放射線技師に聞け!被ばくの常識の大変革!君の瞳にゴーグルを!

こんにちは、クラークです。2021年4月に被ばくに関する法令が改正されたのをご存知でしょうか?院内においても看護師さんや臨床工学技士さんなどは放射線検査に携わる機会も多いと思います。そこで今回の法令改正のポイントをさらっと押さえておきましょう!

「被ばく」に関する基礎知識

放射線の性質には直接線と散乱線という性質があります。直接線というのは患者さんが受ける放射線で、水道の水を受けてるイメージです。散乱線というのは周囲にいる人が受ける放射線で、水道の水が作り出す水しぶきのようなイメージです。この2つは被ばくの影響を考える上で非常に重要です。

また、受ける被ばくは対象によって医療被ばくと職業被ばくの2つに分けられます。医療被ばくというのは、患者さんが診断や治療のために必要と判断された上で受ける被ばくのことで、主に直接線を受けます。そして、この医療被ばくに対しては放射線を受ける規制値というものはありません。医療においては、放射線を受けるリスクがある一方でそれを上回るベネフィット=利益があるからです。

一方で、職業被ばくというのは医療従事者が受ける被ばくのことをいいます。どんな時に受けるかというと、患者さんの検査の際に介助をする・機械の操作や記録、患者さんの様子観察のためにX線が出ている間も室内にいる等が該当し、主に散乱線を受けます。これらは放射線を受ける側(医療従事者)のベネフィットがないため、労働安全衛生を考慮し、受けてもいい上限値が定められています。 

どんな法令がどう変わったの?

労働安全衛生法の一つである電離放射線障害防止規則(略して電離則と言われます)が改正されました(令和3年4月1日施行)。この法令改正のポイントですが「眼の水晶体が受ける職業被ばくの規制値が今までより3分の1に下がった!」ということです。これは変化が大きすぎて放射線界隈の現場はえらいこっちゃ騒ぎです。国も周知に力をいれており、様々なリーフレットが発行されています。

具体的な改正内容を記します。

  • *改正内容【眼の水晶体等価線量を引き下げ:1年間につき50ミリシーベルト、5年間につき100ミリシーベルト】(従来は1年間につき150ミリシーベルト)
  • 5年間につき100ミリシーベルトということは、年換算では実際のところ20ミリシーベルト/年となります。従来から比べると約7分の1ということになります。

参考)厚生労働省 ホームページ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/0000186714_00003.html

現場への影響は?

今回の改正のメッセージは「今まで以上に眼を守りなさい!」ということです。

日々の業務内容は一切変わらないのに、従来の基準では問題の無かった人たちが新しい基準に照らし合わせると法令違反となってしまう可能性があるため、「今行ってること+α」の防護対策が求められます。ですが、その前提として施設で配られる放射線測定用のバッジをしっかりとつけ、自身の受けている被ばく線量がどのくらいかを正しく記録することが重要です。

残念なことに、最近のNHKのニュースでも全国で3割余りの医療機関において被ばく線量の把握に必要な線量計が適切に配られていない実態が明らかとなりました。他の学会では配布されている線量計を適切に装着されていないという報告もあります。まずは自分たちの状況を把握することが自身を守る第一歩になります。

その上で、プロテクターと呼ばれる放射線から体を守る防護具を正しく着けることが大事です。水晶体用にはゴーグルタイプの防護具があります。特にゴーグルは顔と隙間が開かないように、鼻翼ではなく鼻の根元で装着するようにしましょう。どのようにすればより被ばくを減らすことができるのか、各施設の放射線技師は知っていますので、気軽に聞いてどんどん連携しちゃいましょう!

執筆者
クラーク(放射線技師:RT) 

総合病院で働く放射線技師。被ばくとカロリーの管理は適切に!