地域づくりを進めるための他施設間連携 後編

切れ目のないサービスを提供するには、施設間連携がきわめて重要となります。一方、他施設間の連携といっても、書類だけの関係になっている現状が多いのではないでしょうか。過ごしやすい地域を作るために何をすればいいのか。今回、地域でちょこまかと動き回っている作業療法士が、他施設間連携の実際についてお伝えします。

顔が見えたら即コラボ

 『顔がみえる連携』が大切であることは、もはや口癖のように言われています。もちろん書類だけの関係よりも、電話で話をすることや顔を合わせて話すことの方が連携の密度は強くなりますし、関係づくりの発展に繋がるでしょう。

 ですが、『顔がみえる連携』はあくまでもチャンス(機会)であって、ゴール(到達目標)ではないのです。そして、実は『顔のみえる連携』を何度も行っているにも関わらず、地域づくりが進まないことがあります。顔を合わせるだけで満足してしまって、会議での議論の進展があと回しになっているのです。これはせっかくのチャンスを無駄にしてしまっているだけで、いくら繰り返しても地域づくりは進みません。

 『顔が見れたら即コラボ』の勢いで、相手とどんなコラボレーションができるかを考え、「私と皆さんなら〇〇ができますね」と1つ提案をしてみましょう。とても難しいことを言っていますが、この勢いがとても重要なのです。

 

大きな場所でこそ想いを打ち明ける

 地域の研修会に参加される方のほとんどは、書類や会議などでやり取りをしたことがある近隣の他施設スタッフです。こうした研修会のメインイベンターは研修会の講師であることに違いないのですが、研修会の終わりには必ず質問する機会が設けられています。このように大きな場所で質問をすると会場の目は一斉に質問者に向けられますから、恥ずかしいとか、みんなの前でどんなことを聞いたらいいかわからない方も多いと思います。

 しかし、一方では研修会のように他施設、多職種が集まる機会はめったにありませんから、このような場所で質問することで、一瞬だけ会場の目と耳を集めることができます。

 また、私は①自分の想い、②研修会で学んだ内容、③自分たちの次の行動をどうすべきか、の順で質問をしています。具体的には「私は他施設間で連携することが非常に重要だと考えています(①)。研修会でも連携を深めることでより良いサービスの改善につながることを学びました(②)。今後、他施設間の連携を深めるには、どのようなことに取り組んだらよいでしょうか?(③)」という内容です。このように質問をすることで、会場の参加者に自分の想いを伝えることができ、それを前に進めようとする行動そのものを見せることができます。地域づくりを進めるには、こうした勇気ある一歩が重要になるのです。

 

まとめ

 行政が関わる業務ばかりが、地域づくりではありません。皆さんが地域で生き、過ごしている中にも地域づくりのチャンスはたくさんあります。待っているのではななく、一歩踏み出してより良い地域を作ってみましょう。

執筆者
須藤誠(作業療法士/学術部)

地方の急性期病院で、地域の人たちを陰ながら支えています。真っ当に研究業績を積みながらも、メディアや地域活動を通して作業療法の魅力を伝えるマルチプレイヤー。