医療者が入院!患者体験から見えたこと

 

医療に携わる人間は意外と自分の健康には無頓着だったりします。

医者の不養生とも喩えられますね。

私もその一人でした。先日あまりの体調不良で1泊の検査入院をし、採血・腹部エコー・胃カメラ・心臓カテーテルを1日で経験しました。

そこで患者体験をして感じられた医療職の関わり方のコツお伝えします

※個人情報に関するものは一部変更しています。

 

患者さんは知らないことだらけ

 

私はICUの看護師ですが、今回の入院で経験した検査は初めてです。

最初の採血の時に「看護師さんなら知ってるね」 と軽く説明され、私も「はいはーい」 と二つ返事でやり過ごしたのです。

しかし、いざ採血室に入るとどこに並べばいいのか、座ればいいのか、どのタイミングで自分は呼ばれるのか、荷物はどこに置けばいいのかなど、知らないことばかりで、どの患者さんよりもあたふたしてしまいました。

 

 

他の検査も同様、知らない場所、知らないスタッフ、経験したことのない前処置など戸惑いの連続でした。

医療者でもこの有様です。

病院の看護師がこんな状態になるのですから、患者さんはもっと不安を感じると思います。

知らない環境に放り込まれ、自分の大事な身体を預けなければなりません。

知らないことはしっかりと説明されなければ、少しずつ不安が膨れ上がってしまうのです。

 

声掛けの質

 

患者さんの不安を取り除くには「声掛け」が重要だというのは皆さんもご存知だと思います。

しかし、ただ声を掛けるだけでは効果は見込めません。

私は腹部エコーの時、技師さんから「お腹に機械をあてますね」と声を掛けられたのですが、実際は冷たいゼリーのついた機械がお腹にあてられました。

先に「冷たい」ということを知っていれば対応できたのですが、不意にあてられた冷たいものに「うわっ!」という声が漏れてしまいました。

患者さんが感じるであろう「冷たい」を予想してゼリーを温めるなり、先に「冷たいですよ」と声を掛けるなりしてくれれば、情けない声を出さずに済んだのです。

大事なのは患者さんがどう感じるかを予想して声を掛けて、準備してもらうことです。

これを意識することで初めて、患者さんの不安を取り除くことができるのではないでしょうか。

 

共感

 

知らないことの連続で不安が最高潮に高まった私を救ってくれたのは胃カメラについてくれた看護師さんでした。

この看護師さんは咽頭麻酔の処置をしながら「初めてですよね。見たことあってもやられるのは不安ですよね。この麻酔したら飲み込みにくくなるので唾は出してくださいね。」

と声を掛けてくれました。

看護師さんの言葉は自分の不安な気持ちを汲み取ってくれて胸の中にストンと入ってくるようでした。

胃カメラ処置中も、半年分の唾液が出たんじゃないかと思いながら不安を抱える私の背中を優しくさすり、「しんどいですね、でも上手にできてますよ。唾は気にせず出してくださいね。」という声掛けと手当て。

「この人がナイチンゲールの生まれ変わりか!」 と思わせる介助でした。

こちらがどう感じているかを汲み取って「共感」してもらえたと感じたとき、自分のことをよく理解してくれていると安心し、「声掛け」の内容も胸にしみわたります

そして、信頼が置ける人の手当ては、不思議なほどに安心感を与えてくれました。 

 

まとめ

 

患者さんは知らないことが不安になり、恐怖となります。

今から何をするかの説明だけでなく、熱い・冷たい、痛い・痛くないなど具体的に患者さんが感じるものを伝えることが不安に配慮した「声掛け」になります。

そして、患者さんが感じた経験に「共感」することでより信頼感が得られます

寄り添うということを改めて考えさせられた経験でした

患者さんの視点に立つことはそう簡単ではないでようです。

患者さんへの関わり方のヒントになれば幸いです。

 

執筆者
大前(看護師)

急性期病院のICUで看護師をしている。さまざまなイベントで司会進行をしてきた経験があり、メディッコでは司会兼ツッコミ担当。そしてみんなの兄貴!