ある時、理学療法士から「今日からこの装具をつけてリハビリしています」と患者さんの話をされていても、患者さんから「この装具っていつまで必要なの?」と質問をされて返答に困った経験はありませんか?
装具は種類もあって、なかなか覚えられませんよね。
装具の中でも代表的な短下肢装具について、現役の理学療法士が解説します。
なぜ装具は必要なのか
下肢に用いる装具は以下のガイドラインで推奨されており、脳卒中後の発症早期に治療を助ける効果が認められています。
1. 脳卒中後遺症に対しては、機能障害および能力低下の回復を促進するために早期から、積極的にリハビリテーションを行うことが強く勧められる(グレードA)。
2. 発症後早期の患者では、より効果的な能力低下の回復を促すために、訓練量や頻度を増やすことが推奨される(グレードA)
引用:一般社団法人 日本神経治療学会HP 脳卒中ガイドライン2009
脳卒中後のリハビリでは、麻痺が重度な場合でも、歩けるようになるために積極的に立位訓練をしたり、歩行訓練が行われます。
その際、療法士の手足だけでは支えられないため、効率的に麻痺側を支持するために装具が必要になります。
短下肢装具を使用する目的
装具の名称は固定する範囲で変わります。
膝下からつま先までを固定するものを短下肢装具といい、膝上の大腿部からつま先まで固定するものを長下肢装具といいます。
短下肢装具には、治療用と更生用の2つの目的があります。
治療用装具とは、麻痺で機能低下した部分を装具で補い、歩行そのものが効率的な治療となるように促すことが目的になります。
急性期~回復期ではこの目的で装具を選択することが多いです。
更生用装具とは、治療がある程度終了し、障害が固定した後日常生活で使用される装具のことをいいます。
麻痺を治すのではなく、麻痺を持ちながら効率よく生活することを目的とします。主に退院直前~維持期ではこの目的で装具を選択されることが多いです。
素材の特性と装具の種類
同じ短下肢装具でも、使用される素材の特性によってさらに分けられます。
装具に使われる素材の特性を知ると、その装具を使用している理由がわかるかもしれません。
プラスチック短下肢装具
プラスチック素材には弾性があり、たわんだり、反発したりします。この特性を活かしたダイナミックな歩行をする際に、選ばれることがあります。
金属支柱付き短下肢装具
この装具は、足関節に強固な固定が必要な場合に用いられます。直接肌に触れているのはプラスチック素材や革素材が多く使用され、屋外用の靴と一体型の装具もあります。
油圧式短下肢装具
素材はプラスチックと金属素材の2種類があります。油圧式は、足継手と言われる足関節部分の部品を表しています。油圧式の特徴は歩行周期に合わせて「固定」と「補助」の機能を使い分けられるため、他の短下肢装具よりも正常歩行に近い筋活動を引き出すことが可能になります。
まとめ
見たことはあるけど、よく知らない短下肢装具について解説しました。
装具を使う時期によって目的も変わります。
装具の種類はたくさんありますが、それを見分けるポイントとして、素材に着目して解説しました。
より深く気になる方は、職場の理学療法士さんに装具のことを聞いてみてください。
そこから多職種連携が広がるかもしれませんよ。
病院に所属しない働き方を模索中。 ただ今webライター・放課後デイサービスでアルバイトをしています。リハビリと睡眠を勉強。