同じ作業療法士でも、専門分野が違った場合、情報共有が難しいと感じることはありませんか?
例えば、急性期の作業療法士から精神科の作業療法士へと情報提供する際など、患者さんにスムーズな介入を行うためには何が大切なのでしょうか。
今回は、リストカットによる腱断裂の事例から、サマリーを作成する際のポイントについて話し合いました!
須藤(OT)
作業療法士11年目。急性期でハンドセラピィに従事。
小池(OT)
作業療法士10年目。急性期でハンドセラピィに従事。
坂場(OT)
作業療法士5年目。精神科デイケア勤務。
事例を検討して、対応とサマリーを学ぶ!
小池(OT)
坂場(OT)
小池(OT)
坂場(OT)
小池(OT)
緊急で同日に腱縫合術を施行し、整形外科病棟に入院となる。術後より不穏行動、意味不明な言動がみられた。術後1週間で服薬コントロール目的に精神科病院に転院となる。
小池(OT)
坂場(OT)
小池(OT)
坂場(OT)
小池(OT)
サマリーには実生活を見据えた目標設定を書く
小池(OT)
坂場(OT)
小池(OT)
坂場(OT)
小池(OT)
須藤(OT)
坂場(OT)
須藤(OT)
坂場(OT)
小池(OT)
坂場(OT)
小池(OT)
須藤(OT)
小池(OT)
須藤(OT)
須藤(OT)
坂場(OT)
須藤(OT)
坂場(OT)
須藤(OT)
坂場(OT)
須藤(OT)
坂場(OT)
小池(OT)
精神疾患をもつ患者さんの情報収集はどのタイミングで聞くのがいいの?
須藤(OT)
小池(OT)
須藤(OT)
坂場(OT)
小池(OT)
坂場(OT)
小池(OT)
坂場(OT)
須藤(OT)
坂場(OT)
須藤(OT)
付録:現役作業療法士によるサマリー記載時の注意点とサマリー例
須藤(OT)
1.送付先施設の情報を確認する(ホームページなど)
・送付先の施設の誰に向けて書くのか
私は、相手によって、サマリー記載に用いる用語を変えるようにしています。例えば、リハビリ職種がおらず、看護師やケアマネージャー宛に送る際は、専門用語や評価結果は使わずに一般的な生活の問題を中心に説明します。
・転院先の設備について
作業療法士がいる場合でも、施設によってリハビリの頻度や設備が異なるため、同じプログラムができないこともあります。私は、自分がその設備環境でやるとしたらどうするかを念頭に置いて書いています。
2.患者さんの治療状況・病態について医師と共有する
自分では理解しているつもりでも、誰でも間違えることがあります。間違えた情報は送付された相手だけでなく、患者さんまでもが困ることになりますので、自分の理解している指示内容を「~という理解で大丈夫でしょうか?」と医師に必ず確認しましょう。
3.サマリーの流れを自分の中で確立させる
私の場合は、はじめに入院前の生活状況を簡単に書いて、入院してきた状況(現病歴)について書きます。そのあとに初期評価と退院時評価の変化を比較しながら書きます。次に段落を変えて、最終的な目標設定(自宅退院だとしたら、移動手段や一日の過ごし方まで)を書いています。目標設定についてはあくまでも現状から考える提案であり、押し付けにならないように書くことを努めています。
4.標準的な治療を理解する
送付先のスタッフが調べることを予測し、標準的な治療(ガイドライン、インターネット情報など)についてはある程度理解しておきましょう。例えば、サマリーに記載された内容が標準的な治療と大きく異なっていたら混乱を招きますよね。標準的な治療と異なる場合はとくに、医師からの指示や病態について具体的に記載し、不安を与えないように工夫しましょう。
5.日常的に情報収集をする
頑張って調べても、ホームページ上の情報だけでは足りないことがあります。研修会や会議などで他領域、他施設の方と関わる機会があれば、施設の設備や一日の流れについて教えてもらうなど、イメージが広がるように情報収集すると良いでしょう。
須藤(OT)
30歳代の女性で、2年前まで仕事をしていましたが、双極性障害を発症し、仕事を辞めています。現在は無職で親と同居し、精神科に通院していました。今回、自宅にてリストカットしたところを母親に発見され、左示指・中指の腱断裂を呈していたため、緊急で同日に腱縫合術を施行し、整形外科病棟に入院となりました。術後のプロトコルは運動内容の細かな管理が困難と考え、3週間固定法(○月○日より自動運動開始)を選択しています。
初期評価は固定中であり、手関節、手指の運動は行っていません。左肩、肘の運動に問題はなく、固定した状態で机上のお椀を押さえたり、袋を前腕に引っ掛けるなどをして左腕を使用していました。固定した状態でも強い力を入れることは禁忌であり、常に筋緊張が高い状態だと可動域制限が生じやすいため、肩・肘も含めてリラクゼーション(力を抜く)ことを指導していました。左腕にこだわらず、全身の体操の中で力を抜く運動を取り入れたところ、うまく行えているようでした。手の運動範囲については口頭で説明し、その場では理解できているようでしたが、病棟では看護師の指示を聞かずに離院してしまったり、「ここにいたらダメだ」などの発言が聞かれるなど不穏と思われる言動もみられていました。リハビリでも拒否をされた日が2回ほどありました。
術後1週間での転院となりますので、その後のプロトコルについて説明します。術後3週(○月○日)までは固定期間ですので全身のリラクゼーションや全身運動を中心に行っていただけると助かります。3週以降は自動運動のみが開始となりますが、強い力を要する動作と手関節背屈位での手指伸展は禁忌で、手関節掌屈位から中間位の方が損傷腱への負担は少なくなります。損傷腱が完全に回復するまでには12週間かかりますので、それまでは腱への負担を配慮して運動を進める必要があります。
3週以降のプログラムは、①リラックスしてもらう、②手指の一つ一つの関節ごとの硬さを取る、③自分の力で指を曲げ伸ばししてもらう、を繰り返し行います。②の時に痛みが出ることがありますので、十分に説明し、拒否が出ないように工夫が必要かもしれません。また、目標についてはまず母指を優先的に動くようにし、筒やボールくらいの粗大なものを掴んだり押さえたりができるようにしましょう。次の段階では母指と示指、中指の対立を優先してボタンなどがつまめるようにしてもらうと良いです。今回は示指と中指の腱が断裂しているので、母指と環指、小指などで代用できるとよいです。最終的に生活の中で不自由なく使えるようになることが目標ですので、左手が使えないことで困る動作や本人の役割を明確にし、それに対応することが重要と考えています。
以上はあくまで提案となりますので、参考になれば幸いです。