薬剤師が多職種に学ぶアセスメントのコツ~導入編~

薬剤師は、薬を渡す短い時間の中、患者さんに薬の副作用や症状の変化が起きていないか確認しています。しかし、他職種と比べて患者さんに触れる機会は少なく、アセスメントの経験が浅いのも事実。今回はアセスメントに苦悩する薬剤師が、理学療法士と作業療法士、そして看護師にコツを聞いてみました。

 

参加者

 ぽりま(薬剤師)
最近、在宅現場で働くようになり、アセスメントの壁にぶち当たっている。

 喜多(理学療法士)
病院勤務ののち、現在は福祉用具専門相談員をメインの仕事としている。

 須藤(作業療法士)
急性期の病院で働く作業療法士。他職種の悩み事を聞くのが大好き。

 中野(看護師)
元急性期病棟看護師。ICUを経て、現在は急性期看護教育を担当している。

薬剤師はフィジカルアセスメントが苦手?

ぽりま(Ph)

どなたかフィジカルアセスメントを私に教えてくれませぬか…。教科書や本でいくら勉強しても、実際の患者さんを目の前にすると何もできないという状態に陥っていて、どうやったら知識を実践に結び付けられるのか困っています…。

薬剤師のフィジカルアセスメントって、医業に抵触する恐れがあるからあんまり教育されてこなかった背景があるんだってね。でも、最近は疾病の早期発見や薬の効果判定で、薬剤師のフィジカルアセスメントも大事だよねって見直されてるみたいだね。

須藤(OT)

ぽりま(Ph)

そうそう、そうなの!! そもそもの発端は、「薬剤師は患者さんに触れちゃダメ」という法解釈の誤った思い込みで、それが広まってしまった感じ。今思えば、患者さんに触れずに何がわかるんだろう、と…(笑)

うんうん。薬の効き目に関するフィジカルアセスメントが、薬剤師にとっては大切なのかな?

須藤(OT)

ぽりま(Ph)

効き目もそうだけど、それは医師もよく見ているから、どちらかというと副作用をメインで見ているかも。

「これってもしや副作用では?」みたいな気付きができたら、かっこいいよね(笑)

なかの(Ns)

ぽりま(Ph)

そうだね(笑)。薬剤師が適切にアセスメントできなくて1番困るのは、副作用のせいで不調が出ているのに、それに気付かず副作用への対症療法として薬が増えてしまうこと。今でこそ「処方カスケード」という言葉が広まってきたけど、薬の世界は知れば知るほど奥深いよ…。

ショホウカスケード…??

喜多(PT)

ぽりま(Ph)

処方カスケードとは、患者さんの主訴が実は薬の副作用なのに、それに気付かず新しい処方が追加されて…というのを繰り返すこと。これが数回重なるだけであっという間にポリファーマシーになってしまうので、薬剤師界隈では最近問題視されているんだ。

ほうほう!

喜多(PT)

ぽりま(Ph)

例えば、アムロジピンの副作用に「浮腫」「便秘」「逆流性食道炎」があるんだけど、どれも高齢者に多い訴えで、浮腫には利尿薬が、便秘には下剤が、逆流性食道炎にはPPIが処方されがち。

たしかに、「最近むくむのよね」って言われても、それを降圧薬と結びつけるのは難しいな。

なかの(Ns)

ぽりま(Ph)

うんうん。ちなみに、アムロジピン(カルシウム拮抗薬)の浮腫にはループ利尿薬は効かないので、そこからさらに別の利尿薬が追加されたりするともう最悪なの。そもそも、アムロジピンを違う降圧薬に変えればよかった話なのに、よく使われてる薬で安全なイメージがあるからか、副作用に気付くのが遅れる、なんてことがたまにあるのよ。

なるほど! 病気による1次的な症状なのか、薬による2次的な症状なのかを見極めるのが重要なんだね。だからこそ、まずは病気による症状をきっちりアセスメントできる力が欲しいって感じかな。

須藤(OT)

ぽりま(Ph)

そういうこと! あとは、医師・看護師へ報告するために必要な情報と、それを確かめる方法が知りたいの!!

多職種に学ぶフィジカルアセスメントのコツ

そうなると、フィジカルアセスメントもそうだけど、もしかすると問診的なところも大切かもね。例えば、肩の痛みがある人に、PTは「どんな痛みなのか」「いつから起きているのか」って確認していくところから、原因や病態を類推するのが得意なはず。

須藤(OT)

ぽりま(Ph)

なるほど! もっと聞きたい!!

なら、もう少し踏み込んでみようか。「肩が痛い」という主訴がある人には、まず痛みの質といつから起きているかを聞く。これは、痛んでいる組織(筋や関節包などの軟部組織なのか、神経なのか)の鑑別と、急性疼痛か慢性疼痛かを判断するための質問だよ。

須藤(OT)

ぽりま(Ph)

うんうん。

例えば鋭い痛みで、きっかけが明確であれば、急性疼痛で部位もわかりやすいと思う。逆に鈍い痛みで、思い当たるきっかけがない時は、その前後の生活の様子をよく聞いて、使い過ぎによる疲労なのか、逆に動かしてな過ぎて固まっているのか、姿勢の崩れや動かし方の問題なのか…と考えながら、実際にフィジカルアセスメントに進む感じ。

須藤(OT)

ふむふむ。それぞれがどういうプロセスでフィジカルアセスメントしてるのか、ってことを聞くだけでも、おもしろいし意味ありそうだね。

喜多(PT)

ぽりま(Ph)

聞けば聞くほど、アセスメントに関して薬剤師以外の多職種のほうが進んでて、意識共有もできてるのだろうな…と実感するなぁ。じゃあ、「だるい」「しんどい」みたいな人にはどうする?

