一包化されている薬剤とされていない薬剤の違い

 

皆さんの病棟の配薬カートにはどのような形で薬剤がセットされていますか?

一包化されている薬剤でしょうか。

PTPシート(メディサーチ)のままの薬剤でしょうか。

散剤の分包品でしょうか。

バラバラにしていると患者さんの管理が大変だから全部1つに一包化してくれればいいのに!と思う方もいるかもしれません。

配薬カートにセットされた一包化されていない薬剤、それには理由があります

※施設によっても一包化するかしないかのルールは異なりますので、一例としてご覧ください。

薬剤の品質が担保できない場合

薬剤は元々の包装で管理されている時のみ、その品質が保証されています

PTPシートから薬剤を取り出して分包するという行為はその保証から外れる行為です

薬剤によっては湿度や光といった様々な条件で品質が変化することがあります。

いくつか例をあげると、薬剤の硬度が変化したり、変色したり、有効成分が分解することがあります。

また現在は後発医薬品が数多く販売されています。

後発医薬品の製剤の工夫は各社異なりますので、同じような名称なのに一包化されていたり、されていなかったりします。

例として、以下にある成分の後発医薬品をPTPシートから薬剤を出した状態の安定性(無包装安定性)のデータを示します。

どの程度の期間を一包化して払い出すかによっても判断が異なりますが、B社の場合は一包化しないという判断がされることもあります。

例:とある成分の薬剤の無包装安定性の試験データ

保存条件:25℃、75%RH(相対湿度)、遮光

※試験開始時の含量残存率を100%とする。

A社:3ヶ月後の含量残存率が97.2%

B社:2週間後の含量残存率が87%

有効成分に毒性がある場合

次は薬剤の有効成分に毒性がある場合です。

代表的なものは抗がん剤です。

これはイメージしやすいのではないでしょうか。

有効成分自体に毒性がありますので、不必要に触れることがないようにPTPシートのまま払い出しをしている施設が多いと思います

抗がん剤以外にも注意が必要な成分があります。

例として前立腺肥大症治療薬の中には女性や子供が有効成分に触れないように注意喚起されている薬剤があります。

これらのように有効成分に毒性がある場合、極力成分に触れることがないようにPTPシートのまま払い出しをしている施設が多いと思います。

法的に規制されている薬剤の場合

麻薬や覚せい剤原料のように特別な管理が必要な薬剤も一包化はせずPTPシートのまま払い出しが行われている場合があります

その他の薬剤と分けて、施錠できる場所で管理をしなくてはならない薬剤ですので当然といえば当然といえます。

またこれらの薬剤は破損をすると届出をしなければならない薬剤であり、一包化のような加工はできる限り避けたいです。

最後に

全ての薬剤が1つの分包紙内にまとまっているのは確かに理想なのですが、それが難しい事例をいくつか紹介させて頂きました

病棟で与薬をしている方の立場からすれば、1つにまとまっていないのは「面倒だ」と思う方もいるかもしれませせん。

ですが、今回述べたような理由があることを頭の片隅に置いていただき、より適切な薬剤管理にご協力いただけると一薬剤師として嬉しく思います。

 

執筆者
S.O(薬剤師)

後発医薬品企業勤務の後、病院薬剤師。いわゆる中小病院で糖尿病・感染症領域を主にうろうろと。