患者さんの疾患や病態に合わせて、コメディカルはそれぞれの特徴を生かしながらアプローチしていきます。でも、「他職種が具体的にどんなアプローチをしているのか」は、よくわからないことが多いですよね。
今回は、誤嚥性肺炎をテーマに、作業療法士(OT)、歯科衛生士(DH)、管理栄養士(RD)、薬剤師(Ph)、看護師(Ns)が集まり、それぞれの具体的な考え方を話し合いました。
須藤(OT)
作業療法士。老後に備えて嚥下のことに興味津々。
ぴかりん(DH)
元病院勤務の歯科衛生士。ここ数年家族がよくむせるので心配。
うめやん(RD)
管理栄養士。嚥下機能が落ちてきた人にも好きなものを美味しく食べてほしい。
ロッソ(Ns)
看護師。楽しく安全に食事を摂って欲しいと切に願っている。
イサミ(Ph)
元病院薬剤師。他のことをしながら水を飲むと高確率でむせる。
まずはここから!誤嚥性肺炎ってどんな疾患?
須藤(OT)
基本的なことですが、誤嚥性肺炎って何が原因で肺炎になってしまうんでしたっけ?
ぴかりん(DH)
高齢者では、摂食・嚥下機能が低下している方が多いですね。食べ物を食べるときにうまく嚥下できず、気管に入ってしまうことで発症します。特に、口の中に残りやすいものや、飲み込みにくい形状のものなどが原因になりやすいと思います。
須藤(OT)
ぴかりん(DH)
高齢者では、お水やジュースも「むせ」の原因になることが多いと言われますね。若い方でも食事中にむせることがあると思うのですが、高齢者では「むせ」がない方もいるので、発見が遅れる時もありそうです。
僕からも補足すると、摂食・嚥下機能低下がリスク因子となり、唾液や食べ物・胃液などと一緒に細菌が気管に入り込むことにより発症します。僕は結構むせる方なので、将来が心配(苦笑)。
イサミ(Ph)
須藤(OT)
なるほど! あと、寝ている間に誤嚥することもあるって聞いたことがあるけど、本当なの?
ぴかりん(DH)
寝てる時の誤嚥に関しては、胃酸の逆流や、唾液などによって起こることがあると言われていますね。そのため、寝るときの姿勢や枕の工夫をすることもあるようです。
各職種…誤嚥性肺炎にはどう関わる?
須藤(OT)
皆さんは、誤嚥性肺炎の『予防』に関わることが多いですか?それとも『治療』にがっつり関わりますか?
ぴかりん(DH)
歯科衛生士としては、『予防』に関わることの方が多いと思います。口腔内ケアはもちろんですが、残存している歯の咬合のチェックや義歯の適合なども併せて確認しています。他職種との関わりにおいては、口腔ケアの方法や、患者さん一人一人に応じた具体的なアドバイス、注意してほしい点についても説明しながら行うという感じです。
管理栄養士も『予防』に関わることが多いです。誤嚥性肺炎にならないように患者さんの嚥下機能に合わせた食形態の提案、低栄養にならないような栄養管理をしていきます。嚥下機能に合っていない食事の提供をすることで、誤嚥から肺炎にもつながりますし、食べにくさから食事量が減ってしまうと低栄養にもつながります。つまり、嚥下機能を評価と食形態の選択はとても重要だと思います。
うめやん(RD)
看護師は『予防』と『治療』どちらにも関わりますね。まずは、普段の口腔ケアや食事介助で誤嚥を起こさないようにケアします。食べる姿勢も大事で、肩・骨盤・膝・足関節が平行になっているかチェックしています。あとは食べる意欲ですね。嚥下機能が良くても意欲がないと食べれないし、むせてしまいます。そして、実際に誤嚥性肺炎になってしまった患者さんにも、引き続き治療で関与します。
ロッソ(Ns)
薬剤師から見ても、やはり看護師の関わりは、誤嚥性肺炎の『予防』と『治療』に関して重要ですね! 薬剤師としては『予防』より『治療』に関わることが多いです。治療の中心は薬物療法なので、抗菌薬の適正使用に関与していきます。肺炎の起因菌や抗生剤投与に関して意識が向きます!
イサミ(Ph)
須藤(OT)
なるほど。職種によって、関わり方が違うので、連携することで効率的に対応できそうだね。
誤嚥性肺炎と関わるときのポイント
須藤(OT)
ずばり…それぞれの職種での関わり方のポイントを教えて下さい!
ぴかりん(DH)
高齢になると口腔内ケアが不足することが多いです。誤嚥性肺炎のほとんどは、口腔内の細菌が原因で肺炎を引き起こすので、ケアに関して慎重になります。うがい時に使用する水も誤嚥を引き起こす原因になりかねないので、極力うがいをしなくても済むような口腔ケアを行うこともあります。
須藤(OT)
たしかに口腔ケア不足が原因の誤嚥も聞いたことがありますね。
ぴかりん(DH)
はい。とくに、寝る前の口腔ケアに関してですが、例えば、口腔内に存在する細菌が唾液と混じり、その唾液を誤嚥することによって肺炎を引き起こす場合もあります。ですので、寝る前に限らず、口腔ケアを行うことで口腔内の細菌を除去するのは予防法としては効果的だと思います。
薬剤師の視点から話をすると、予防として降圧剤であるACE阻害薬を用いることがあります。なぜ降圧剤!?と思うでしょう!これは、副作用の『空咳』を逆手にとって咳反射を過敏にして誤嚥を予防します。保険適応ではないですが。
イサミ(Ph)
降圧剤の使用、初めて知りました!!薬でも予防ができるんですね!!
うめやん(RD)
エビデンスとしては限られていますが、一部の症例には有効な場合がありますね!
イサミ(Ph)
認知症や注意障害など高次脳機能障害がないか確認して、脳卒中の場合、アマンタジン(ドパミン放出促進薬)の処方をお願いすることもあります。環境に適応できないと誤嚥リスクが高まるので。
ロッソ(Ns)
誤嚥性肺炎は低栄養になる大きなリスクでもあるので、予防が大切ですよね。低栄養はADLの低下、サルコペニア、摂食機能の低下などさまざまな問題を引き起こします。万が一誤嚥しても、栄養状態が良好であれば肺炎まで至らないことも! 栄養状態を良好に保つことが誤嚥性肺炎の予防にもつながると思ってます。
うめやん(RD)
ぴかりん(DH)
歯科では、口腔内を清潔に保つ以外にも、歯の治療や義歯の修理なども行っています。誤嚥性肺炎を起こす原因は、摂食・嚥下機能の低下によるものなので、歯科の観点からすると、食事を取れる環境(口腔内)を作る事もポイントになってきます。唾液腺マッサージや口腔体操を行うなどの方法もあります。
須藤(OT)
まとめ
今回は誤嚥性肺炎をテーマに、関わりの多い職種が集まりアプローチの考え方を話し合いました。職種によって関わるタイミングやポイントはそれぞれでしたね。またそれぞれの職種が共通して、口腔ケアや低栄養予防の重要性を意識していることもわかり、実際に連携するときにも話題として出しやすくなったと思います。他職種が考えていることを知っておくことは、自分の役割を発揮するためにも重要です。誤嚥性肺炎に対するあなたの役割はどんなものがあるか、この機会に整理してみてはいかがでしょうか!