介護に関わっていると「とろみ」や「とろみ剤」という言葉は耳にすることがあるでしょうし、使ったことがある方も多いですよね。病院や施設では、「コップ1杯にこのさじで1杯」など量が決まっていることが多いので、決められた通りに提供するだけ、という方も多いと思います。でも、『一歩間違えば窒息のもとになる』ということを知っていますか?今回はとろみ剤の基本をお伝えします。

そもそも”とろみ剤”って

実は、時代とともに成分は変化していて、現在のとろみ剤は「とろみ第三世代」と言われています。世代によって使われている成分は異なり、今回は割愛しますが、同じようなとろみがつく「片栗粉」とは大きく異なります。

片栗粉は熱を加えないととろみ効果が出ませんし、食べている間に唾液に含まれるアミラーゼと反応して、とろみがゆるくなってしまいます。一方、とろみ剤は熱に左右されず溶かすことができ、アミラーゼとの反応性もありません。(とろみをつけた水分は、冷蔵庫から出してすぐは固い、熱いものに対しては緩いなど、温度によって多少の差は出ますが…)

もっとも覚えておいて欲しいことは、『とろみ剤は、混ぜて少し時間が経ってからとろみが付く』ということ。なぜなら、とろみ剤1粒1粒が水分を吸収し、その粒が膨らんでとろみが付くのです。膨らむまでの時間は、飲料の種類によって異なります。

NG・追いとろみ剤!

前述したように、とろみ剤の1粒1粒が水分を吸収して膨らんでとろみがつくため、「とろみがつかないな」「もっととろみをつけたいな」という場合でも、追いとろみ剤をするのはNGです!

とろみ剤の粒がすでに膨らみきっているため、追加したとろみ剤は溶けずにダマになるのです。思うようなとろみ加減になっていない場合は、もったいないと思っても作り直したり、とろみをつけた水分同士で中和させる方法があります。

「しっかりつける」だけじゃない

「しっかりとろみをつけていれば安心」と、必要以上にとろみ剤を添加する方がいらっしゃいますが、それは正しくありません。見た目ではとろみが目立っていなくても、飲んでみると案外とろ〜っとしています。つけすぎた水分は、かえって咽頭(のど)に残って窒息の危険性もあるのです。

ドラッグストアでも簡単に手に入るとろみ剤ですが、実はしっかりと内容を理解されていないことが多いです。計量、しっかり混ぜる、少し時間をおく!ポイントを押さえて正しく使用しましょう。

執筆者
みややん(ST)

現在は、小児から看取りまでに携わる訪問ST。回復期リハ病院、教員、急性期、ことばの教室もチラッと勤務。摂食嚥下認定STだけど、やっぱりコミュニケーションって1番根っこだよねーと思い返しているところ。

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