自分のことが自分でできる。そんな些細な幸せが、障害を持つと途端に難しくなります。そんな時、自分の力で出来るようになることを叶えてくれる道具が「自助具」です。今回は入浴に役立つ自助具について作業療法士が紹介します。
片手で使える「シャンプーボトル」の工夫
シャンプーを出すには、実は両手が必要です。
シャンプーのポンプを押す方と、シャンプー液を受け取る方です。片手しか使えなくなると、これが非常に難しく、大量のシャンプー液を無駄にしてしまうことになります。このような時は、シャンプーの口の先端に直径の合った管を延長し、外側に針金を巻きつけて、ちょうどポンプを押す真上に出口が来るようにします。すると、手の甲でポンプを押すと同時に手のひらにシャンプー液が出てくるようになります。1つ欠点を言えば、ボトルが変わるたびに付け替えしなければいけないのです。
さらに簡便な方法としては、ボトルの近くにクリアカップを置き、シャンプー液をクリアカップに入れて使う方法です。これなら片手でも出来ますし、ボトルの付け替えも不要になるのでお勧めです。
回して洗える「リングタオル」
身体を洗う時、誰もが困るところが、背中です。さらに片手しか使えないと、使える方の上腕や肩回りも洗いにくくなります。
健常な方であれば、タオルを背中に回して洗うことができますが、実際にタオルを背中に回そうとすると意外にも手をダイナミックに使う必要があることに気づきます。例えば肩が痛くて上に上げにくい方や、片麻痺で片手が使えない方にとってはとても難しい動きです。
このような時は、二本のタオルをつなげた「リングタオル」が活躍します。リングタオルを使えば、タオルを身体に通してタオルを回すだけで背中が洗えます。肩や上腕が洗いたいときは、タオルの位置を変えて回すだけです。背中の後ろで見失うこともないので、お勧めです。
半身浴にも立ち上がりにも「浴槽内椅子」
浴槽内の椅子は自助具だけでなく福祉用具としても扱われていますが、自作される方やホームセンターの既製品を転用して使われる方もいますので、ここに紹介します。
1つ注意してほしいことは、素材や構造によっては軽すぎてお湯の中で浮いてきてしまうので、しっかりと水の中で沈むことを確認してください。
浴槽内の椅子には2つの使い方があって、1つは足の力が弱くて立ち上がりが大変な方の補助として使う方法です。もう1つは半身浴のためですが、これはどんな人に適しているかというと、心疾患を持つ方です。肩まで浸かると心臓への負荷が高いため、半身浴が推奨されますが、実際に半身浴をするにはお湯を減らしたり、少し無理な体勢で浸かることがあります。この浴槽内の椅子があれば、足も伸ばしやすく、時間をかけて半身浴ができます。また、お湯につけたタオルを肩にかけることで、全身浴と同じように肩まで温めることができます。
まとめ
今回は、入浴にまつわる生活の工夫について紹介しました。お風呂が好きな方にとっては、ゆっくりと自分の時間を過ごしたいものです。ちょっとしたひと工夫で、自分の好きな時間を作れるといいですね。
地方の急性期病院で、地域の人たちを陰ながら支えています。真っ当に研究業績を積みながらも、メディアや地域活動を通して作業療法の魅力を伝えるマルチプレイヤー。