NG注意!看護師に伝わりやすい依頼方法を作業療法士が解説

病院における多職種連携といえば、必ずかかわる看護師との連携が重要です。

しかし、リハビリの場面や他職種が関わる場面では、普段は見えない問題に気づくことがあります。

そんな時、看護師への伝え方が一つ間違うと、連携がうまくいかず、患者さんの支援に繋がりにくくなってしまいます。今回は他職種から看護師にお願いするときのNG例を紹介します。

NG例1:言いたいことだけを伝える

看護師以外の他職種には、それぞれの専門分野があります。例えば、理学療法士なら身体の動きや歩行のこと、薬剤師なら薬のこと、臨床工学技士なら医療機器のことです。それぞれ専門分野が異なるので、隣の畑のことは知らなくて当然ですし、すべてを知っている職種はいません。この前提の下で、連携をするときによくやってしまうのが、「言いたいことだけを伝える」という事例です。

事例)作業療法士が患者さんのトイレ動作を練習して、自立できる状態になったと判断した時に、看護師に「今日からトイレ自立でお願いします」と伝えた。

解説)作業療法士としては、きちんとした評価の下で判断していますから、間違っているとは思っていません。しかし、そこが落とし穴なのです。看護師の視点では、まだトイレの自立度を確認しないまま、口頭でトイレ自立と言われた状態です。鵜呑みにして転倒でもしたら、と不安が残ります。一方向に言いたいことだけを伝えるだけでは、連携とは言えません。このような場面では、「○○ができたので、トイレを自立にしたいと思うのですが、看護師さんはどう思いますか」と双方向のコミュニケーションを心がけましょう。

NG例2:ミスの指摘から入る

入院している患者さんを注意深く観察していると、専門職ならではの視点で、いくつも問題が浮かび上がってくると思います。入院生活の問題は看護師が評価し、計画立てて看護をしていますが、すべてに対応することはできません。ですから、他職種から「対応できていない問題」を指摘することは容易であると思います。この事例では、伝え方の順番が問題になっています。

事例)作業療法士がベッドで寝たきりの患者さんのリハビリをしている時、口の中がひどく汚染されていることに気づいた。リハビリが終わった後、看護師に「口の中が汚かったので口腔ケアお願いします。体位交換ありがとうございます」と伝えた。

解説)作業療法士は現状を伝えたつもりですが、これを言われた看護師はムッと嫌な気持ちになってしまいます。この嫌な気持ちにしてしまうことが、とても大きな問題です。先に嫌なことを言われると、その後の話がすべて怒られたように感じられてしまい、建設的な話し合いがしにくくなってしまいます。このような場面では、「体位交換ありがとうございます。口の中が汚れていたので、口腔ケアお願いします。」と先に良いことから伝えると受け取り方も変わるかもしれません。

まとめ

今回は、看護師との連携の時に気を付けたいNG例を紹介しました。ちょっとしたことですが、日頃の行いから連携の密度や質が変化していきます。他職種への配慮が、患者さんへのケアやサービスの質につながりますので、心地よい連携ができる環境づくりをしていきましょう。

執筆者
須藤誠(作業療法士/学術部)

地方の急性期病院で、地域の人たちを陰ながら支えています。真っ当に研究業績を積みながらも、メディアや地域活動を通して作業療法の魅力を伝えるマルチプレイヤー。