薬剤師は本当に薬をなめただけで、何の薬か当てられるのか?

病院薬剤師が主役のドラマ「アンサングシンデレラ」が放送され、薬剤師の仕事に注目が集まるようになりました。

先日放送された第2話では、石原さとみさん演じる主人公の葵みどりが、患者さんの家にある薬をなめて「この味はロペラミドだ!」と判断し、患者さんの命を救うシーンがありましたが、実際に薬剤師は薬の味から何の薬か判断できるのでしょうか?

薬の味見は実際にする!

薬剤師は、薬の味や匂い、ざらつきなどが原因で患者さんから服薬を拒否されるケースもあるため、日頃から製剤特性についての情報を集め、患者さんにとって飲みやすい方法を考えながら指導しています。

特に小さい子どもを持つ親御さんからは、薬の飲ませ方についてよく質問を受けます。そのため、実際に粉薬やシロップの味見をしたり、薬との食べ合わせ・飲み合わせを確認したりすることもしばしば。自分の病院・薬局で採用している薬の味には、おのずと詳しくなります。

先発品と後発品(ジェネリック医薬品)でも味は違う!

異なる成分の薬の味が違うのは想像がつくと思いますが、同じ主成分の薬でも、先発品と後発品では添加物などが異なるため、味も違っています。胃薬のファモチジンD錠を例に挙げると、先発品はミント味ですが、後発品はオレンジヨーグルト味などがあります。胃腸の調子が悪いとき、ミント味の薬を口にすることで爽快感が得られる一方、ミントが苦手な方にはオレンジヨーグルト味の後発品のほうが飲みやすいかもしれません。

また、アジスロマイシン細粒は先発品より後発品のほうが苦味をマスキングできていると言われています。このように、各製薬メーカーが、患者さんにとって飲みやすい薬にするため、工夫を凝らしていています。

病院や薬局では、同じ名前の薬が複数存在しないよう、基本的に1つの薬につき1つのメーカーしか採用しないようにしています。さまざまなメーカーの後発品から、1つの採用薬を選ぶ際は、味も重要な判断基準となっています。

服用薬の確認にはお薬手帳が一番!

とはいえ、世の中には本当にたくさんの薬があるため、薬剤師が全ての薬の味を把握することは不可能です。また、一般的な真っ白い粉薬・錠剤を見て、何の薬か判断するのは至難の業です。

そのため、お薬手帳の存在がとても大切です。お薬手帳を見れば、今飲んでいる薬の種類・用法・用量がひと目でわかります。薬剤師が患者さんに、病院や薬局へ行くときはもちろん、普段からお薬手帳を持ち歩くようお願いしているのは、こういう理由からです。多職種の皆さんも、未確認のお薬手帳を見つけたら、ぜひ薬剤師に教えてくださいね!

執筆者
りょこ(薬剤師)

 

前職は小児専門病院の薬剤師。小児薬物療法認定薬剤師とスポーツファーマシストを取得。マイブームは公衆衛生と感染症。