新型コロナウイルス感染症が広まり、医療施設だけでなく飲食店や映画館など、さまざまな場所で感染対策がとられるようになりました。しかし、医療従事者の目線で見ると「これって本当に感染対策…?」と感じるものもしばしばあります。そこで今回は、そのような一般的に行われている感染対策に対して、メディッコメンバーが話し合いました。
今回は後編として「街中での感染対策について思うこと」「自宅や街中でもできる感染対策の工夫」について話し合った内容をお送りします。
前編はこちら
街中の感染対策に対して医療職として思うこと
くー(ME)
近頃は街中でも多くの感染対策を見かけますが、医療職として何か思うことはありますか?
レジ近くにあるビニールカーテンはちょっと心配ですね。たまに、丈が長くて直接手が触れてしまったり、商品や買い物カゴが当たったりするお店を見かけて、感染対策にならないんじゃないかなと。あとは、交換や清拭など、清潔を保つ工夫がきちんと講じられているのかという心配もあります。飛沫感染を気にし過ぎてて、接触感染の意識が薄いんじゃないかと思ってしまいます。
S.O(Ph)
タサモ(ME)
そうですね。僕はコンビニやスーパーの店員さんが着けている手袋も気になります。ビニールカーテンもですが、清拭・取り換えのタイミングは決めておいてほしいですよね。また、防護具がないところでの作業や受け渡しについても、感染予防の方法をぜひ考えてほしいです。
私も、店員さんの手袋めちゃくちゃ気になります! 手袋をしたまま、商品触ってレジ触ってお金触って…。アルコール消毒のタイミングとか頻度って、ちゃんと決められてるのかなとか。ビニールカーテンも手袋も、「とりあえず使ってればOK」みたいな雰囲気があって、逆に危ないなと感じます。
ぽりま(Ph)
くー(ME)
たしかに、自分がそれら防護具の内側にいる間は守られるかもしれませんが、その分、外側は汚染されていることに気付いてほしい。手袋をしていても、そのままあちこち触ってしまったら、汚染範囲を広げちゃうだけですよね。例えば、レジのボタンに透明なテープを貼って、お金の受け皿はビニールやラップで包んで、どちらもこまめに取り換えるとか。そこまでやらないと、気付かぬうちにお客さんに汚染されたものを提供している…なんてことにもなりかねないと思いまます。
ぽりま(Ph)
Fats(Ph)
店員さんの手袋は本当にそうですね、気になります。今の世の中は、感染対策に対して一般人が対応せざるを得ないので、難しい話だとは思うのですが、結果的に的はずれだったり逆効果なことをしてしまっている部分があると思います。次亜塩素酸水の空間噴霧とかもそうですが、新型コロナに効くかどうか、データの揃っていないものをむやみに使うのも危ないですよね。
たみお(PT)
やっぱり、皆さんレジ周辺の環境は気になっているんですね! すでに出てますが、ビニールカーテンや手袋、お金の受け皿って、不特定多数の人が触れるので、清潔を保つのがすごく難しい。消毒や取り替えのタイミングは、ぜひ考えてほしいですよね。
着けっぱなしになってしまうなら、手袋はあまり意味がないですね。手袋をしたままアルコール消毒をしている人もいますが、手袋はたわむので、皺の部分に汚れや菌が繁殖してしまいます。手袋をするならお客さん1人ごとに付け替える、それが無理なら手袋をせずにお客さん1人対応するごとにアルコール消毒をする方が衛生的だと思います。感染対策を複数重ねることで、逆に不衛生になることもあるんですよね。
須藤(OT)
なるほど。たしかに感染防護具って、正しく使えないなら使わない方がむしろ安全ってパターンもあるのかもしれない。限られる資源だからこそ難しいですよね。安全性とコストを両立するいい方法はないのでしょうか。そういうのって、一般の人たちはいったいどこで学べばいいのかな?
