他職種が考える自分の職種の強みを聞いてみた!

医療・介護現場で働く医療者は、患者さんがケガや病気をする前の生活に少しでも早く戻れるように、日々尽力しています。それぞれの職種が専門性をまっとうして多職種連携が実現するわけですが、他職種から自分の職種がどう見えているのかは案外知らないものです。

今回は、多職種連携において各職種の専門性をより活かすべく、理学療法士・作業療法士・看護師に、お互いの強みをどう考えているのか聞いてみました。

参加者

 大平(PT)
理学療法士4年目。脳卒中回復期病棟で勤務。他職種のスタッフに毎日アドバイスをもらっている。

 小池(OT)
作業療法士10年目。上肢整形外科疾患へのリハビリ(ハンドセラピィ)を担当している。現状、連携の場面はそう多くないため、必要性を強く感じている。

 永澤(Ns)
看護師9年目。現在は大学で看護教育に勤しむなかで、多職種連携についても指導を行っている。

 

理学療法士の強みとは?

大平(PT)

今回は「お互いの職種の強み」について話し合いましょう。いきなりですが、普段、理学療法士についてどう考えていますか?
僕が持つ理学療法士のイメージは「全身にすごく詳しい人」です。表面的な体の構造だけでなく、脳・心肺・筋・骨格の機能に関しても幅広い知識を持っているので、僕は日ごろから「身体の機能面でわからないことがあれば理学療法士に聞こう!」というスタンスを取っています。

小池(OT)

大平(PT)

なるほど。たしかに、理学療法士は身体の機能面に対して専門性を感じている人が多いかもしれません。
起きあがることや歩くことができなくなってしまった患者さんが、理学療法士がリハビリを継続することで徐々にできるようになっていきますよね。目に見えて効果が出るので、患者さん自身も、身体状態の改善を感じてもらいやすいと思います。

小池(OT)

大平(PT)

そうですね。
また、理学療法士は社会的な認知度が高いので、リハビリ=理学療法士という認識が世間に浸透していることが、作業療法士の僕からすると少し羨ましいです(笑)

小池(OT)

大平(PT)

他のリハビリ職からは、そう見える面もあるかもしれないですね(笑)。
僕のイメージも、理学療法士と言えば“身体面のスペシャリスト”ですね。患者さんの状態について、筋・骨格などの運動機能から動作までを一貫して把握できるため、身体面は理学療法士に聞いておけば間違いないですよね。

永澤(Ns)

大平(PT)

なるほど。
僕は最近、研究活動の一環として、高齢者の転倒予防講座を行いました。理学療法士も一緒に参加していたのですが、身体機能に関する知識が豊富で脱帽しました。

永澤(Ns)

大平(PT)

ふむふむ。
活躍の場として、医療・介護施設での術前・術後の運動介入はもちろんですが、最近は介護予防教室などの地域支援事業に関われることも強みだと思います。高齢者は、下肢の筋力など自身の身体面への関心が高いので、理学療法士は今後そういった場により求められるのかなと感じます。

永澤(Ns)

大平(PT)

たしかに、僕自身も介護予防分野への職務の広がりは実感しているところですね。

作業療法士の強みとは?

次は、作業療法士についてどう考えているのか教えてもらえますか?

小池(OT)

大平(PT)

作業療法士は、患者さんが以前の生活を取り戻すために、一番大事な役割を担っていると思います。僕は脳卒中病棟で働いていますが、高次脳機能障害に対してアプローチしなければならない患者さんのリハビリは作業療法士に頼りっぱなしです。
嬉しい!頼ってください!

