拘縮のある患者さんのケア、みんなどうしているの?座談会

あずまっち(Ns)

最近ちょっと悩んだことをメディッコのみなさんに相談したいです。実は、拘縮がある患者さんの血圧測定がどうしてもうまくいかず、マンシェットを巻くのも一苦労…という場面がありました。看護師以外でもこうしたケアに関わることがあると思うのですが、みなさんはどのようなことに気を付けているか、なにか対処法などがあれば知りたいなと思います!
参加者

あずまっち(看護師)
総合病院手術室・外科病棟、高齢者施設を経て、現在訪問看護勤務。住み慣れた家で暮らし続けたいという患者さんの思いを実現すべく日々奔走している。

おおひら(理学療法士)
総合病院の急性期・回復期を経て、現在は高齢者施設に勤務している理学療法士。拘縮があっても楽になる姿勢を追及していきたい。

クラーク(放射線技師)
総合病院で働く放射線技師。検査で伴う苦痛を和らげた上で良い検査をしたい。

タサモ(臨床工学技士)
田舎の小さい病院で働き、主に透析に従事する臨床工学技士。透析中の姿勢や拘束対応を考える。

ロッソ(看護師)
急性期・回復期を経験。脳卒中リハビリテーション看護認定看護師。その人らしい生活を支援するケアは何かを模索中。

拘縮がある患者さん対応で悩んだこと

あずまっち(Ns)

私は最初でも話したように、血圧測定で悩むことが多いですね。拘縮が強く、腕にぐっと力が入っていると、マンシェットが巻きにくいです。でも、無理に伸ばすわけにもいかないし…。どうしたら患者さんに苦痛を与えず、スムーズにマンシェットを巻けるかなって、悩んでいます。

めちゃくちゃわかります…。透析中も血圧を測定するためにマンシェットを巻くのですが、拘縮していると巻きにくいですよね。腕を伸ばそうとするとすごく痛がられます。やさしく、ゆっくり伸ばそうと思うのですが、なかなか難しいです。透析中は血圧測定だけではなく、前腕や上腕に穿刺もしなければいけないので、ある程度腕を伸ばせないと刺しにくく、悩んでいます。

タサモ(ME)

ロッソ(Ns)

 清潔ケアをするときも、脇や指の間とかはなかなか拭きにくいですね。キレイにしないと垢が溜まってかゆくなったり、感染の原因になったりしますから。

あずまっち(Ns)

確かに!血圧だけじゃなく、採血時とかも大変ですよね。他にも何か困っている事例ってありますか?

拘縮のある患者さんに多い悩みごといえば、褥瘡も関係してきますよね。褥瘡防止のためにするポジショニングは、リハ職の腕の見せどころ。だけど、僕も含めて苦手意識を持つ人が多いと思います。拘縮が重度である程、マットレスやクッションなどの物品を使っても、安静肢位(患者さんが楽に感じる姿勢)を取らせるのが難しいんですよね。それに働いている場所によって、物品に限りがあったりするから、それも悩みの種です。

大平(PT)

あずまっち(Ns)

あ〜ポジショニング、苦手意識あります。正しい除圧物品の選択ができていたとしても、使用方法によって褥瘡発生リスクはずいぶん変わってきますからね…。確かに、在宅だと家庭によってレンタルしているものが全然違うので、そこにある物を使って適切なポジショニングを実現するって、本当に難しいです。

放射線技師がよく悩む場面は、胸の写真を撮るときですね。拘縮が強いと、どうしても肘が曲がったまま胸の前にきてしまいます。そのままだと胸の写真がとれないので、腕を横に開かないといけないのですが、損傷を与えないかハラハラします…。それに患者さんの手を掴んでいる自分の手が、写真に写り込むのも回避したいので、さらに悩ましいです。

クラーク(RT)

あずまっち(Ns)

検査のときも大変そうですね。拘縮が強い患者さんは、皮膚が脆弱なこともあって、傷つけてしまわないか心配です。

実際どんな対応をしているの?

