リハビリ職と看護師の連携を深めるためには何が必要?

リハビリ職と看護師は、さまざまな職種のなかでも関わる機会が多く、お互いの協力が必要不可欠。しかし、現場でのリハビリ職と看護師の間には、どうやら壁があるようです。

今回は、理学療法士が抱える看護師との連携に関する悩みについて、どうしたらうまくいくのか話し合ってみました!

参加者

 大平(PT)
理学療法士4年目。急性期→回復期病棟にて勤務。日々看護師との連携方法を模索している。

 かなこ(Ns)
看護師9年目。リハビリ職ともっと連携したいと思っているが、多忙のため行動に移せていない。

 REN(PT)
理学療法士。看護師はいつも忙しそうで、声を掛けるタイミングが難しいと感じている。

 須藤(OT)
作業療法士11年目。患者さんの担当看護師には、毎日1つ、患者さんのためになるお願いごとをしている。

 大前(Ns)
看護師10年目。現在ICU勤務。ICUの患者さんが回復に向かうためにはリハビリが必須なので、リハビリ職との連携を日ごろから意識している。

リハビリ職と看護師との間にある壁

大平(PT)

今日は、リハビリ職と看護師さんの連携について話しましょう。僕は理学療法士として、看護師さんとの間に壁を感じることがあります。急性期病棟にいたときはそう思わなかったのですが、回復期病棟に異動してきて「連携が取りにくいな」と思うようになりました。
具体的にどのような場面でそう思うのですか?

かなこ(Ns)

大平(PT)

例えば、患者さんのリハビリ状況が良好で、そろそろ病棟で歩行練習を開始したいと思ったときです。看護師さんに「病棟でも歩行練習をお願いします」と依頼するのですが、実際に歩行練習をやってくれる看護師さんとそうでない人がいるんです。
なんでやってくれないのでしょう?

REN(PT)

大平(PT)

若い理学療法士だから、話半分で聞かれているのかもしれません。ベテランの先輩が言うと、やってくれることが多いです。
それはしんどいですね。でも、リハビリ職では案外よくある話かもしれないです。

REN(PT)

大平(PT)

そこで看護師さんに理由を聞いたことがあるのです。「私たちはリハビリ職じゃないから、リハビリのことを言われても困る」と言われてしまいました
うーん…

REN(PT)

大平(PT)

そう言われても、患者さんのリハビリには看護師さんの協力が不可欠なので、どうすればいい連携ができるのかと悩んでいます。
「私たちはリハビリ職じゃないからやらない」という視点は自己都合ですよね。壁を作っているのは、もしかしたら看護師のほうかもしれません。

かなこ(Ns)

理学療法士と看護師は、お互いをどう見ているのか

病棟でリハビリをやってくれない場合、理学療法士としてどのような対応をしているのですか?

REN(PT)

大平(PT)

とにかく、必要性を頑張って説明するしかないですよね。あとは、僕は異動してきたばかりなので、先輩にどう伝えたらいいか相談しています。
なるほど。それが最善手でしょうね。

REN(PT)

ただ、私も看護師として、どうリハビリを促せばいいのかわからないことがあります。患者さんによってケースバイケースですが、例えば、ベッド上でできるリハビリや、歩行練習のやり方など、マニュアルのようなものがあるとやりやすいと思うんです。

かなこ(Ns)

大平(PT)

ふむふむ、看護師さんが理解出来るように伝えるようにしないといけませんね。
リハビリ職がやっていることは、記録を見ても、実際にどんなことをしているのかイメージしづらいこともあるので。あとは、看護師も多忙なので、リハビリをやる時間が取れていないこともあるかもしれません。

かなこ(Ns)

大平(PT)

たしかに、通常業務を行いながらリハビリをするとなると、負担になりますよね。僕も看護師さんの都合をあまり考えていなかったかもしれません。お互い連携を取りやすくなるのであれば、リハビリの資料などを活用していきたいです。
そうですね。話を聞いて、看護師も受け身ではいけないと思いました。リハビリで困ったときは、積極的にリハビリ職に相談するようにしたいです。

かなこ(Ns)

リハビリ職から看護師へ歩み寄る方法

私も看護師さんとの連携の取りにくさを感じたことがあるので、大平さんの悩みはよくわかります。

須藤(OT)

大平(PT)

須藤さんも、同じような経験があるんですね。
ただ、話に出たような「リハビリのことは知らない」という態度を取る看護師さんって、まず患者さんのことを第一に考えていないし、リハビリ職に歩み寄る気もないので、結構厳しい状況だと思います

