救急医療から学ぶ、多職種・他施設連携とは

救急医療に従事する看護師のberryさんをお迎えしてお送りする座談会の第二弾。今回は院内だけでなく、院外の施設間連携についても考えます。一分一秒を争う救急現場だからこそ、情報共有がとにかく大切! 多職種&他施設の連携を推進させるために、どのような工夫が必要なのでしょうか。

参加者

 berry(Ns
看護師8年目、三次救急、二次救急、ICUで看護師経験を積んできた。twitter:berry

 大前(Ns)
元芸人で看護師11年目、救急隊の搬送を直接受けるICUに勤務している。

 久原(ME)
臨床工学技士、人工心肺業務をメインに急性期に携わってきた。現在は小児領域での業務が多い。

 たみお(PT)
慢性期病院の理学療法士。急性期、救急という言葉を知らず、ちんぷんかんぷんになると踊りだす。

サマリーの使い方はどうあるべき?

大前(Ns)

救命室(以下、ER)で働いてきた看護師のberryさんに、引き続きお話を聞いていきます。今回は、多施設連携について切り込んでいきたいと思います。

berry(Ns)

はーい、よろしくお願いします。

大前(Ns)

まずは一般的な多施設連携から確認してみましょうか。たみおさんの施設は慢性期でしたね。急性期病院から直接転院してくる患者さんはいますか?

いえ、基本的には急性期から、回復期を経て転院してくる患者さんが多いです。急性期から直接転院してくることはほとんどないですね。逆に急性増悪した患者さんを急性期の病院に緊急搬送することはあります。

たみお(PT)

大前(Ns)

そうなんですか。急性期病院に搬送する際の情報提供はどうされていますか?

もちろんサマリーの提供はしますが、治療していたのとは違う疾患で急変すると、相手側が必要とする情報を十分に記載できないことがあります。

たみお(PT)

大前(Ns)

むむっ! それ、どういう状況ですか?
例えば、呼吸器系疾患で入院している患者さんだと、呼吸器に関わる評価やリハビリをしていますよね。でも、その人が突然脳卒中になって搬送されてしまうと、脳卒中に関わる評価はしていないので、高次脳とか認知機能、麻痺の状況はサマリーに書けません。なので、実際に渡したサマリーが役に立っているのかは不明です。リハビリとしては、ADLやリハビリプログラムなどの情報を共有する程度です。

たみお(PT)

大前(Ns)

いや、それ大切ですよ。目標が見えますからね。berryさんはリハビリサマリーを見る機会はありますか?

berry(Ns)

申し訳ないですが、ないですね(汗)。救急で必要なのは病態なので、診療情報提供書は見ています。たまに看護サマリーがないことがあって、そういうときは困ってしまいます。

大前(Ns)

たしかに、たまにありますね(笑)。

ちょっと聞きたい! たみおさんの働いている病院には、患者さんが急性期から回復期病院を経て、慢性期病院に来るまでのリハビリ経過がすべて書かれた情報が来るのですか? それとも、1つ前の回復期病院からの情報だけですか?

久原(ME)

急性期から回復期の経過も含めたリハビリの内容をサマリーに記載してくれる病院が多いです。たまに、回復期の経過しかないこともありますが。僕たちはそれを見て、今までの状況を把握します。もちろん、自分でも再度評価して、そこからリハビリプランを作り直していきます。

たみお(PT)

なるほどなるほど。そのときのサマリーに、臨床工学技士(以下、ME)からの情報ってありますか?

久原(ME)

リハサマリーは、情報としてリハビリのことしか書いていないんですよ。MEに関しては、診療情報提供書に情報があると思うのですが、どこに書いてあるのかはわからないです。それに、読んだとしても内容を理解できるかどうか……。

たみお(PT)

たしかに、専門外の部分はあまり見ないですよね。僕も同様に、リハビリの情報を見てもわからないと思います。

久原(ME)

そうですね。だいたい皆、サマリーから自分の必要な情報だけを拾いますよね。

たみお(PT)

大前(Ns)

そう考えると、サマリーって同職種間での共有しかされていないということになりますね。職種の垣根を越えて情報を共有できたら、メリットがあるような気もしますが。

多職種・多施設連携を推進させるには?

大前(Ns)

ここまでをまとめると、多職種連携は院内でしかできてなくて、多施設連携は同職種でしかできてないというのがどうも現状みたいです。実際に僕の経験でも、転院搬送されてきた患者さんの病態や治療経過は、看護サマリーには書かれていない。逆に、家族情報や介護状況などは情報提供書でなく看護サマリーに書かれているなんてこともあり、結局医師も看護師も両方の書類に目を通さなければならないケースが多々ありますね。何かいい案はないですかね?

共通のフォーマットがあってもいいと思うんですよね。berryさんの職場は、他部門の特殊な情報や記録はどうやって共有されていましたか?

久原(ME)

berry(Ns)

二次救急のときは、救急科だけの独自のサマリーがあって、医師・看護師とおそらくリハビリも同じ書式でひとつの文面に書いていました。

大前(Ns)

え、ひとつのフォーマットに全職種が書いていく、ということですか?

berry(Ns)

そうです!

