医療領域で働くセラピスト(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)と介護領域で働くケアマネジャー(以下、ケアマネ)は、地域包括ケアシステムが推進され、患者さんの在宅復帰を目指していく中で、今後より連携が必要となる職種かと思います。
では、実際に医療領域で働いているセラピストたちは、どのようにケアマネと連携をとればいいのでしょうか? 今回は、医療機関で働くセラピストがケアマネと連携をとるときのポイントについて話し合ってみました。
参加者
REN(PT)
整形外科で働く理学療法士。昨年、介護保険を理解するためにケアマネ資格を取得した
須藤(OT)
過疎地域の中核となる急性期病院に働く作業療法士。外来リハビリから介護保険への移行にあたってケアマネと連携することがある
たみお(PT)
慢性期病院に働く理学療法士。ケアマネ資格取得済み。ケアマネとより連携を深めたいと思っている
職場によってセラピストとケアマネの関わり方は違う
たみお(PT)
それではまず、各々がどのような時にケアマネと関わっているかを教えてください。
僕の職場は介護保険リハを実施していない整形外科なので、介護認定を受けていて、標準的算定日数を超えてリハが必要な外来患者さんにサービスを紹介しなければいけない時です。その際に担当ケアマネと現状のリハの様子や、今後の見通しなどの情報をやりとりしています。
REN(PT)
うちは急性期なので、在宅に直接帰る患者さんで、ADLや移動手段に変更がある時に、退院前カンファレンスで関わることが多いですね。外来患者さんでも、介護保険を持っているかどうかと、ケアマネの情報も確認しています。患者さんの自宅生活での問題を、外来リハビリで対応できることは限られているので、その問題を共有するためにケアマネさんに直接電話をかけることもあります。
須藤(OT)
たみお(PT)
うちのリハビリでは、外来、入院、通所リハと担当が分かれています。RENさんのところと同じように、外来リハでは介護保険でのリハビリが受けられる事業所への仲介をする際に、外部のケアマネと連絡を取り合っています。入院に関しては介護病棟があるので、院内に施設ケアマネがいます。サービス担当者会議でリハビリの内容を説明したり、患者さんに関する情報を教えてもらったりしています。
たみおさんのところは、実際にサービス担当者会議に出ているのですか?
REN(PT)
たみお(PT)
はい。できるだけ担当療法士が出席するようにしています。時間が合わないときは、他のスタッフが出席する場合もあります。
正直なところ、出席することの意義が介護報酬としても欲しいですよね。出たくても、時間や人数などの都合で参加が難しい施設もあると思うんですよね。
REN(PT)
たみお(PT)
たしかに、そうですね。担当者会議はサービス関係者が参加することになってますが、管理者が参加してることが多くて、実際に担当しているスタッフは業務優先で参加できていないことも多いようです。ここに加算がつけば、もっと担当者が参加しやすい環境になりそうですね。
REN(PT)
たみお(PT)
須藤さんのところはケアマネと関わることが多そうですね。退院前のカンファというのは経験したことがないんですが、多職種で行うカンファなんですか?
多職種で行なっています。医師、看護師、リハ、薬剤師(時々)、そして患者さん・ご家族と、ケアマネが参加しています。
須藤(OT)
たみお(PT)
基本的にMSW(医療ソーシャルワーカー)が進行をします。サービス担当者会議とは別なので、この会議でケアマネが必要な情報を確認し、情報提供書を作る感じです。
須藤(OT)
たみお(PT)
なるほど。そこではケアマネは聞き手側になるんですね。こうやって話を聞くと、職場の特色によって、ケアマネとの関わり方は違うみたいですね。
リハとケアマネが上手に連携をとるには?
たみお(PT)
ではケアマネと連携をとるとき、気を付けていることは何かありますか?
相手のケアマネのバックグラウンドを理解するようにしてます。例えば歯科衛生士なのか看護師なのか、介護福祉士なのかで、持ってる知識や経験が違うので、専門用語をどこまで使うかなどを意識しています。なので、そのケアマネのことをよく知るようには努力しますね。
REN(PT)
たみお(PT)
専門用語の使い方は僕も気にしてますね。僕がケアマネの研修でグループワークをしたとき、こちらの専門用語が理解されなかったり、相手の専門用語がわからないことがありました。専門用語ばかりだと相手の理解が追いつかず話が進まないので、お互いに理解されるように言葉は選ばないといけないですよね。
あとは、僕もケアマネの研修中そうだったんですけど、どうしてもバックグラウンドの資格に関する知識に考えが偏るんですよね。PTならリハビリのことに、薬剤師なら薬のことに意識が向きがちになるので、その辺を理解した上でこちらもケアマネと連携をとる必要ありそうですよね。
REN(PT)
たみお(PT)
わかります! 会話の中で何となく出てしまいますよね(笑)。僕はいつも相手のバックグラウンドを察する感じで留めてるんですけど、RENさんは直接聞く感じですか?
いや、失礼になるかもと思って最初はなかなか聞けないですよね。でも、仲良くなると自然にそういう会話になるじゃないですか? だから、できるだけそんな会話ができるようになるまで仲良くなるのが大事かなと思っています。
REN(PT)
たみお(PT)
そうですね。相手の専門領域を理解したうえで、言葉を選びながらコミュニケーションをとるのがポイントということですね。そのためにも普段から仲良くなれるように積極的に会話していきたいですね。須藤さんは気を付けていることはありますか?