須藤(OT)

たしかに、なかなか厳しい…。

REN(PT)

「わからないんだけど、どういう風にやればいいの?」と聞いてくれるのならまだしも、そもそも協力姿勢がまったく見えないですよね。

須藤(OT)

うんうん

REN(PT)

でも、「患者さんをよくしたい」という思いは、どちらの立場でも共通しているはずです。まずは自分の立場から、歩み寄る姿勢を見せることで、あとあとの連携につながるのではないでしょうか。

須藤(OT)

大平(PT)

なるほど!実は最近僕は「リハビリのことをわかってほしい」と押し付けるのではなく、少しアプローチを変えてみました。
ほう

REN(PT)

大平(PT)

例えば、看護師さんの目に付きやすい病棟の廊下でリハビリを実施して、患者さんが歩行している様子を見てもらうんです。患者さんの担当看護師が興味を持ってくれそうな人なら声を掛けて、「病棟でもできそうですか?」などと相談するとスムーズにいくことが多いです。
それはいい方法ですね。

REN(PT)

そういうとき、気を付けなければいけないことがあります。回復中の患者さんが初めて歩行するとき、リハビリ職がサポートしてもスムーズに動けないことがあるじゃないですか。そのような場面を看護師さんに見せてしまうと「私たちにはできない」と思われてしまいかねないです。

須藤(OT)

大平(PT)

たしかに…それは気を付けなければいけませんね。
僕は、患者さんに自信がついて、「今ならうまくできそう」と理学療法士も判断できるタイミングで、病棟の看護師さんにリハビリ状況を見てもらいますね。「すごい! こんなにできるんや!」と食いついてきてくれますよ。大平さんも、その調子でうまく看護師さんをリハビリに巻き込んでいけるといいですね。

須藤(OT)

急性期病棟でのリハビリ職と看護師の連携

ICUでは、リハビリ職に対する看護師さんの対応ってどうですか?

REN(PT)

僕がいるところは、リハビリ職とうまくやっている看護師が多いです。

大前(Ns)

大平(PT)

良いですね!具体的に、どのような連携をとっているのですか?
例えば「患者さんを連休明けにICUから出す」となったときに、看護師間で“ADLの向上がどの程度必要なのか”などの目標設定をするので、それを基に、気を付けることやわからないことを理学療法士さんに相談します。また、理学療法士さんから「この患者さんには〇〇をしてほしい」とリストをもらえることもあります。

大前(Ns)

それは患者さん個別のメニューとして渡してくれるんですか?

REN(PT)

そうです。僕たちはリストに書いてある内容を参考に「この患者さんならこの時間帯に〇〇をして、そのあと…」など、患者さんの生活にリハビリをどうはめ込んでいくかを考えて、1日のスケジュールを組んでいます。

大前(Ns)

すごいですね! それは病院のシステムとしてやっているのですか?

REN(PT)

システムとしてではないですね。ベテランの理学療法士さんが、そのように患者さんごとに対応をしてくれているので、若いリハビリ職の子たちも真似しています。

大前(Ns)

大平(PT)

そういう雰囲気が出来上がっていると、連携がスムーズに出来そうですね。
リハビリ職から看護師さんに提案をしに行く壁を取っ払いやすい理由が何かあるのでしょうか?抵抗がある人もいると思うのです。

REN(PT)

僕のいるICUは、心臓外科手術後の患者さんがたくさんいて、ほかの術後の患者さんよりも点滴や機械類など、リハビリ中に扱いが難しいものが多いんです。だから、理学療法士さんだけではリハビリができません。

大前(Ns)

大平(PT)

ふむふむ。
そのため、1人の患者さんに対して看護師2人と理学療法士1人でチームを組み、リハビリをするようにしています。自然と患者さんの情報をお互いに共有できる状況にあるのだと思います。

大前(Ns)

なるほど。ICUでのリスク管理として、チームで取り組んでいるんですね。そう考えると、急性期で連携が取りやすいのは納得できます

REN(PT)

はじめに、大平さんが「急性期では連携できていた」と言っていたのは、病棟の状況なども影響しているんですね! こういう密な連携が取れると、患者さんのためにもなりそうですし、すごくいいなと思います。

かなこ(Ns)

まとめ
リハビリ職と看護師さんは、患者さんとも近い立場なので、お互いに「患者さんにとっていいことは何か」を考えて、それぞれの専門性を活かすアプローチができたらいいですね。相手の態度を変えるためには、まずは自分の行動を変えることからだと改めて気付けた座談会だったのではないでしょうか。ありがとうございました!