地域高齢者や入院中の患者さんに多いと言われているサルコペニア・フレイル。
臨床現場でも耳にすることが増えてきたと思います。しかし、同じような横文字で「何が違うの?」と疑問に思う医療者もいるかもしれません。
今回は、今さら聞けないサルコペニア・フレイルの概念とそれぞれの違い、セットで扱われる理由について説明します。
サルコペニアとは?
サルコペニアは「Sarco(筋肉)+Penia(減少)」2つのギリシャ語を合わせた造語です。
和名では「筋肉減少症」などと呼ばれ、「筋肉量と筋力の進行性かつ全身性の減少に特徴づけられる症候群で、身体機能障害、QOL低下、死のリスクを伴うもの」などと表されています。
一般的にイメージされる、加齢が原因の筋力低下は「原発性サルコペニア」といわれます。
それ以外にも低活動や低栄養、疾患が原因とされるものなどがあり、これらは二次性サルコペニアといわれます。
実際には、これらの要因が複数関わっていることが多く、総称してサルコペニアと呼ばれる傾向にあります。
サルコペニアは転倒・骨折の原因となり、ゆくゆくは要介護状態になってしまう恐れがあるため、その前にくい止めなければなりません。
フレイルとは?
フレイルは以前「虚弱」などと扱われていましたが、今では日本老年医学会が「加齢に伴う予備能力の低下のため、ストレスに対する回復力が低下した状態」を表す「Frailty」の日本語訳として提唱しています。
フレイルは、要介護状態に至る可逆的な前段階として位置付けられ、身体的な能力低下(身体的フレイル)だけでなく、独居や閉じこもりなどの社会的フレイル、抑うつや軽度認知機能障害などの精神心理的フレイルがあります。
サルコペニアとフレイルの違いは?
サルコペニアは、筋肉量の減少が原因で起こる筋肉機能の低下を表すもので、身体的側面のみにおける概念です。
それに対してフレイルは、身体機能の衰え以外にも社会的・精神的な脆弱性を含むという点が、両者の違いになります。
つまり、フレイルのほうがより広義な扱いになるわけです。
セットで扱われるには理由がある!
身体的フレイルとサルコペニアの評価基準には、それぞれ歩行速度や筋力低下が組み込まれており、よく似ています。
よって、サルコペニアと診断された患者さんはフレイルである可能性も高いのです。
また、両者は要介護に対するハイリスクな状態であることから、予防する観点が重要になります。
一般向けに説明する際、要介護予防→フレイル予防→サルコペニア予防というように、つながりを持たせることで伝わりやすくなるということも、セットで扱われる理由と考えられます。
今後、高齢社会が進むことで「サルコペニア・フレイル」の概念は、臨床現場でさらに多く使われることと思います。
これらの違いをしっかり理解しておくと、患者さんの理解や多職種でのやり取りがよりスムーズになるのではないでしょうか。
また、世間の認知度が高くなるにつれ、患者さんやご家族などから質問されることもあるかと思います。
そんなとき、スマートに答えられるとカッコいいので、ぜひ参考にしてみてください。
参考文献
・若林秀隆・ほか編(2018)「リハ栄養からアプローチするサルコペニアバイブル」日本医事新報社.
慢性期病院で勤務し、患者さんの生活の質を向上させるべく奮闘中。講演やボランティアなどの地域に根ざした活動を積極的に行っています。メディッコではギター侍担当。