前回に引き続き、障害児支援分野で働く作業療法士(以下OT)のY田さんをお招きして、医療職以外の職種との連携の実際と、今後のビジョンについて話を聞きました。
参加者
Y田(OT)
放課後等デイサービスで勤務している作業療法士。回復期病棟や訪問看護、作業所、総合事業の経験あり。初めての座談会に緊張している。
たみお(PT)
慢性期病院に勤める理学療法士。障害児支援の分野は全く経験がなく、どんな場所なのか興味を持っている。
大平(PT)
施設に勤める理学療法士。放課後デイサービスで実際に勤務経験(アルバイト)あり。
白石(Ns)
看護師兼ライター。肢体不自由児施設や特別支援学校、障害児保育園などの勤務経験(単発派遣含む)あり。
おぬ(Ns)
精神科で働く看護師。障害者就労支援事業所の立ち上げや、障害児施設で職員向け障害児の理解の勉強会の開催も。
医療職が学校へ出向く難しさ
たみお(PT)
障害児支援領域に携わると、医療職以外の人とも関わる機会が増えると思うんですが、Y田さんはどんな職種の人と関わる機会が増えましたか?
Y田(OT)
幼稚園や小学校の先生と関わりが多いですね。保育所や小学校に行く機会も増えました。
たみお(PT)
学校に行くこともあるんですね!どんなタイミングで行くんですか?
Y田(OT)
僕の事業所では2パターンあって、ご家族から学校で気になることの相談を受けて保育所等訪問支援として学校へ行くケースと、通所サービスの立場で、「学校で気になることがあるので相談させてください」と先生にお願いして学校へ伺うケースがあります。ただ、OTを知らない先生が多いんですよ。なので、まず自分の仕事を分かってもらうことから始めないといけないんです。
白石(Ns)
Y田(OT)
そうですね。特に保育所等訪問支援の場合は、学校の先生からするとやっぱり構えますよね(笑)。「何しに来たんや!」みたいな目で見られやすいんで…。
大平(PT)
Y田(OT)
きちんと事業説明もするんですが、校長先生から「こういう制度があること自体がどうかと思う」と言われたこともありますね(笑)。
たみお(PT)
Y田(OT)
はい。でも逆に、放課後等デイサービスの立場から学校へ行くパターンは、学校の先生から「専門家に話を聞きたいです」と言われることがあります。この場合は学校への入りがすごく楽ですね。
たみお(PT)
導入の仕方でお互いの空気感も変わるし、難しいですね。
Y田(OT)
そうですね。学校からの依頼ではなく、事業所側の視点で、情報共有しておいたほうがいいと思う学校へ連絡すると、ちょっとぎくしゃくしてしまうことはありますね。行政からも学校に事業の説明してもらうことで、少しずつですが学校側の理解が深まり、以前よりはやりやすくなってきているように思います。
大平(PT)
たみお(PT)
学校もそういった支援があることを理解してくれる所が増えてきているんですね。
Y田(OT)
制度が始まって、まだそんなに経っていないので知らない人もいる現状ですが、徐々に理解してくれている人が増えてきているなという印象があります。
医療職以外との連携のコツ
それでもまだ制度を理解されていないところに対しては、具体的にどうやって説明するんですか?
白石(Ns)
Y田(OT)
まずは事業所の説明をして、「事業所に来ている子どものお母さんからこういった相談がありまして、もしよかったらそちらでも状況を教えてくれませんか?」と声を掛けています。自分の経緯をありのまま伝えて、お願いすることが多いですね。
なるほど。伝える時に注意していることはありますか?
白石(Ns)
Y田(OT)
声掛けの中で専門的に見た問題点を伝えるのですが、伝える量やタイミングを間違うと相手から壁を作られてしまうこともあるので注意しています。間違えると「もういいです」と終わってしまいますね。
確かに、いきなり専門的にグイグイこられるとしんどいですもんね…。
白石(Ns)
Y田(OT)
そうですね。知識の土俵が違う分、知らない言葉で責められているように感じるんだと思います。なのでこちらからの訴えだけでなく「先生の考えも教えてください」というような声掛けが大事だと思いますね。それから、「先生はこう思われてるんですね、僕たちも見ていてこういうところが気になります」と会話を広げるように意識しています。先生の土俵で話すと情報収集がしやすいですね。
僕がアルバイトしていた時は、先生の土俵で話すのが難しく感じました…。他に連携するコツってありますか?
