職場で教えてくれる人がいない!?少人数職場の新人はどうすべき?

少人数職場の医療職は、新卒で入った現場にまさかの指導係がいない!?なんてことがありえます。その場合、どう乗り越えたらいいのでしょうか?

今回は、メディッコメンバーである作業療法士、管理栄養士、薬剤師が集まり、自分たちの新人時代と指導係の経験を語り合いました。

 

大人数職場における新人教育についての記事はこちら↓

Ns×Ph×PTで語った「大人数職場における新人教育」のリアル

 

参加者

 須藤(OT)
作業療法士11年目。リハビリ全体で20人弱の
総合病院に入職するが、同職種は4人だったため、当時新人教育は確立されていなかった。

 なおた(RD)
管理栄養士5年目。給食会社、療養型病院を経て、老健で勤務。新卒で小さい給食会社に就職したが、人員不足により、管理栄養士が1人の職場で働かざるを得ない状況だった。

 ぽりまー(Ph)
薬剤師4年目。新卒で調剤薬局に就職し、3年間勤務。4年目からは医療メディアの新人編集者。薬局時代は、本社で集合研修を受けた後、店舗にて実地研修。薬剤師は4~5人で、教育は2年目が担当していた

新卒なのに指導係が不在。自分なりの勉強方法を探せ!

須藤(OT)

今回は職場の新人教育をテーマとして、少人数の職場で働くメディッコメンバーに集まってもらいました。指導者がいない、もしくは少ない環境で、どのように勉強してきたのかということを話していきましょう

よろしくお願いします。

なおた(RD)

須藤(OT)

僕の新人時代は、リハビリ職全体で20人弱のスタッフがいる職場で、全体の新人教育として、基本的なリスク管理や移乗介助などといった共通の業務内容を教えられました。でも、作業療法士は4人しかいなくて、同職種での新人教育はほとんどなかったんです。さらに、先輩が放任主義だったので、指導係などはとくに決められておらず、「手が空いている先輩に聞いて」と言われていました。働き始めはとくに、消極的な性格だったこともあり、先輩にいつ聞いていいのかわからず、やみくもに自力で勉強していました

それは大変でしたね。ちょっと違いますが、栄養士も特殊な業界で…。私は最初、とても小さい給食会社に就職したのですが、入ったときは人が足りなくて、新人なのに、管理栄養士が1人の職場で働かざるを得ない状況でした

なおた(RD)

須藤(OT)

ええええ!

言ってしまえば、教育も何もないというか。その後は、ケアハウス、療養型病院、介護老人保健施設(老健)などでの経験を積みました。でも、新卒以外は経験者採用で業務の引継ぎを受けるのみなので、いわゆる“新人教育”は受けていないままですね

なおた(RD)

須藤(OT)

ちょっとイメージしづらいので、質問なんですが、栄養士が給食会社で働くってどんな感じなんですか?

ここでは、病院給食を作る会社を給食会社としますね。今は、病院給食も外部委託できるので、給食を病院が作っている場合と、業者が作っている場合があります。ただ、給食を業者に委託した場合も、病院の給食責任者は、常勤の管理栄養士でなければならないという施設基準(※)があります

なおた(RD)

須藤(OT)

ふむふむ

病院側の管理栄養士と、委託された給食会社で働く管理栄養士の関係は対等な立場なので、これは他の職種にはあまりない関係性ですね。私は給食会社側にいたので、病院側の栄養士から、書類についての指摘やアドバイスを受けることはありましたが、契約関係にあたるので、指導とは少し違いました。

なおた(RD)

補足
病院給食の施設基準として、「入院時食事療養(I)」というものがあり、常勤の管理栄養士か栄養士が責任者となるよう規定されていますが、入院基本料における「栄養管理体制の基準」では、管理栄養士の配置が必須となっています。

指導係は1つ上の新人! 経験の少なさを補うためには

薬剤師で新人教育がない職場はさすがにないですね…(笑)。私は最初、調剤薬局に就職したので、基礎的な集合研修のあと、実際の仕事は店舗で学ぶという流れでした。私が入った店舗は、当時3年目の先輩が管理薬剤師で、指導係は2年目の先輩でした。もう1人、育休明けのベテラン薬剤師がいたのですが、後ろから見守っている感じで…。主に新人で業務を回していましたね。

ぽりまー(Ph)

須藤(OT)

僕たちからしたら、充実した教育環境に見えますね(笑)。

そうかもしれませんが、困ることもあって。指導係の先輩とは仲良くやっていたのですが、相談したにもかかわらず注意されることが多くて、かなりもどかしい思いをしていました。2年目なので、正しく判断できないこともあるんですよね

ぽりまー(Ph)

須藤(OT)

うむむ、それはもどかしい…

でも、薬局は狭い箱なので、指導係の先輩を差し置いて上の先輩に聞くわけにもいかなくて。だから、先輩たちが対応している内容を観察したり、あとで記録を見たりして、周りの経験もできる限り吸収できるように努力していました

ぽりまー(Ph)

なるほど。新人で業務を回すとなると、スキル的なところは初めから自分たちでしっかり勉強していかなきゃいけないですよね。人間関係も、1つの店舗に限られた人しかいないので、すごく大事そうだなという印象を受けました。

なおた(RD)

後輩と先輩から板挟み! 2年目の苦悩

須藤(OT)