ぽりま(Ph)
Fats(Ph)
その件ですが、こないだこの発信を見て、一般人への啓蒙は難しいなぁと改めて思いました。
Fats(Ph)
正しい情報ほど、爆発的に広まるのは難しい。だからこそ、日頃からセルフメディケーションの啓発は大事ですよね。そういう意味でも、感染対策の知識を啓蒙する場所として、ドラッグストアとか調剤薬局とかが存在感を見せてほしいところ。それなのに、一部のドラッグストアでは、利益優先で濃度の低いアルコールを高く売っているところとかあるし、薬剤師としてはとても残念に思う・・・。
アルコールと次亜塩素酸の正しい使い分け
くー(ME)
それでは、自宅や街中でもできる、正しい感染対策のひと工夫を教えてください!
手洗い・うがい・マスク・距離(ソーシャルディスタンス)!!!!!!
喜多(PT)
医療や飲食の現場で働いている人にはものすごく当たり前ですが、やっぱり1作業に1手洗いはホントに大事! ちなみに、次亜塩素酸ナトリウム・次亜塩素酸水とアルコール消毒液の使い分けについて、一般的にあまり理解されていない印象を受けるのですが、詳しい人いますか?
須藤(OT)
コロナの一件で、消毒液の知識って手洗い・うがい・マスクの徹底と同じくらい大切だなと改めて気付かされました。先日、近くの大型ショッピングセンターに行ったら、「アルコールが不足しているので、次亜塩素酸水を薄めたものを用意しています」って、入り口に手指消毒用で置いてありました。これってどうなんですか? 薬剤師さんが詳しいのかなと思ったのですが…。また、空間噴霧についてもテレビで取り上げられていたので、あまりいい印象がないです。
みややん(ST)
そうですね、空間噴霧のニュースで見たときは、「ほええええ」ってなりました(苦笑)。
喜多(PT)
たしかに、次亜塩素酸水について有人空間のウイルス除去効果は検証されていないですし、次亜塩素酸ナトリウムは吸引すると有害だと厚労省から通知も出ています。よって、手指消毒や空間噴霧などには推奨されていません。ただ、今回のコロナ禍のように、アルコールの供給が不足している場合の代用として、物品消毒などに使うのはやむを得ない面もあるんじゃないかなと思います。次亜塩素酸水・次亜塩素酸ナトリウムは、アルコールが無効なノロウイルスの消毒にも使えるので、一概に「危険!」と思い込まず、正しい知識を持っておいてくださいね!
ぽりま(Ph)
そうそう。 手指の消毒には、第一に手洗い、その次にアルコール消毒が推奨されていて、物品や食器、手摺り、ドアノブなどの消毒には次亜塩素酸水や次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)が推奨されているよね。次亜塩素酸水は濃度を間違えると人体に悪影響が出かねないから、注意して使ってほしいです。国が出しているこんなポスターがありますよ!
須藤(OT)
鳥ボーイ(Ns)
ほんま、SNS時代の良し悪しというか、情報の拡散がマイナスに働くと人命にも関わるかもしれないという可能性を感じて、ゾッとするようなことがありますよね。やっぱり、シンプルに「手洗い」がどこでもできて最強かな! あとは清潔なタオルやな!!(笑)
私も、自分で徹底しているのはこまめな手洗いと、帰宅したらまずうがいです。ハンドジェルとかもあるといいですよね。自分たちが正しい知識を持つだけでなく、周りにしっかり伝えていくことも大事だなと思いました!
えだな(OT)
まとめ
今回は、街中での感染対策について思うこと、自宅や街中でもできる感染対策の工夫について話し合いました。間違った感染対策は逆に感染を広げてしまう可能性があるため、正しい情報をいかに一般の方に普及啓発していくかが社会全体としての課題だと思います。日常でできる感染対策の工夫としては手洗いうがい、適度な距離を取るなど基本的なことを徹底する、これに尽きると思います。これまでの生活と比べて手間になることも増えましたが、自分や周りの人が感染しないように、新しい生活様式にうまく適応していきたいですね!
[…] 【後編】「その感染対策は合ってる?」医療従事者の視点から考える、街中の感染対策について […]