薬剤名のアルファベットに込められた意味

薬の名前にアルファベットがついているものがいくつかあります。職種によっては、「よく見かけるよ!」という方もいると思いますが、そこに込められた意味を知っていますか? 今回は、よく知られているものから少しマイナーなものまで、薬剤名のアルファベットが持つ意味をご紹介します! 

薬の略語の種類

1.製剤的特徴を示しているもの

*口腔内崩壊錠

・OD、D(Orally Disintegration)
・RM(Rapidly Melt in mouth)
・RPD(Rapid Dissolution)など

これらは、口の中に入れると速やかに溶ける技術が用いられている薬を示すアルファベットです。「水なしで飲める」と言われますが、水分摂取制限などがない場合は、副作用防止の観点から基本的に水で飲んだ方がよいと言われています。

*徐放性製剤

・R(Retard)
・CR(Controlled Release)
・LA、L(Long Acting)
・SR(Sustained Release、Slow Release)
・TR(Time Release)など

さまざまな製剤技術により、効果が長続きするよう設計された薬を徐放性製剤と言います。なお、RはRapid、Regular(速効型)、Resistance(耐性)、Replacement(補充)など、別の意味で使われている場合もあります。

2.配合剤の規格を示しを表しているもの

・LD/HD(Low Dose / High Dose)
・AP/BP(Advanced Power / Best Power)
・MD/EX (Moderato / Extra)

規格が複数ある配合剤は、末尾にアルファベット2文字をつけるというルールがあるようです。薬剤師としては、もう少し統一して欲しいところでもあります…。(例外として、アムロジピン・アトルバスタチン配合錠は1~4番で分けられています)。

3.成分名や会社名を示しているもの

・VG(ベタメタゾンとゲンタマイシン)
・N(ニコチン酸エステル)
・F(フルスルチアミン)
・MS(Morphine Sulfate:硫酸モルヒネまたは明治製菓)
・KY(京都薬品) など

4.その他

・A(Absorption:吸収)
・S(Small、Smooth、Seamless)
・SP(Spool:糸巻き)
・SG(Sedativeと Granules:鎮静薬と顆粒) など

3と4は、見覚えがある人はニヤリとしたのではないでしょうか? ちなみに、薬の名称由来は医薬品インタビューフォーム(添付文書よりもっと詳しいもの)に書いてあります。「この薬、なんでこんな名前なんだろう?」と気になったら、ぜひ調べてみてください!「薬剤名 インタビューフォーム」で検索すると出てきます。

略語がついている薬の粉砕指示には注意

薬剤師的な考え方だと、製剤的特徴を示すアルファベットは、《粉砕可否》の判断に役立つことが多いです。例えば、口腔内崩壊錠であれば、粉砕せず水に溶かすだけで解決するものも多いですし、逆に徐放性製剤であれば、そもそも粉砕できないものがほとんどです(粉砕すると、薬の徐放性が失われてしまいます)。

このように、名前から粉砕時の注意がわかりやすい薬もある一方で、名前や見た目に大きな特徴がなく、一見粉砕しても問題のない薬に見えるものもあります

例)

ミラベクロン錠(商品名:ベタニス錠)

テオフィリン徐放錠(同:テオドール錠)

トラマドール塩酸塩徐放錠(同:ワントラム錠)

硝酸イソソルビド徐放錠(同:フランドル錠) など

つまり、アルファベットはあくまでも「ヒント」になるだけということ。実際に粉砕や簡易懸濁をする場合は、どういう条件(温度、吸湿性、遮光の必要性、日数など)なら可能なのか、必ず調べるようにしています。

まとめ

今回は、薬のアルファベットに込められた意味について解説しました。知っているものはいくつありましたか? 自分の領域でよく使う薬でアルファベットを見つけたら、ぜひ意味を調べてみてください! きっと新たな発見があると思います。

 

執筆者
ぽりまー(薬剤師)

調剤薬局時代に研修認定薬剤師を取得し、現在の本職は編集者。糖尿病クリニック、在宅専門薬局で週1回ずつ薬剤師をやっている。臨床現場のリアルな声を届けられる編集を目指している。

Twitter:@care_nekko