大平(PT)
Y田(OT)
「この子に対してどうしましょう」ということを、指導するのではなく、お互いに対等のチームとして話す姿勢が大事だと思います。相手ベースで考えて、自分たちの意見を伝える姿勢で接すればいいですよね。同じ子のことを一生懸命考えているメンバーではあるので、共通の目標に向けて動いていければ問題ないと思います。
ですよね。確かにどの職種も一生懸命考えていますね。
大平(PT)
Y田(OT)
あと考え方として、原則は学校がメインで、僕たちは後方支援の立ち位置になります。なので、先生が軸ということを忘れたらいけないと思います。放課後等デイサービスは、利用を選択して行く場所ですし、メインとなる生活を少しでも快適に過ごせるためにどんな手伝いができるのか、というポジションですよね。
白石(Ns)
Y田(OT)
そういった意味でも一歩引いた立ち位置で、子どもたちが活躍できる体制作りをしている先生を、支援する姿勢でいることが大事だと思います。その中で、とくに先生が苦手な障害(例:自閉症やダウン症など)があれば、お手伝いできたらいいのかなと思います。
たみお(PT)
なるほどー。自分の立ち位置を意識しておくのは大事なことですね!
障害児支援領域の今後のビジョンについて
今後、この領域はどうなっていけばいいのかというようなビジョンについて、お聞きしたいです。
おぬ(Ns)
Y田(OT)
研修会でいろいろ聞いていると、学校との連携については問われてきていますよね。今までの流れとしてはまず事業所数が増えて、平成30年度の制度改定で質を求められるようになっています。この改定から連携に関する加算もちょっとでてきたんですよね。そこが今後は強まってくるのかなと思いますね。
連携といっても、放課後等デイサービスって、障害者福祉でありながら、児童福祉法が根拠法令であり、なかなか立場が不安定なイメージなんですよね。学校と連携しても、保護者からクレームがきた時に、公共性が乏しい部分があるのかなと。昔より圧倒的に利用者も多いですし、国側ももっとサポートしてもいいのになと思いますね。
おぬ(Ns)
Y田(OT)
そうですね。でもそれにはもっと専門的なところがないとサポートされないとも思います。
おぬ(Ns)
Y田(OT)
体制という面で言うと、人員として児童指導員が必要ですと言われている中で、児童指導員になれる条件の一つに「高卒以上で児童福祉事業における実務経験が2年以上あるもの」という項目があります。要は2年勤めれば誰でもなれるので、まだそこまで専門性を求められてないのかなと…。なので、今後はそういった障害児支援の専門性を高めていくことが課題になるのではないかと思います。
おぬ(Ns)
Y田(OT)
今、小児の分野でも地域の現場で療法士の役割が増えています。しかし、実際には病院の方が療法士は多くいる状況です。病院で働く療法士には、「よくわからない分野」と言われて敬遠されることもあるんですが、来てみたらできることはたくさんあると思います。「療法士がいない」と親御さんたちに言われることもあるので、まずは短期的なバイトからでも気軽に来れるような雰囲気になったらいいですね。
たみお(PT)
今後、もっと入りやすい空気になっていったらいいなと思いますね。
障害によるさまざまなハードルが、少しでも受け入れられるような社会になってほしいですよね。放課後等デイサービスはまだ知名度が高いわけではないので、これからもっと広まってくれると、もっと行きやすい雰囲気になると思います。
おぬ(Ns)
まとめ
今回は障害児支援領域で働くOTのY田さんを交えて、医療職以外の職種との連携の実際と、今後のビジョンについてお話を伺いました。まだ制度としては認知されていない面もありますが、事業所としての立ち位置を意識した接し方をすることでうまく連携できているように感じました。これから開拓していく領域だと思いますが、利用者からのニーズは大きいようです。障害児支援領域で働くことを考えている方は、今回の記事を是非参考にしてみてください![/say]