あずまっち(Ns)

私がやっている対応としては、まず、腕をマッサージして緊張をほぐすこと。うまくいくときもあれば、そうでないときもある…。どこをほぐしたらいいのか正確にはわかっていないし、自己流でマッサージしている感じなんですよね…。

「拘縮している腕を伸ばそうとするのではなく、筋肉の縮め伸ばしをゆっくり繰り返すことで、伸びていくよ」とPTさんに教わり、実践しています。ただ、透析の穿刺の場合は、腕がまっすぐな状態でないと困るため、針が安全に留置できるように二人がかりで対応しています。手首や腕だけを拘束する器具を活用することもありますが、血管を圧迫してしまうので、他に良い方法を知りたいです。

タサモ(ME)

たまに患者さんの手に、布製の輪っかを握らせてる方がいますよね。そういうときは輪っかを掴んで引きながら写真を撮ると、すごく検査がしやすいので助かってます。あとはミトン自体を引っ張ったり。腕の緊張に関しては悩みがつきません。うまく関節が動けば腕も開きやすいんでしょうけど、どうすれば腕の緊張がほぐれるのかわからないので、いい方法があれば知りたいです…。

クラーク(RT)

ロッソ(Ns)

 廃用症候群や運動麻痺などで自由に体を動かせなくなることが多いので、私は良肢位でのポジショニングを意識しています。あとは背抜き。ベッドとの接地面を手でスーッとさするようすると緊張がなくなりますね。関節の屈曲・伸展は筋肉収縮と弛緩のバランスです。拘縮してる部分を力ずくで引っ張るのは余計に屈強傾向になってしまうので、拘縮した関節周囲の筋肉をマッサージしてゆっくり動かすといいと思います。

ポジショニングのセオリーは、道具マットレスやクッションなどの物品を使って患者さんが触れる面を増やしてあげることですね。過度にあれこれと増やしすぎてしまうと、かえって褥瘡のリスクが高まる、身体が緊張してしまうこともあります。また、拘縮で硬くなっている腕を伸ばすコツは、体幹からアプローチすることです。拘縮が起こりやすい手や肘のような、末端の部位を動かされると余計に筋緊張が亢進してしまいます。それよりも肩や肩甲骨・体幹のポジションを安定させてあげることで筋緊張が緩和して手や腕が伸ばしやすくなります。

大平(PT)

あずまっち(Ns)

なるほどー!体幹からのアプローチとははじめて知りました!血圧を測るとなるとマンシェットを巻く為にどうしても一番最初に腕に触れてしまうんですよね。緊張を強めてしまわないように肩や肩甲骨、体幹のポジショニングに気をつけたいと思います。

もちろん動かし方もrossoさんのいうように、ゆっくり動かすということは大きなポイントになります。加えて、患者さんに冷たい手が当たると反射的に手や肘を曲げてしまい、筋緊張が強くなるため、手が冷えないように注意することも必要です。

大平(PT)

この座談会を通して今後生かしていけそうなこと

ゆっくりはわかっているけど、時間的になかなか難しいのが現状ですね…。でも、ちゃんと一人ひとりに対応していかないとと思いました。

タサモ(ME)

ロッソ(Ns)

 その患者さんの身体特徴を理解した上で対応しないといけないと思いました。どの病期・職種も悩んでいるんですね…!

検査や治療で、こんなに多職種が困っているとは知りませんでした…!拘縮のある患者さんへの介入について、もっと連携すべきだったと思いましたね。今後は、積極的に多職種連携をして解決していきたいです!

大平(PT)

やっぱり一人の患者さんの状態でも、多様な視点があるんですね!検査の中でゆっくり動かすことを実践してみたいですけど、まずは慣れている職種の方に教えてもらいながら、徐々に身につけていきたいですね!実際の手解きを受けてみたいです…!

クラーク(RT)

あずまっち(Ns)

腕を伸ばそうとすると、余計に力が入ってしまった経験があります。筋肉を伸縮させることが大事なんですね。早速やってみます!無理に動かさず、患者さんの状態を十分理解した上で、その方のペースに合わせて適切なケアをしていけないですね。それと、ケアする上で困っていることは多職種に相談して解決していくことの必要性を改めて感じました。みなさん、ありがとうございましたー!