薬剤師は調剤・監査の時、薬の何を見ているの?

久しぶりにメディッココラムを書きます、薬剤師のぽりまーです。SNSでは、たまに「薬数えるだけなら子供でもできるんじゃい!」みたいな薬剤師ディスリを見かけます。ええ、言いたいことはわかりますよ。だって、誰よりも「もっと患者さんとの関わりに時間を使えたら…」と思っているのはほかでもない薬剤師ですから。私たちの代わりに薬を数えてくれる全自動ロボットがいてくれたら、いったいどれだけの薬剤師の心が救われるでしょうか。

そんなことを言っていても、今はまだ夢物語。イヤでも目の前の薬は数えられるのを待っている…。というわけで、今回は、薬剤師が調剤・監査時に薬の何を見てるのか?「薬の確認方法」についてお伝えしようと思います!

処方箋の例)

Rp1)【般】オルメサルタン口腔内崩壊錠20mg 1回1錠(1日1錠)

    1日1回 朝食後           28日分

Rp2)【般】酸化マグネシウム錠330mg 1回1錠(1日3錠)

    1日3回 毎食後           21日分

Rp3)【般】ロキソプロフェンNaテープ100mg 14枚

    1日1回、1日1枚 14日分(腰)

※【般】は一般名処方

①処方箋と集められた薬の照らし合わせ

まずは、そもそもその薬が処方箋と合っているのか? という確認から。処方箋を見ながら、薬の名前(&メーカー名)、規格、一回量(一日量)、用法、日数を確認します。この間約3秒(※1剤につき)! 文字情報と同時に、薬の色や形も見ています。中には同じ薬で4規格以上あるものもあり、見た目も大事な情報なんですよね。

例えば…

《オルメサルタン口腔内崩壊錠の場合》
5  mg:シート 黄緑×茶色/錠剤 薄黄色
10mg:シート 緑色/錠剤 白色
20mg:シート 水色/錠剤 白色
40mg:シート 紫色/錠剤 白色

 

《酸化マグネシウム錠の場合》
200mg:シート 紫色/錠剤 白色
250mg:シート 緑色/錠剤 白色
330mg:シート 青色/錠剤 白色
500mg:シート 桃色/錠剤 白色

※後発品メーカーにより異なる場合あり

ぽりま(Ph)

ちなみに、大学の実務試験では「指差し確認!(ヨシ!)」とかやりますが、現場で実践している人は今のところ見たことありません…。

②薬の数の確認(錠剤の場合)

さて、集められた薬はどうやら合っていたようです。次は細かい数を確認します。今回の処方は、Rp1 28錠、Rp2 63錠、Rp3 2袋(7枚/袋)。なお、薬の棚には常に半端な錠剤があるため、それらを消費しつつ調剤する必要があります(古いものから使わないと、新しく開ける薬と使用期限がズレてしまうため)。

今回の場合、Rp1,2を10錠シート+端数1つで作るとしたら、Rp1は2錠、Rp2は7錠の端数が発生するのがわかりますか? 薬は1錠の端数が出ないようにしなきゃいけないので、奇数の場合は少し工夫が必要です(※1錠に切り取られたものは誤飲リスクがあるので、原則患者さんに渡しません!)。ただ、端数だらけだと数えにくいですし患者さんからの印象も良くないので、よっぽどのことがない限り、端数は2~3つ以内でまとめます。

薬の集め方の一例

・28錠:20+8、20+6+2、20+5+3など

・63錠:60+3、50+8+5、50+7+6など

ぽりま(Ph)

基本的に1週間単位の処方が多いので、薬剤師は必然と7の倍数に強くなります!

③破損、汚れ、ゴミの混入をチェック

ここまでで、無事に処方箋通りの薬を確認できました。最後に、破損や汚れ、ゴミの混入などをチェックします。今回の処方箋は、完成品を集める薬剤だけなので、中身に影響を与えたり患者さんが怪我する恐れがあるような破損がないか(シートの欠け、アルミ部分の穴あき、ゴミの付着、着色など)を確認します。

製剤的に異常がないかも大事ですが、「渡された患者さんがどう思うか」という視点も非常に大切です。不備があった場合は薬局・薬剤師だけでなく、医薬品に対する信用問題にもつながるので、ここはかなり慎重になるポイントです! 「影響なし」と判断した場合でも、少しでも通常と異なる見た目の薬を患者さんに渡す際は、ひと言伝えるようにしています。

④最終確認

患者さんに渡す前に、忘れちゃいけないのが「ダブルチェック」。薬局では、基本的には調剤ー監査で別の薬剤師、監査ー投薬で別の薬剤師などと、1枚の処方箋に対して少なくとも2人以上の薬剤師が関わりますが、タイミングによっては自分しかいないこともありえます。そういう時でも、監査した場所とは違う場所(カウンターなど)で再確認すると、見落としに気付くことが意外とあるんです。

まれに発見されるのは、シートの抱き合わせ(2枚を裏表で合わせてあること)が片方しかなかったり、1枚だけ違う薬のシートが混ざっていたり…。最後の最後まで、気が抜けません。薬剤師は、患者さんに薬を渡す数分間でこんなことを確認しながらも、副作用のヒアリングや質問への受け答え、患者さんの観察などをしているんです。

まとめ

今回は、薬剤師の調剤・監査の一部分をまとめてみました! 今回書ききれなかった一包化や散剤・水剤(粉薬・シロップ)、軟膏MIXなどの監査は、また違った確認工程が加わります。「薬剤師は調剤室でこんなことしてたんや!」と少しでも思ってもらえるポイントがあればうれしいです。

執筆者
ぽりまー(薬剤師)

調剤薬局時代に研修認定薬剤師を取得し、現在の本職は編集者。糖尿病クリニック、在宅専門薬局で週1回ずつ薬剤師をやっている。臨床現場のリアルな声を届けられる編集を目指している。

Twitter:@care_nekko