すまさんが説明してたのと基本的には同じで、まずは「いつから?」「どんな風に?」「どのタイミングで?」といった問診を進めていくかな。その中で引っかかるポイント、例えば昨日の夜中からしんどいとか言われたら、「食べたものが悪くてお腹を壊したのかな?」「夜に空調で冷えちゃったのかな?」と考えていくよ。多分、そんなに専門性が高いことを聞いてるわけではなくて、患者さんが表現しやすいように、丁寧にゆっくり聞いていく感じかな。

喜多(PT)

ぽりま(Ph)

なるほど、特別なことをしているのではないと…。

うん。あと、PT的には、身体に触ると「あ、ここが固いな(こわばってるな)」とか「今日は歩き方がぎこちないな」という感じで、視診触診を同時進行してるかな。週に1回しか会わないような対象者であっても、「あれ、今週はなんか調子悪そうだな」ってところが出てきたら、それが原疾患に由来するものなのか(経過から考えられるのか)、そうじゃないかは、継続的に見ていればある程度判断できるよね。逆に、初めて見る人でそれを判断するのは難しいと思うし、むしろ経過を見ていないのに判断することは危ないだろうとも思っているよ。

喜多(PT)

ぽりま(Ph)

あぁ…そりゃそうだわ。そうしたら、多職種がアセスメントに携わるのは、在宅とか訪問の現場がメイン、ということになるかな!

そうそう、ひと言にフィジカルアセスメントと言っても、患者さんと自分がどういう関わりなのかによっても、できることは変わるよね。

喜多(PT)

臨床推論を進めるために、必要な情報は?

そういえば、5W1Hとか、整理しながら質問するには便利よね。

須藤(OT)

ぽりま(Ph)

大学の授業でやったなぁ…(笑)

やったんかいw

須藤(OT)

ぽりま(Ph)

うん。授業でやることと、それを現場でやることってすっごい距離があるんだけど、薬学部だけかな…笑

実習があるから、それで多少の埋め合わせにはなると思うけど、座学でふむふむと思っていることと、実際の現場でやることはどえらい違いがあるよね。ここのところは、リーズニング(臨床推論)っていうスキルで埋めていく感じだね。ぽりまーさんは患者さんを見て、どういう流れでアセスメントを考えていくの?

須藤(OT)

ぽりま(Ph)

リーズニングって臨床推論のことだったのか! 最近めっちゃ勉強してる。まだ自分一人でアセスメントした経験はないのだけど、先日、先輩薬剤師の訪問に同行したとき、看護師への情報共有をする場面があって、その時のことを話すね。まず意識レベル、呼吸数、血圧を確認するのが必要だと教わったよ。意識レベルはJCSで表現、呼吸数は15~30秒の呼吸を見てだいたいの1分間の呼吸数を判断、血圧は血圧計があればその場で測ってもらう、という流れかな…。

うんうん。ひとまずバイタルサインは大切だね。

須藤(OT)

ぽりま(Ph)

基本的に、薬が悪さをしていると考えにくい場面では、あんまりあれこれせずに、担当の看護師や医師につなぐための情報をとる、というイメージだった。

服薬状況や食事摂取量、排泄回数とかも、聞いたりする?

須藤(OT)

ぽりま(Ph)

服薬状況はルーチンで確認してる! 本人やご家族が話せるなら、いつからこうなのかってことと、食事と排泄は聞くかな…。

薬剤師目線のフィジカルアセスメントは新鮮だね。看護師的にも、フィジカルアセスメントは入院時など頭の先から順番に全身を見て、トラブルや問題の部位を中心にフィジカルイグザミネーションをしていくよ。ちなみに学校だと、フィジカルアセスメントするうえで、環境整備に注意するところから教えられるよ。

なかの(Ns)

ぽりま(Ph)

ふぃじかるいぐざみねーしょん・・・!?

フィジカルイグザミネーションはフィジカルアセスメントに含まれるんだけど、フィジカルアセスメント【問診(訴えなどの情報収集)+フィジカルイグザミネーション(視診、触診、打診、聴診)】というイメージ。要は、さっきすまさんと喜多さんが説明してたことと同じ感じ。学校現場では、最近フィジカルイグザミネーションって用語を使う場面が多くなってきているかなと。

なかの(Ns)

へぇ〜! そういう言い方するんやね!

喜多(PT)

ぽりま(Ph)

知らなかった…(薬学部はどうなんだろう)

おそらく、皆さんが日ごろからやっていることだと思う。訪問医療や災害時ほど、画像診断や採血などが難しいので、基本に立ち返るフィジカルイグザミネーション、フィジカルアセスメントが重要になるよね。

なかの(Ns)

病院勤務じゃなくなった途端、恐ろしいほど情報がないことに驚くよ(最近、福祉用具専門相談員に転職した)。氏名、住所、電話番号しかわからない人に対して、「歩行器お願い!」って言われてもわからないから、最初は雰囲気で考えたりとか…。

喜多(PT)

病院以外の現場で、よりフィジカルアセスメントが重要という良き例ですね(笑)

なかの(Ns)

まとめ
病院で働く看護師や理学療法士にとっては当たり前のアセスメントですが、一歩外に出ると時間もなければ情報もない状況があるようです。薬局や訪問先など、あなたならどんなアセスメントをしますか? お近くの他職種と考えてみてくださいね。