橈骨遠位端骨折患者さんの合併症と対策をハンドセラピストがご紹介!


橈骨遠位端骨折は
手首の骨折で、高齢者では転倒時に手をついたときに多く受傷します。
整形領域の病院やクリニックでは遭遇することの多い疾患の一つです。

治療は手術・保存治療と分かれますが、今回は合併症の予防に焦点を絞って対応方法をご紹介します。

指・肘・肩の拘縮


拘縮をきたす要因として大きいものは不動化です。
ギプス固定をしている患者さんでは、「手首を動かすと骨折部がずれるのではないか…?」と不安を持つことも多いのです。

しかし、実際には骨折部がギプスでしっかりと固定されているために拘縮が生じる可能性があり非固定部位の運動が重要になります。

具体的には手指のグーパー運動や肘の屈伸、バンザイをするように上肢挙上運動を自力で行うことが重要です。

痛みが強くて自力で動かせない場合には、健側手で手伝いながら動かすことも重要です。

腱断裂


橈骨遠位端骨折後の腱断裂は親指と人差し指の屈筋腱で断裂することが多いです。
数年〜数十年単位で陳旧性に断裂することもあるので、全てを予防することは不可能かもしれません。

また、手関節を反らせながら親指と人差し指の運動をたくさん行うことで腱に摩擦が生じやすいとも言われています。

腱断裂を予防する観点で言えば、手関節は中間位(倒さず・反らず)のポジションで運動することがオススメです。

 

手根管症候群


手根管症候群は親指から薬指までの痺れを主症状としてつまむ力が低下していくなど症状が進行していけば手術治療が必要になります。

根管症候群の症状は手関節を過度に倒す、反ると症状が誘発されやすいです。たとえばストレッチなどで可動範囲を広げようとした場合、長時間手首を倒し続けるとしびれが誘発される場合があります。この場合には症状の有無を確認するなど注意が必要です。

また手関節部を夜間安静にする目的で中間位での固定(スプリント使用)する場合もあります。

CRPS


CRPSは「複合性局所疼痛症候群」の頭文字からとった略語になり、明確な原因はわかっていませんが、橈骨遠位端骨折後に比較的多く発症しやすいと言われています。
病態に見合わない強い疼痛や知覚異常、異常発汗などが症状に見られます。

不動化に伴い発症する場合があるので、予防するにはなるべく早期から自力で運動してもらうことが大切です。

ただし疼痛を我慢してまで行う必要はありません。

まとめ


合併症は予防が一番大切で、疼痛を誘発させない範囲で早期から運動することが対策として効果的なことが多いです。

しかし経過の中で突然強い痛みや痺れ・これまでなかった制限が見られた場合には一人で抱え込まずになるべく早く主治医に診察してもらうことが重要です。

 

執筆者
小池拓馬(作業療法士/ハンドセラピィ部)

急性期病院で上肢整形外科疾患に対するリハビリ(ハンドセラピィ)を行なっています。普段メディッコ内では、みんなのボケ・ツッコミをにこにこ見守っています。