自立支援医療って聞いたことある?

精神領域で働いているとお金の問題がシビアに出てきます。

・何年も通院や入院が続く
・服薬を継続する
・デイケアなどの通所施設に複数年通う

上記のような治療が必要な方には診察料や薬代、デイケアの利用料金のみならず、通うのに必要な交通費などもかかってきます。ガソリン代も高いですし、病状によっては車の運転が難しく、公共交通機関を使わなければいけない方もいらっしゃいます。これが数年、場合によっては数十年続いたらたくさんの費用が必要になります。

ここで出てくるのが「自立支援医療制度」です。上記の中から入院料金は除外されますが、通院にかかる費用は自立支援医療制度を利用する事ができるため、自己負担額が少なくなる制度なんです。

誰がどう利用できる?

てんかんを含めた何らかしらの精神疾患により、通院の継続が必要があると判断される場合に利用することができます。

通院の範囲は
・外来での診察にかかる費用
・外来での投薬にかかる薬の費用
・精神科デイ・ケア(ショート・ケア、デイ・ナイト・ケアを含む)の利用料
・訪問看護の利用料金
などが含まれます。

これらの費用・利用料金が1割負担になります。精神科領域で働いていると通院医療を継続しながら地域で生活をしている方がたくさんいる事を実感します。何年も続くと相当な負担額になってしまいます。

1割負担だけじゃない大きなメリット

実は私がメリットだなと感じる部分は1割負担だけではありません。月の自己負担額に上限が設定される事です。この上限額は費用・利用料金の合計が適応されます。上記の4つのサービスを使っている方は全てが適応されます。これは人によって登録している機関にのみ対応します。

例えば、訪問看護を使っていないAさんの1ヶ月の上限が1万円だとすると、診察や薬、デイ・ケアなどの利用の合計が1万円になった時点で、それ以降の負担額が0になります。詳しく説明すると、デイ・ケアは1日参加した際、1割負担で700円程度かかります。(早期加算などの加算がついている場合はさらにかかる場合もあります。)

これを週5・6日使う方もいらっしゃるため、15日参加すれば1万円を超えます。そのため、デイ・ケアの利用料のみでも上限は超えますし、ここに診察や薬代金が加わると、すぐに1万円を超えます。そうすると、自己負担額が合計1万円を超えた後は、月が変わらない間は何度デイ・ケアを利用しても自己負担は0円で利用できます。ここは大きなメリットだなと感じます。

上限額は市町村民税をいくら納めているかによって変わります。詳細は省きますが、ざっくり、2,500円〜20,000円の範囲です。

いくつかの注意点

①更新が必要
1度取得した後、ずっと使えるわけではなく、更新が必要になってきます。最初の利用時の手続きや更新の際にも、お住まいの市町村の担当窓口に行って手続きをしなくてはなりません。基本的には、障害福祉課や保健福祉課にて対応してくれるイメージです。

②1つの機関のみ登録可能
例えば、薬局の項目があるのですが、1箇所のみしか登録できないため、いつももらっている薬局のみでしか登録ができません。別の薬局で処方してもらう場合は3割負担になってしまうため注意が必要です。

診察、薬局、デイ・ケア、訪問看護はそれぞれの登録が可能であるため、診察を受けている病院以外でデイ・ケアに参加したり、訪問看護を利用することも可能です。が、1箇所のみという縛りは変わらないため、他のデイ・ケアを使うことになった場合は都度、変更手続きが必要となります。

③手続きや更新には診断書が必要

更新に関しては、私の住んでいる地域は毎回ではないのですが、診断書が必要です。自立支援医療制度は通院にかかる費用が少なくなるため、利用者にとってありがたいサービスですが、利用の必要性が本当にあるのかを診断書によって判断しています。

後書き

利用者さんの中には「そんな制度知らなかった!ずっと3割負担で払っていた!」と言う方もいらっしゃいますので、医療従事者が理解をし、促す事ができれば負担が軽減できると思います。精神科の入院病棟で従事している方もこの制度を理解しておくことで、退院が近づいてきて不安を感じている患者さんの不安を取り除く事ができるのではないかと思います。

制度はたくさんあって私も理解してないことも多いと思います。少しづつ理解をしておくことで患者さんの力になれるのではないかと思い、今回発信させていただきました!

執筆者
坂場泰斗(作業療法士/メンタル部)

作業を通じてメンタルを整えていく方法を模索中。教育にも関心を持ち、精神科作業療法の啓発に力を入れています。

Twitter:@demiozx