パラリンピック選手村の医療ボランティアって何をするの?

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会は、日本人選手をはじめさまざまな国の選手の活躍があり、ドラマのような展開が随所にみられるエキサイティングな大会となりました。選手が滞在する場所は通常“選手村”と呼ばれますが、実は選手村の中には診療所があるのです。

診療所では、選手やスタッフを含めたあるゆる関係者の治療や診断を行っています。今回は、選手村診療所の紹介や、メディカルスタッフ(看護師)の仕事を一部紹介していきます。

選手村診療所はどんなところ?

選手村診療所には、さまざまな診療科が入っています。整形外科の割合がもっとも多いですが、内科や眼科、歯科なんかも含まれています。歯科は意外にも利用者数が多い診療科で、アスリートが食いしばることで生じる、歯のトラブルが多いことが理由だそうです。また、電動歯ブラシが貰えることを理由に、受診する方もいるようですよ。

選手やサポートスタッフの中にはさまざまな国や宗教の方がいます。そのため、男性医療者だけでは診察ができない方もいらっしゃいます。そういった方のために、“女性アスリート科”という科を設けて別途対応したりしています。

そして設備も充実しており、採血や心電図、レントゲンなどの検査も可能です。MRIも2基設置されており柔軟な対応が可能です。

さらに、理学療法や低周波治療をはじめ、針治療、アイスバス、薬局なども完備しており、さまざまな職種の医療スタッフが活躍しています。

医療スタッフはもちろんのこと、さまざまな国の方が利用しているため、通訳のボランティアも非常に多いです。特に、英語以外の言語を通訳できる方は少ないので、活躍する場面が多いのも特徴です。

診療所の看護師はどんな仕事をしているの

では、診療所内の看護師ボランティアはどのような仕事に従事しているでしょうか。看護師ボランティアの活動は多岐にわたっておりますので、その一部をご紹介します。

診療所内には、『トリアージ』という総合受付のような場所があります。そこでは、診療所を受診するための問診表の記入や、診療科の選択および予約を行います。

『外来』では受付業務や外来診察の補助、検査やリハビリの場所への案内や申し送りを行います。英語圏以外の選手やスタッフが来た際は、通訳ボランティアへの調整依頼なども行います。

コミュニケーションはどうしているの

選手村は、基本的に国外の選手も利用しています。そのため、日本語が通じることはほとんどありません。問診表には、日本語・英語両方の文面が記載されているので基本的な挨拶などが出来れば案内は可能です。

しかし、英語を話せない選手などに対しては、通訳ボランティアの方へ依頼を行います。そうはいっても、すべての言語に精通した通訳ボランティアの方がいるわけではありません。

そこで、どうしても会話が成立しない場合は、なんとスマートフォンを利用するのです。スマートフォンでお互いに翻訳を行ったり、組織委員会の準備した翻訳機を利用しコミュニケーションをとることで、英語が堪能でなくても積極的に業務が可能です。

感染対策はどうなってるの

COVID-19の影響もあり、感染対策は必須となっています。診療所へ行くまでの動線は選手とボランティアスタッフで完全に別となっており、交わりは最小限となっています。

話題となった選手村の食堂は、残念ながらボランティアスタッフは利用できません。代わりにボランティアスタッフ専用の食堂が準備されており、2種類の食事から選択が可能です。ちなみにデザートでアイスをもらえました。

また、診療所では選手などと関わる場合にN95マスクの着用とフェイスシールドの使用が推奨されています。そして、自己管理として2週間前からの体温チェックと活動日前後の体温の記録が義務付けられています。

ちなみに

ボランティアに参加すると色々なアイテムが貰えます。例えば、帽子、Tシャツ、パンツ(長ズボンにも半ズボンにもなるタイプ)、マスク、靴下、シューズ、メモ帳、ボールペン、水筒など。参加回数に応じてピンバッチが貰えたりもして、IDパスがピンバッチで埋め尽くされている強者もいらっしゃいました。

おわりに

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催は賛否両論ありましたが、選手のみならずそれぞれが今出来ることを行っています。最終的な勝者は一人ですが、選手それぞれが力を出し切れることを祈っています。

執筆者
中野(看護師)

手術室、急性期病棟、ICUを8年へて大学教員となる。現在は基礎看護学を担当。プロ格闘家としてのみならずコンテスト入賞歴もある格闘看護師として活動中。