大前(Ns)

それは、すごくわかりやすくていいですね!

berry(Ns)

ある疾患に限定した連携パスだったと思うので、全員には使っていません。適用する患者さんの基準も決められていて、施設入所していない患者さんが中心でした。なので、発症前から施設入所していて、元の施設に退院される方には適用していませんでたね。たしか、そういった人には入退院を繰り返している患者さんが多いので、サマリーがなくても、施設のスタッフが情報を知っているからだと思います。その場合の情報提供は、医師と看護師のみで対応していましたね。
たしかに、連携パスって聞いたことがあります。共通フォーマットがうまく活用できるとすごくいいと思うんですよ。

久原(ME)

大前(Ns)

いいですね。患者さんが急性期から回復期、慢性期にかけてどんな経過をたどったか、多職種が共通して知っているほうが、その患者さんの個別性を引き出しやすいと思うんです。

本当にその通りだと思います。サマリーの内容はどの病院でも揃えてほしいですよね。

たみお(PT)

大前(Ns)

そうですよね!!

全部同じ書式で、サマリーを統一したほうがよさそうなのにっていつも思います。サマリーを作る側としては、送る場所によって書式が違うのは結構大変なんです。

たみお(PT)

berry(Ns)

脳卒中は、連携パスを使って同じ書式で運用している地域が多いと思いますよ。京都は病院ではなく地域で連携パスの書式を決めて、運用していました。

大前(Ns)

ほう。地域で決められるとすごくいいですね! それは一次救急からやっていましたか?

berry(Ns)

急性期・回復期・慢性期・在宅で同じものを使っていたと思います。記入する連携パスはどの期も同じものを使っていました。流れとしては、急性期で同意書を取って、連携パスを運用開始して、回復期以降も同じ連携パスに記入してもらっていました。京都では、脳卒中と大腿骨頸部骨折の連携パスがあったと思います。

大前(Ns)

こうした情報共有ができるように、地域から変えていきたいですね。

多職種連携に対するそれぞれの想い

berry(Ns)

皆さんの熱い想いに話が膨らんでしまいました(笑)。

最高です!

たみお(PT)

いいじゃないですか!

久原(ME)

大前(Ns)

僕はどの職種の人にも、もっと他職種のサマリーを読んでほしいっていう気持ちがあるんですよ。
うんうん。それ思いますね。

久原(ME)

大前(Ns)

患者さんは、それぞれ色んな経過をたどって目の前に来ているじゃないですか。すべてを理解しようとすると、看護の情報だけでも医師の情報だけでもダメで、医療者のさまざまな視点を共有する必要性を感じます。そうでないと、患者さんが経験したことを全体として捉えることはできない。他職種から得た情報を、治療に反映することが大切だと思うんですよね。

たしかに、通常は一側面しかみれないですもんね。

たみお(PT)

大前(Ns)

急性期、回復期、慢性期や介護分野といった時系列ごとの情報共有と同時に、多職種による多角的な情報が得られると、患者さんの経過が立体的になると思うんです。
いやほんと。他職種の情報はめっちゃ大切ですよ。僕は心臓血管外科と仕事をすることが多いのですが、時々、脳神経外科の緊急のモニタリングをすることがあって。そういうときにリハビリが記載してくれている麻痺の有無などの情報は本当に助かります。

久原(ME)

大前(Ns)

せやろ!!!(ドヤ顔)急性期病院でわかったことや起こったことを次につなげるってすごい大事だと思いますね。看護師だととくに、情報提供をきちんとするといった働きかけが、他職種だけでなく他施設との円滑な連携にもつながるので、意識していきたい部分だと思います。
円滑に情報提供ができる仕組みとして、例えば個人IDみたいなのがあって、そのIDにアクセスしたらその人のそれまでの病歴や経過などが見れるようなものがあればいいなと思いました。

久原(ME)

最近は、医療介護系専用のSNSツールが出来てきてるみたいです。院内や地域で導入できれば、急性期から慢性期への流れもわかりやすくなって、もっと連携が取りやすくなるかもしれませんね。

たみお(PT)

大前(Ns)

まさか救急からここまで膨らむとは(笑)。
berryさんがはじめに紹介してくれたように、救急は医療の原点なんでしょうね。まったく違う分野の職種でも、「助けたい」という気持ちは同じですから!

久原(ME)

大前(Ns)

今日はberryさん、ありがとうございました。

berry(Ns)

ありがとうございました!

まとめ
2回にわたって、救急医療に携わる看護師berryさんに、救急現場の実情を話していただきました。救急医療は患者さんの生死に直面するハードな現場ですが、その後の生活をスムーズにする上で多職種による支援は欠かせません。救急医療の現場で起きていることを知ることで、患者さんの状況をより深く、多面的に知ることにつながります。カルテでも、スタッフとのやり取りでも構いません。多職種連携の枠を広げてみませんか?