薬剤師の“整理力”

薬剤師にとって重要なスキルは何だと思いますか?

患者さんや多職種と関わる機会が多いから、やっぱり『コミュニケーション力』。いやいや、何よりのベースとなる薬に関する『情報力』でしょう。いろいろな想いがあるかと思いますが、僕が重要視しているスキルは『整理力』です。今回は薬剤師にとっての『整理力』の大切さをまとめてみました!

調剤室での整理力

薬剤師はミスの許されない職種。ひとつのミスが、重大なアクシデントにつながる恐れがあります。ミスが発生しないようなリスク管理は、どこの施設でも重要な課題ですよね。そこで、個人レベルでできるリスク管理として、僕が意識していることが『工程の整理』です。

調剤は薬剤師の独占業務であり、ここでのミスが最終的なアクシデントに直結します。

それを食い止めるために監査を行っていますが、実は監査のやりかたは人それぞれなんです。

僕は、この監査に関して、特にこだわりをもっています。今回は、その一部をご紹介します。

 *まずは、なによりも先に散らかっている机の整頓から始めます(監査台は共同スペースなので、だいたい散らかっている…)。

 *次に、調剤済みの薬剤を左側、処方箋を上側、薬袋を右側に置きます。

 *処方箋に書かれた医薬品を、上から順番に手に取り、ひとつひとつ監査します。

 *それをきれいに束ね、右側の薬袋に、またひとつひとつ詰めていきます。

このように、自分の中で作業の工程を決めることで、監査だけに集中することができます。『工程を整理』することで、ミスの発生を抑える努力をしています。

正直、監査のやり方には、相当なこだわりがあるので、調剤はどんな状態で持ってこられても大丈夫です。バラバラでもグチャグチャでも、実物と数が合ってさえいれば問題ありません。自分なりの工程で監査をし、しっかりと『整えて』患者さんに届けます。

病棟薬剤師の整理力

昨今では、病棟で活躍する薬剤師の姿が当たり前となっています。ですが、一昔前までは病棟に薬剤師がいることはまれだったようです。対人業務が求められ、活躍の場は増える一方。頑張りたいものですね。

では、病棟の薬剤師には、どんなことが求められているでしょうか。医師や看護師をはじめとする多職種から、こんな質問を受けた覚えはありませんか?

 *「持参薬が大量にありすぎて、どれがどれだかわかりません!」

 *「点滴ルートが多すぎて、もうグチャグチャ。どのルートから、どの薬を投与すればいいですか?」

 *「こんな薬飲んでるみたいだけど、あの薬を投与しても大丈夫?」

どうですか。一度は聞いたことのある質問ではないでしょうか。

これらの質問を改めて見直すと、情報が混沌としていることに気が付きます。つまり、病棟の薬剤師には『情報の整理』が求められていると思うのです。

そこで僕は、質問の本質に迫るため、混沌とした情報に視点を導入することで、問題点を『整理』することを意識しています。

 *「持参薬が大量にありすぎて、どれがどれだかわかりません!」

  →薬効分類という視点から、薬剤情報を整理し情報提供する。

 *「点滴ルートが多すぎて、もうグチャグチャ。どのルートから、どの薬を投与すればいいですか?」

  →配合変化という視点から、同一ルートで投与できない薬を整理する。

 *「こんな薬飲んでるみたいだけど、あの薬を投与しても大丈夫?」

  →薬物相互作用という視点から、投与可否を整理し、適切な薬物療法を提案する。

あくまで一例ですが、こうすることで、現在置かれている状況をきっちり把握し、問題点や重要な点を浮かび上がらせることができるのではないでしょうか。

整理力を勧める理由

もしかすると、皆さんも自然とおなじようなことをしているかもしれません。ですが今回は、あえて、文章として『整理』してみました。

僕は、“物”や“情報”を『整理』することで、“思考”が『整理』されるなあと思っています。

今回も、文章として『整理』することで、自分の考えを俯瞰することが出来ました。皆さんもぜひ『推理オタク』ならぬ『整理オタク』になってみてはいかがでしょうか…!!(コナンオチ笑)

執筆者
イサミ(薬剤師/クエスト部)

大学病院を経て、現在は大学で教員をしている。薬剤師の可能性を広げたい。