臨床工学技士だけど心電図が苦手…そこからあみ出した「簡単な心電図のみかた」

皆さんは心電図が苦手だと感じたことはありますか?そして、「心電図を読み解く力を習得したいけど、ちょっと…」と、二の足を踏んではいませんか?

僕は臨床工学技士ですが、はっきり言って苦手です(笑)。だけど、実際の現場で苦手だからといって、そのままにしておくわけにはいきません。

今回は、心電図を苦手な僕の実践を紹介します。苦手意識を取り除くきっかけになれば嬉しいです。

とりあえずPQRSTの『P』と『R』に注目してみる

心電図を言葉で説明するときに必要となるのは、心電図波形についているそれぞれの名前です。『PQRST』というやつですね。

たとえば「PQ間隔が〇〇になっているから〇〇だ」や、「ST波が〇〇しているね」のような感じでやりとりされます。とても便利ではありますが、たくさん出てくると少し混乱しますよね。

最初は、『P』と『R』に注目してみましょう。

心臓は心房からの電気刺激で興奮して、最後は心室が動きます。心電図は心臓の動きを波形として表しており、P波は心房、R波は心室の電気刺激を検知して書き出されたものです。

正常な心臓なら心房と心室が常に連動しているはずなので、その2つの波形を最初に確認するのはとても大切なのです。

日常的に『R』と『R』の間隔を意識する

とりあえずP波とR波を見てみようとしても、うまくいかないことがありますよね。心電図の電極位置や誘導によって、見えるはずのP波が見えなくなったりするからです。

そうなってしまえば、頼れるのは”R波”しかいません…!

R波は下向きになったり広がったりはしますが、ほとんどの場合は一番大きく目立ち、その波形の頂点をR波と考えればいいので、わかりやすいのです。そして、そのR波を見つけてR-R間隔を意識できれば、とても役立ちます。

R-R間隔とは、隣あう心電図波形のRとRの間の長さのことです。もし、P波が見えなくてもR-R間隔が確認できれば、心臓が正常に動いて(サイナスリズム)いるか分かります。

正常な心臓であれば、P波とR波は必ず1:1の割合で動いているからです。日常的にR-R間隔を意識して確認できていれば、その心電図が正常かどうか分かるので、看ている側も安心ですよね。

正常か?異常か?

心臓の心房・心室が正確に連動していることが大切で、R-R間隔も一定になることは理解できたでしょうか。

しかし、問題となるのはそうではないときです。つまり、R-R間隔が一定ではなく、P波とR波がうまく連動できていない場合です。そのときは、完全房室ブロック(P波がR波とバラバラに出ている)、心房細動(P波形がたくさん出ている)、心室期外収縮(R波が突然出現する)などといった可能性が出てきます。

そんなときは焦らずに、このコラムで説明したP波とR波の関係やR-R間隔のことを説明するだけでもOKです。例えば「P波がバラバラに出ていて、R-R間隔がおかしい」や「P波が見えなくて、バラバラのR波が出ています」と状況を説明できるだけでも、心電図が苦手で何もわからない人からは卒業できていると言えるでしょう。

おわりに

心電図の世界は奥が深いですが、僕の経験では日常的に使っている知識は初歩的なものばかりだと思います。今回お伝えした、『P』と『R』に注目してみることを、まずは明日からの仕事でも使ってみましょう。もしそれで目と頭が慣れてきたら、少しずつステップアップしてみるといいでしょう!

執筆者
久原幸典(臨床工学技士)

総合病院で幅広く業務に関わりつつ、新しい臨床工学技士の働き方を模索中。最近、サブカル臨床工学と名乗る事にした。

@kuhara_CE