高齢の患者さんが退院するときにこんな不安はありませんか?
- トイレはちゃんと行けるのかな
- お風呂は安全に入れるだろうか
- 外出するとき誰か付き添ってくれるのかな
- 杖やシルバーカーは持ってるのかな
- リハビリは退院後も続けるのかな
- このまま自宅退院しても大丈夫かな?
このコラムでは病院から自宅への橋を繋ぐケアマネージャーが、退院後の生活で大切な介護サービスの世界を紹介します。
ケアマネージャーとは
ケアマネージャーは要介護者等が自立した生活を行うために必要なサービスを利用できるように、サービスを提供している事業所などに連絡や調整を行うことを仕事としています。
患者さんやその家族が抱える生活上の不安を言語化し、見えるようにすることで、その対処方法を検討していきます。
介護認定とは
介護保険によるサービスを受けるためには、介護認定を受けなければなりません。これは市区町村にある介護保険課に要介護認定申請書とよばれる書類を提出し、認定調査が行われることで認定されます。要介護度は要支援1~要介護5までの7段階があり、日常生活の自立度や認知症の有無(程度)などを参考に決定されます。要介護度によって、どのようなサービスがどれほど使えるかが決まります。
退院カンファレンスは多職種で話し合う
患者さんが自宅復帰するときにはどうすれば安全な生活を行えるかを多職種で話し合います。たとえば、医師、看護師、理学療法士、薬剤師、医療相談員、ケアマネ、福祉用具専門相談員などが集まります。
カンファレンスでは次のような内容を話し合います。
- 日常生活の自立度、全身状態の確認
- 環境アセスメント(手すりなどの住環境や車椅子などの福祉用具利用状況)
- 服薬管理の方法
- 訪問看護やデイサービスの利用有無や頻度
- 退院日と退院手段(介護タクシーの使用や家族の付き添いなど)
ケアマネはこのとき仮のケアプラン(介護サービスのスケジュール表のようなもの)を用意しておき、それを元に話し合います。
ケアプランはどんなもの?
実際のケアプランがどのようなものか気になりますよね。今回は、大腿骨骨折で入院していたAさんのプランを解説します。
①デイサービスの利用(リハビリに特化したデイサービスを週2回利用)
Aさんは退院後にも長期にわたってリハビリを必要としていたため、リハビリをメインとして行うタイプのデイサービスに週2回通うこととしました。デイサービスは入浴目的で利用する場合やレクリエーションを大切にする場合など様々なものがあり、その人に合ったものを選択しています。
②住宅改修(玄関、廊下、トイレ、浴室に手すりの設置)
介護保険サービスを利用して、住宅改修(手すりやスロープの設置)を行うこともできます。大腿骨骨折後は歩行が不安定になるために手すりを設置することで、安全な生活を送れるように支援します。
③福祉用具貸与(ベッド、4点杖、外出用に歩行器の貸与)
介護保険サービスでは福祉用具をレンタルすることが出来ます。布団生活で杖を使用せずに過ごされた人も、骨折を機に福祉用具を使用することが多いです。
ケアプラン提案の際にはこれらをイメージしやすいよう、写真つきパンフレット使って説明したり、実際に患者さんの自宅で手すりやベッドの位置を検討します。
このようなケアプランを提案し、Aさんは「それなら自宅に帰っても大丈夫そうかな」と安心されたようです。
おわりに
ケアマネージャーは病院から自宅への橋を繋ぐために様々な職種から情報収集し、安全な生活が行えるようにケアプランを立案します。患者さんが退院するときに「あ、これは知っておかないと困るぞ!」と思うことがあれば、ケアマネージャーに情報提供していただけると幸いです。
ケアマネ歴7年。東京都で居宅介護支援事業所に勤務。
保有資格:保育士、介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、主任介護支援専門員
ツイッターアカウント:@akubichandobin