コロナ渦で思い返す臨床実習の大切さ。CE×Ns×Ph×OT×ST座談会や!

学生時代の大きな行事の一つである「臨床実習」。実際の医療現場に触れて経験を積むことの出来る貴重な機会です。ですが、コロナ禍の今まともに臨床実習を経験できていない学生が多いことは問題視されていますよね。

こういう状況だからこそ、メディッコメンバーで座談会をしようじゃありませんか!病院や職種による実習の違いを比べながら、自身の思い出と臨床実習を大切さを嚙み締めました。

参加者

くはら(CE)
総合病院で働く臨床工学技士。学生時代に臨床実習を通じてその後の進路を考え直した経験がある。

かなこ(Ns)
大学病院で働く看護師。実習中は某J事務所のコンサートを楽しみに頑張っていた。

イサミ(Ph)
薬学部教員。実習後に友人たちと二郎に行くことをモチベーションに実習を頑張っていた。

すま(OT)
大学病院で働く作業療法士。実習の時は周りが見えず苦労していた。

みややん(ST)
訪問ST。実習の記憶はツライ思い出が9割を占めているが、おかげで根性がついた。

各職種の臨床実習の期間~学生時代の思い出を添えて~

かなこ(Ns)

私は4年制の大学だったので、本格的な実習は3年生の9月から翌年の2月までの間で行っていたと思います(もうかなり昔のため記憶曖昧です)。それまでは教科書上での勉強がメインでしたが、実際の患者さんを看ることで教科書では学べない経験が出来たことがよかったと思います。

薬学部は5年生のときに、薬局11週間に続いて、病院にも11週間、合計22週間の長期にわたって臨床現場での実習を行います。僕も22週間、きっちり行きました。皆勤賞だったので、大学での実習発表会を施設代表で発表させられた思い出があります(笑)。

イサミ(Ph)

かなこ(Ns)

イサミっち、真面目!

あとは、NSTの回診に向かう薬剤師の先生に付いていったことがあるのですが、その先生がめちゃくちゃかっこよくて、ただ、ついて歩き回るだけで精一杯なぐらいアグレッシブでした。あのかっこいい背中に、アドレナリンが出ましたね。結局、その姿が印象的で、病院への就職を意識しました。思い出深いエピソードですね。

イサミ(Ph)

くはら(CE)

僕も、救命救急センターで働く先輩の姿がとてもかっこよかったのを覚えています。見るからに危篤な患者さんをチームで助けにいっているのが、学生ながらも感じ取れました。そんな中で自分も働きたいと強く思いましたね。結局、その実習先の病院にバイトとして入社して3年間修行しました。

私大の作業療法学科でしたが、指導者を模倣して計画までを立案する3週間の実習から、1から10まで自らの力で行う8週間の実習がありました。学校によって合計実習時間はおおよそ同じですが、その構成はさまざまです。最後の実習では、実習先を探して自分で実習依頼をするところから行ったのもいい経験でした。

すま(OT)

実習先を自分で探すのは、いい経験になりそうですね!

イサミ(Ph)

実習で思い出深かったエピソードは、担当していた脳卒中の患者さんが期間中に再発してしまい、担当から外れてしまったことです。入院していた方なので、自分に再発を防ぐための何かができたわけではありませんが、自分も患者さんの人生に触れていることを痛感しました。再発後も何度かリハビリ室で顔を合わせ、お話ししてくれたことを十数年経った今でも覚えています。

すま(OT)

私は3年制の専門学校でしたが、2年生のときに4週間、3年生のときに8週間の実習がありました。4週間の実習では発達支援センターに、8週間の実習は療養病院に行きました。療養病院では年単位で入院している方ばかりで、病院やスタッフの事情を知っている患者さんがいたことに驚いた記憶があります。

みややん(ST)

くはら(CE)

僕は3年制の専門学校で、臨床実習は3年時の1ヶ月程度でした。この中では一番短いです。しかも、その短い期間の中でいろんな分野(人工透析や人工心肺)の実習をしないといけないのであっという間に終わった印象です。

臨床実習生を受け入れるにあたり心がけている事~理想の臨床実習を目指して~

くはら(CE)

続いて、臨床実習生を受け入れるときに、みんなが心がけていることを聞いていきましょう。

かなこ(Ns)

私が学生のときは、毎日胃が痛い思いをしながら実習をしていました。なので、なるべく学生が緊張しないように配慮しています。大体、どの部署にも怖い先輩が一人はいるので、私の日くらい楽しく過ごしてもらいたいと思っています。あとは、私の場合はOPE室勤務なので、術後の看護のポイントを伝えたりしてます。

くはら(CE)

うんうん。分かります。実習先にそんな人がいてくれたらほんと助かるんですよね。。

僕は、実習を経験したからこそ病院への就職を決めた1人です。なので、実習で接した学生には、医療や仕事に対する考え方を根本的に変えることができるよう心がけています。闇が深そうな学生ほど、あえて話しかけたりしていますかね。

