作業療法士は様々な場所で働いています。
身体障害領域で働いている方が多数ですが、精神科病院や小児病院、老人保健施設や就労支援施設など多岐にわたります。
同じ作業療法士でも、それぞれの病院でどの様に働いているかはあまり知られていません。筆者も身体障害領域で働く作業療法士から「何やってんの?」と聞かれることが度々あります。
今回は精神科で働く作業療法士が精神科作業療法の流れを簡単に紹介いたします。
入院時のポイント:患者さんの体調を見極めながら実施しよう
精神科に入院したばかりの時には、休養を取り、薬物治療をして症状を緩和していくことが第一だと言われています。
精神科ではまず入院するかしないかのライン引きが難しいですが、入院した方は「日常生活に何かしらの困難が生じている」方が多いです。
そのため、休養・薬物治療が先行して導入されて、落ち着いてから「作業療法」を行うことが教科書的な流れです。
しかし、実際には入院した日に作業療法の処方箋が降りてくることも多く、体調不良のなかどの様に導入していくかが作業療法士の腕の見せ所です。
初回作業療法:インテーク面接で患者さんの理解を
初回の作業療法時には基本的に“インテーク面接”を行います。
作業療法とはどの様なものか、どんなことを行うか、いつ行なっているのかなど、“作業療法についての説明”のほか、患者さんがどんなところに興味があるのか、今後の生活についてどの様に考えているのか、どういった生活を送ってきたのかといった“患者さんの情報収集”も行います。
入院初日に参加する患者さんは、体調が万全ではないまま初回の作業療法に参加する方もいます。その際には体調を見極めながら説明を簡素化したり、難易度の低い活動を提供したりするなど、その方の疲労や調子に合わせます。
身体障がいと同じ?精神科作業療法の進み方
ここは身体障害の作業療法と進み方と同じです。
患者さんの状態を“評価”し、患者さんとともに“目標を決定”し、“作業療法介入”を行います。
そして、介入の結果を“再評価”し、再度“目標設定”を行います。
このように『評価→目標決定→介入→再評価→目標設定→介入…』と繰り返していきます。
目標を達成するために、調理訓練やアクティビティを活用します。これらの活動の特性をうまく利用しながら患者さんを快方へ導いていくことが作業療法士の腕の見せ所かと思います。
退院時期や患者さんの体調を見ながら患者さんと作業療法士がともに目標や介入の方向を決定します。
身体障がい領域と異なる点は、精神科作業療法は集団で行うことです。そのため、患者さんが作業療法に集団で参加している中で評価や介入を行う必要があります。
退院に向けた作業療法士のアプローチ
退院のタイミングを決めるのは医師ですが、作業療法士にも行えることがあります。
患者さんの作業療法場面での状況を情報提供することです。
医師との診察は1対1ですが、作業療法士は患者さんが作業療法中の集団の中でどういう役割を担うか、どういった考えを持って行動しているかなどを臨床場面で見ることができます。
看護師や精神保健福祉士、作業療法士といった多職種が情報を提供することで、医師の退院決定を補助できると思います。退院決定後は家屋状況の確認や生活方法の確認・訓練などを多職種が連携してサポートしていきます。
精神科の患者さんの中には精神遅滞や発達障害の方もいるため、独居生活を送る上で一人での買い物に不安な方やお金の計算が難しい方がいます。筆者は退院決定後にコンビニで弁当を買う訓練を行い、退院してからはコンビニや近所のスーパーでお弁当や惣菜を買って生活している患者さんを知っています。
終わりに
今回、精神科作業療法の流れを簡単に解説しました。患者さんは多種多様でこれに当てはまらない方もたくさんいます。あくまで、1個人の考え、経験として捉えていただければ幸いです。
作業を通じてメンタルを整えていく方法を模索中。教育にも関心を持ち、精神科作業療法の啓発に力を入れています。