小池(OT)

大平(PT)

作業療法士なくして自宅復帰は難しい! と日々感じています。それから、精神科の患者さんへも積極的なアプローチができることも強みだと思います。そこで理学療法士との違いを感じます。
恥ずかしながら、臨床現場で働いていた時代の僕は、作業療法士が患者さんの希望に合わせたオーダーメイドのリハビリを行っていることを知りませんでした。看護大学で教育や研究を作業療法士さんとも一緒に行うようになってはじめて、身体機能面だけでなく注意力や認知機能面へのアプローチまでこなせるスペシャリストだと知ることができました。

永澤(Ns)

なるほど、ありがとうございます。おっしゃるように、作業療法士は生活の専門家ですから、僕も身体機能面だけに固執しないよう意識していますね。ただ、作業療法士の強みが他職種に浸透するのは、もう少し時間が掛かりそうです。

小池(OT)

大平(PT)

そうですね、まずは作業療法士の認知度向上キャンペーンをしないとですね(笑)。それを考えると、作業療法士の専門性について患者さんに理解してもらうのも難しいところなのかなと思いますが、実際はどうなのでしょうか。
それは僕も思います。作業療法士は生活に特化した支援という強みがあるのに、理学療法士よりも患者さんの認知度が低いと感じているので…。

永澤(Ns)

たしかに細かい作業が多いので、患者さん自身も何をやっているのかわかりにくく、認知度が低いのかもしれません。作業療法は、動作自体の練習、行いやすい動作の方法を工夫するなど、地道な訓練に時間を割いていますので、小さな改善が積み重なるイメージです。そこが、大きな変化を感じやすい理学療法との差かもしれません。

小池(OT)

なるほど。

永澤(Ns)

また、作業療法士は「患者さんの生活の全体である24時間を、いかに自由に過ごせるようにするか」を考えて個々にアプローチするので、個別対応性が高いのです

小池(OT)

大平(PT)

まとめると、作業療法士の強みは、患者さんの日常に特化したリハビリで個別性が高いという点で、その多様性から世間には認知されにくい部分があるようですね。もっと作業療法士の役割の重要さが認知されてほしいと、切に願います。

看護師の強みとは

大平(PT)

最後に、看護師の強みについてはどうでしょうか。
僕が考える看護師の強みは、患者さんの院内生活を24時間見ることができる点だと思います。看護師さんは、さまざまな業務があり忙しいなかでも、患者さんの表情や言動などの細かい変化にも着目しているので、心身の機能面ばかりに目が向きがちなリハビリスタッフからすると頼りになります。

僕は、チーム医療の核は看護師だと思っています。リハビリの必要性や薬剤の調整など、患者さんの気持ちと治療方針をすり合わせ、率直な意見を医師に伝えてくれるので、いつも助かっています!

小池(OT)

大平(PT)

そうですね。僕も、患者さんの気持ちに寄り添えるという点が看護師の強みだと思います。また、心理面だけでなく機能面のアセスメントでも、検査結果やカルテなどから患者さんの状態を見抜く力が高くて頼りになります

看護師は、多職種連携を進めるうえで非常に重要な存在ですよね。患者さんの入院生活について、包括的な視点を持つことができるのは、やはり看護師ですからね。

僕自身も、強みとして感じるのは、24時間患者さんに寄り添えることだと思っています。その中で、医療的側面だけではなく、患者さんやご家族の希望や価値観を汲み取って、医師への代弁者になることができます。また、他職種とも関わる機会が多いので、各職種にいろいろと相談しやすい立場だと思います。

永澤(Ns)

大平(PT)

なるほど。看護師が考える強みと、周りが考える強みは一致していると考えてよさそうですね。やはり、看護師は患者さんからも医師を含めた医療者からも、一番近しい存在かもしれませんね
まとめ
今回、私たちが話し合っていくなかで、チーム医療の核となる看護師、身体の機能面に特化している理学療法士、患者さんの生活面に特化している作業療法士という、それぞれの考える強みが明確になりました。

人によって考え方はさまざまなので、この機会に、皆さんも他職種のスタッフとお互いの強みについて話し合ってみてはいかがでしょうか。お互いの強みを理解することで、より多職種連携が深まるかもしれません。