“小児患者の固定”ただそれだけのために考えること

こんにちは。診療放射線技師のクラークです。

今回は、小児の患者さんの頭のCT検査の時に、患者さんを押さえる時の話をします。この話で想定する小児というのは0-6歳くらいを想定していて、「検査を怖がって泣いたり抵抗したりしてしまう」年齢を指しています。そのくらいの年齢のお子さんがCT検査に来たときは、診療放射線技師が頭を押さえる時があるのです。

押さえると言っても、ただ押さえつけることだけを考えているわけではなく、いくつかのポイントに分けて思考を巡らせています。

1、安全第一

最も重要なことは、激しく抵抗する子供をCT台から絶対に落としてはならない!ということです。しかし、子供は検査への恐怖のあまり、両腕両足の計4本で必死に抵抗します。

技師は頭を押さえなければならず両手が塞がっているため、保護者に手伝ってもらいますが、両腕の2本では4本に負けてしまいます。そこで、あらかじめ寝台にタオルを敷き、おくるみのように体全体を包んで対応することで2本の腕でも押さえることができます。

しかし、タオルを準備している場面を子供に見られると、ことさらに怖がられるので、必ず事前に整えておかなければなりません。絶対に負けられない闘いは準備から始まっているのです。

 2、自分の手が邪魔をしない

撮影画面に映り込む邪魔な陰影を“アーチファクト”と呼びますが、CTの撮影時に押さえた技師の手はアーチファクトの原因になり、画像を劣化させます。せっかく動かないように押さえたのに、画像が汚くて診断できなかったなんてことになったら悲しくて立ち直れません。

そのため、できるだけ撮影範囲に自分の手かぶらないようにするのですが、そうなるとどうしても押さえる場所から手が離れていき、思ったような力が入りません。わずかに触れた指に力を全集中させ心を燃やしています。

3、1回で終わらせる

小児は大人よりも放射線感受性が高いため、できる限り被ばくを避けるべきです。しかしながら、リスクベネフィットを考えて検査に望むため、必要最低限の放射線量で撮影します。

もし撮影時に動いてしまった場合、そのままではブレた画像となり診断に適さないため撮り直さなければなりません。そうすると、必要最低量×2となり、余分な被ばくをしてしまうことになります。

保護者の方々は、検査への恐怖のあまり泣きじゃくる我が子を見て「かわいそう」と思い、押さえる手が緩みがちになるので、私たちは検査を1回で終わらせる大事さをしっかり伝える必要があります。保護者協力することで、ガッチリと押さえることができるのです。

4、放射線から自分を守る

私たち診療放射線技師は、CTに限らず、1日に何度も患者さんを押さえる経験をします。その度に放射線を無計画に浴びていると、被ばく量がとんでもないことになります。

放射線の防護は「時間」「距離」「遮蔽」の3原則があるため、これらを常に意識しなければなりません。子供を押さえながらも、自分の両腕をピンと伸ばし、頭や体幹が1cmでも遠ざかるようにします。

また、体や水晶体を守る防護具を装着したりもします。時間という観点からは、なおさら検査を1回で済ませなければなりません。

今から頭を押さえる目の前の子のために、「安全に」「しっかりと診断を受けられて」「被ばく量が最低限になる」検査をするぞ!と意気込みながら、できるだけ怖い想いをさせないようにニコニコ語りかけ、自らも守るために必死に体をのけぞっているのです。いわば、『ただ“押さえる”、されど“押さえる”』といったところでしょうか。

表面的にはなかなか伝わりづらいこだわりですが、うまく終わった後は“良い仕事をした感”に溢れていることでしょう。そんな光景を見たときは微笑ましいやつだなと眺めてあげてください。

執筆者
クラーク(放射線技師:RT)

総合病院で働く放射線技師。子供が生まれた後は、子供の撮影に自然と熱がはいる。

Twitter:@klarrrk_man