イサミ(Ph)

くはら(CE)

なるほど。まずは『学生の意識を学校から臨床現場に向ける』。自分が臨床実習で得た経験が大きいからこその取り組みですね。

最初の一週間は、一先ず慣れること、落ち着くことを優先させています。職場の新入職員でもそうですが、自分らしさを出すためには、その場所での心理的安全性が担保されないと中々次のステップに行きづらいと思います。まずは病院の資源やスタッフとの関係性を理解してもらい、学生がすべきことに集中できる環境を作るよう心がけています。

すま(OT)

くはら(CE)

緊張したままではコミュニケーションもとりにくいですね。最初の1週間はどんなことをしているんですか?

はじめの1週間は1日の流れに慣れることと、学習資源の提供が主です。困った時にどの教科書がどこにあるか、医中誌で調べる方法などを覚えてもらい、悩んだり困った時にどこで探せばよいかを教えています。また、スタッフのそれぞれ得意なことを説明し、見学や質問がしやすい場づくりを心がけています。

すま(OT)

くはら(CE)

教科書を使うと学生もやりやすそうですね!文献検索の仕方を教えてくれる実習先は素晴らしいです。僕もマネしたい。

確かに、いいですね!

イサミ(Ph)

くはら(CE)

みややんさんは?

今は見学実習しか受け入れていませんが、「次につながる」を意識した見学ができるように課題を出したり、やりとりを見てもらったりしています。

みややん(ST)

くはら(CE)

テーマを掲げて実習指導を行ってるんですね。僕が実習生を受け持つときも、就職活動や将来働き出した時に役立つ経験をさせてあげたいと思ってます。

臨床実習生に望んでいること~これだけは外さないほうがいいよ~

授業の一環とはいえ、実習先の病院や薬局は本当の臨床現場です。患者さんからすると、実習生も医療従事者として目に映りますので、そのことだけは忘れずに実習に取り組んで欲しいと思います。

イサミ(Ph)

くはら(CE)

わかります。患者さんからしたら学生だろうが関係ないですよね。ただ、臨床の場では学生も立ち振る舞いなど、分からないことも多いと思いますが。何かアドバイスはありますか?

患者さんと話す機会があると思うのですが、その際に『分からないことに対しては分からないときちんと伝える』ことは徹底して欲しいです。中途半端な知識で、曖昧な解答をすることは患者さんのQOLの悪化にも直結しかねないので、十分に気を付けて欲しい点です。

イサミ(Ph)

単位を取るための課題ではなく、自分が働く時のチュートリアルだと思って臨んでほしいですね。ここでぶつかった壁は就職してからも幾度となくぶつかると思うので、その乗り越え方のパターンを一つでも多く増やしてほしいです。

すま(OT)

私たちが学生の頃と今では実習の在り方が多少違うようです。しかし、社会に出てからは新人もベテランもみんな同じです。学生のうちに指導者(先輩)の姿をしっかり見て欲しいなと思います。

みややん(ST)

くはら(CE)

実習の時から、もう仕事は始まっていると考えてもいいかもしれませんね。今は、コロナ禍で臨床実習をまともに受けることができなかった学生が多いと思います。そんな学生にアドバイスするとしたらどんなことがありますか?

臨床では実習のようにゆったりした時間はなく、毎日が台風のように過ぎ去ります。知識や技術を学ぶだけではなく、患者さんの人生と向き合うという感覚を大切にしてほしいです。

すま(OT)

非常勤先では、実習が十分に行えなかった新人さんがいます。だからと言って、すごく現場で苦労しているかといえば、他の新人さんとそう変わりないように思います。もちろん実習の経験は大切ですが、現場に出てからが勝負!現場に出てからたくさん勉強して、たくさん患者さんのことを考えて学んでいって欲しいと思います。

みややん(ST)

くはら(CE)

たしかに、新人の頃はあっという間に時間が過ぎていきますね。そういう時期だからこそ、患者さんとしっかり向き合うくせをつけておくんですね。では、看護師からのリアルな意見を聞いてみましょう!

かなこ(Ns)

まずは、怖い先輩、優しそうな先輩を見分ける!(笑)そして、それを学生内(同期)で共有しておくことですね!(笑)これはアドバイスになるのか・・・!?

くはら(CE)

いや、非常に現実的なアドバイスだと思います。そうやって患者さんの情報共有をするスキルも身につくんじゃないかな!

まとめ
コロナ禍の今、学生の実習での経験不足はひとつの大きな課題だと思います。大半をオンラインで実施せざるを得なかったり、満足に実習させられない期間が続いてしまったのではないでしょうか。とはいえ、医療職種の熱い想いはどの職種にも共通でした。さまざまな工夫を凝らして、未来の医療人を育てていきましょう!