セラピストであることを考える

PT・ST・OTといったリハ3職種はTが共通しています。TとはTherapyの略であり、Therapyを行う3職種はTherapist(セラピスト)と呼ばれます。日本語では療法士と呼ばれていますね。本コラムでは、精神科作業療法士として勤めていた私がセラピストってなんだろうということを考えてみました。

①TherapyであってTreatmentではない

作業療法士には共感してくださる方がいるかもしれませんが、新卒後に「作業療法ってなんだろう」と考えた時期がありました。今でも思うことはありますが。(笑)

そこで、作業療法の発祥の地であるアメリカ合衆国の呼び名であるOccupational Therapyという言葉から考えていきます。実はOccupationalについて話すと長いので、今回はTherapyに焦点を当てていきます。着目したいのは治療(treatment)ではないという部分です。そこで、対象者の疾患を「治療」するのではなく、「療法」をすることがセラピストの役割なのではないかと考えました。

②作業療法士が目指すのは健康や幸福である

日本作業療法士協会が示している作業療法の定義の中で、”作業療法は「人は作業を通して健康や幸福になる」という基本理念と学術的根拠に基づいて行われる。”とあります。

作業療法士が目指すのは治療ではなく、健康や幸福です。そのため、疾患を治療するのではなく、対象者の健康や幸福を目指しての療法を行えばいいのか!と少しだけ腑に落ちた瞬間がありました。

(じゃあ、療法って?健康や幸福って?ということも残っていますが….)

③健康や幸福をお手伝いすることがセラピストの役割かも

精神科で従事していますと、疾患が完全寛解するということの難しさを感じます。

退院して元の生活に戻っていく方もいますが、全員がそうではありません。診察・服用を続けていたり、月に何度かデイケアなどの通所施設を使っている方もいらっしゃいます。

では、その人は健康ではない?幸福ではないのか?ということを考えると、それぞれの対象者さんによるという感触を得ています。その生活を続けていくことが幸せだとおっしゃってくださる利用者さんもいれば、通所せずに仕事をしていきたいという方もいらっしゃいます。

個々人の幸福に向かって療法をしていくことが私たちの使命なのではないかと思います。

まとめ

最終的には精神科作業療法に寄ってしまうのですが、そこしか経験していないため、ご了承ください。「俺がどんな疾患でも治療してやる」というセラピストに会ったことがあるのですが、私個人の意見として「それは威張れることなのか?」と思ってしまいます。

個々人の幸福に向かうためには対象者の思いを汲み取る必要があります。幸福の形は人それぞれです。健康や幸福のお手伝いが出来るようにこれからも精進していければと思います。

執筆者
坂場泰斗(作業療法士/メンタル部)

作業を通じてメンタルを整えていく方法を模索中。教育にも関心を持ち、精神科作業療法の啓発に力を入れています。

Twitter:@demiozx