僕が直接コミュニケーションを取るときは、はじめにケアマネが捉えてる利用者の問題を尋ねることから始めています。例えば、「自宅では、〇〇さんは何度か転倒していたんでしょうか? 」と聞きます。このとき既に転倒のことを本人や家族から聞いていますが、又聞きで変に誤解をされたくないので、知らない体裁で聞くことが多いですね。
須藤(OT)
たみお(PT)
なるほど。あえて知らない体裁で聞くほうが、ケアマネも説明しやすいかもしれませんね。こちらからガツガツ意見を言うと、威圧しているように捉えられることもあるみたいなので、聞き手に回るのも1つの方法かもしれませんね。
あと、セラピストとして「やってほしいこと」と、実際の現場(本人や家族)でできない「困っている状態」は必ずあります。こんな時は、ある程度の要望を伝えた後に、ケアマネ側に立って「そうですよね。実際には難しいと思います」と共感の姿勢で支えるようにしてます。
須藤(OT)
たみお(PT)
共感の姿勢もケアマネとの距離を縮めるには必要なことですよね。お互いにうまく話が進むことばかりではないと思うので、共感し合える他職種がいるということは支えになると思います。
実際の連携エピソードは?
たみお(PT)
最後にこれまでの仕事の中で、ケアマネといい連携が取れた! と思ったエピソードがあれば教えてください。RENさんからお願いします。
いやー、これがビックリするくらいないんですよね。こちらが介護保険を使ったサービスをしていない医療機関だと、向こうから連絡がくることは基本的にないので、うまく連携をとれていないのが現状です。中には利用者の主治医に対して情報をもらうために、病院まで電話したりFAXしたりするケアマネもいるみたいですけど、PTにまで連絡がくることはほぼないですね。
REN(PT)
たみお(PT)
やはり職場の特色によって連携の偏りはありますよね。僕も今は医療外来で働いているので、直接ケアマネに連絡することはあまりなくて、患者さんを介して連絡を取ってもらうことが多いのが実際のところです。
そうですよね。たみおさんはいい連携がとれたというエピソードはありますか?
REN(PT)
たみお(PT)
最近でうまく連携できたことといえば、医療保険リハから介護保険リハに移行する患者さんに関しての対応です。担当ケアマネと連絡を取り合う際、お互いに患者さんの症状や希望について話し合う時間が取れ、最終的に患者さんの希望に合致したサービス事業所まで紹介できました。月並みですが、患者さんのためにお互いの専門性を活かしながら協力できたことがよかったのではないかと感じました。
話し合い大事ですね! ケアマネも自立支援を掲げているからか、セラピストと考え方が似ているように感じます。
REN(PT)
たみお(PT)
似てますね! だからお互いの考えや話の内容は合うと思います。あとは伝え方や、お互いの強みを理解して話をしていけば、連携はとりやすい職種だと思いますね。
そうそう、そんな感じですよね。須藤さんはどうですか?
REN(PT)
ケアマネとの連携でいうと、どうしても医療から介護への一方向で終えることが多いので、良し悪しの判断が難しいですね。ただ、別の機会でケアマネさんと会った時、利用者さんのその後を聞くことがあって、「あれから家でやってくれてますよ! 」っていう成功パターンと、「やはり家ではあまり動いてないみたいです」という失敗パターンどちらも経験しています。失敗パターンになっても、僕たちの耳には入らないので、密な連携を取る手段がないのが現状ですね。
須藤(OT)
たみお(PT)
連携の流れとしてたしかに一方向性なことが多いですよね。医療のセラピストとケアマネは、介護が必要な人に関しての橋渡しの部分で関わることが多いですが、その後はあまり関わらないですよね。
そうなんです。送りっぱなしで終わっていないかいつも心配しています。
須藤(OT)
たみお(PT)
そうですよね。僕は個人的にですが、橋渡しした患者さんのその後が気になったときに、たまにケアマネさんに連絡することはあります。
本来は橋渡しした後も、ケアマネやサービス事業者を通して継続的にフォローする必要があると思っています。医療側が疲弊してしまうかもしれませんが、すべての退院患者を把握しようすることではなく、あくまでケアマネやサービス事業者の支援・相談窓口としての役割が医療の中にあっても良いのではないかと考えています。これは今後、地域包括ケアシステムの構築にあたって必要なことだと思うんです。
須藤(OT)
たみお(PT)
僕の病院の取り組みでいうと、月に一度デイサービス事業所とビデオ会議を行い、利用者の支援計画を一緒に相談できる機会を設けようと考えています。これによって、僕たちも在宅の現場を知ることができるし、医療の知識や技術を提供できると思います。こうした事業を通して、リハビリテーションの考え方が地域に根付くと良い循環が生まれるのではないかと考えています。
須藤(OT)
たみお(PT)
すごい取り組みですね! ICT(情報通信技術)の活用も、ケアマネと効率よく連絡を取り合えるツールとして有用ですよね。そのような取り組みが、全国的に広まって欲しいと思います。
まとめ
今回はケアマネと連携をとるためのポイントについて、セラピストが話し合いました。ケアマネとセラピストは考え方が似ており、互いを理解することでうまく連携が取り合える職種であるといえます。しかし働く領域によってケアマネとの関わり方に違いがあり、現状ではまだうまく連携できていない職場もあると思います。今回の座談会で出たポイントを意識して、現場でケアマネとの連携に役立てて欲しいです。