では、次のステップとして自分が指導係になったときについて聞かせてください。

私も先輩と同じ流れで、2年目に指導係になりました。私は、後輩が入ってくる直前に内規とマニュアルの改定を担当したので、後輩にそれを渡せばある程度大丈夫だろうと思っていました。でも、その間に上の先輩が異動してしまって、気付けば店舗で2番目の立場になっていたんです

ぽりまー(Ph)

須藤(OT)

すごい話ですね…

管理薬剤師はベテランの先輩に変わったので、業務はスムーズに回るようになったのですが、育短中の管理薬剤師をサポートしながら、新人と中途採用2人の教育を担当するのはかなり大変でした

ぽりまー(Ph)

指導係1人に対して後輩2人だと、ちょっと厳しいですね。

なおた(RD)

私が新人の頃はひたすらメモを取っていたのですが、後輩は私と違ってまったくメモを取らなかったんです。自分にとっての当たり前が、他の人にとっては違うんだと実感しました。

ぽりまー(Ph)

須藤(OT)

指導する立場になってようやく気付くことってありますよね、わかります。

店舗のスタッフと協力しながら、メモするタイミングには声がけして、後輩に任せた業務もなるべくすぐに確認してフィードバックするなど工夫をしていました。ただ、年が近いこともあって、言い方にはすごく気を遣いましたね。自分なりにできることをやっていたんですが、相手のペースとかレベルに合わせるっていうところがしっかりできていなかったので、そこは私のよくなかったところかなと思います。

ぽりまー(Ph)

須藤(OT)

でも、2年目にそれをやれっていうのも難しい話ですよね(笑)。何年目でも悩む事案だと思います。

指導された経験がないまま指導係に。自分の長所を生かした指導方法

須藤(OT)

僕が入職した当初は教育制度がなかったのですが、次の年から導入されたんです。僕は指導されないまま、3年目に指導係になってしまいました(笑)

それは運が悪い…。指導する側として、勉強はどうしていたんですか?

なおた(RD)

須藤(OT)

仕事終わりに某ファストフード店で、21時くらいまで勉強していましたね。普段から書籍や雑誌を読んで学んでいたので、自分が後輩を指導する際は、自分の経験を語るのではなく、「この本にこういうことが書いてあるよ」というような紹介をするようにしていました。

かなり努力されてたんですね。

なおた(RD)

須藤(OT)

当時は自分に自信がなくて、いろいろなエビデンスをもとに教えることが習慣になっていましたね。今でも論文で実証されている内容を伝えるというやり方は変わっていません。運は悪かったかもしれないけれど、結果的に自分の成長につながったので、いい経験になりました

管理栄養士の世界は指導関係が成り立ちにくい?

私は今、老健で施設側の管理栄養士をしていて、栄養管理と給食会社の指導を行っています。施設で雇用されている管理栄養士は私のみで、給食会社に新卒の子と3年目の子が配属されているので、自分が新人のときとは逆の立場ですね。基本的には契約関係という立場で接していますが、時間があるときには、自分が新人のときにしてもらったように、書類のことや献立作成の方法など、教えられることは指導するように心がけています

なおた(RD)

持ちつ持たれつ、な関係ですね。

ぽりまー(Ph)

そうですね。あと、最近は減っていますが、厨房が完全直営だと、管理栄養士・栄養士が数名いるので、そういう職場に入った新人は、しっかりとした指導を受けられるケースもあります

なおた(RD)

須藤(OT)

そういうケースもあるんですね。

でも、先輩が退職しない限り、病棟業務の栄養管理などは回ってこず、厨房で給食管理業務ばかりの場合もあるようです。また、外部委託している病院で、かつ施設内に管理栄養士が5、6名いて、栄養管理を中心とした教育を受けられるところは、80名の同級生で2、3に人くらいしか就職できず、狭き門ですね。

なおた(RD)

須藤(OT)

そんな裏側があったとは。

管理栄養士の世界は、地域の栄養士会が活発なので、栄養士会や学会に出向くなど、自分で勉強する姿勢が大事です。給食会社の現場を知ることは働いていくうえで重要なので、最初は給食管理を学べる現場にいくことで経験を積めると思います。管理栄養士は医療保険、介護保険ともに算定できる加算が少ない職種で、複数人の配置が難しいという実情があるので、自分で考えて学んで、キャリアアップしていかなきゃいけないんです。

なおた(RD)

同じ管理栄養士でも、配属先によって役割が違って、でも契約関係だから、そもそも指導関係が成り立ちにくい職場環境ということですね

ぽりまー(Ph)

須藤(OT)

ここまで、それぞれの教育環境を語りましたが、僕たちのような少人数の職場では、指導してくれる人がいたら、もっと効率よく勉強できたかもしれないと感じることは少なからずありますよね。ただ一方で、尊敬できる指導者とめぐり会えるとも限らない。少人数職場で経験した強みは、環境に依存せず、自分たちで積極的に学んできたことだと思います。

そう考えると、これまで自分がやってきたことを誇りに思えそうです。今日はありがとうございました!

なおた(RD)

まとめ
自分が求めている新人教育を受けれるとは限らないですが、最近は、SNSなどでもたくさんの情報が発信されています。どうステップアップしていくかは自分次第。ここメディッコでも、お互いを補い合い、切磋琢磨していきたいですね!