精神科の患者さんは怖い、コミュニケーションが取りにくい、どう関わったらいいの?という言葉をよく聞きます。
そこで、実際に精神科の慢性期病棟で働く看護師が普段からどのようなことに注意・観察して関わっているのかを紹介します。
精神疾患の”特徴”を理解する
精神科に入院されている方の代表的な疾患は「統合失調症」です。
そのほかに「双極性障害(躁鬱病)」、「発達障害」、「認知症」などを持つ方が入院しています。
そのため、まずはそれぞれの疾患の特徴を理解することが先決です。
患者さんのさまざまな行動や言動の原因は、病気による特異的な症状かもしれません。
患者さんがどの病期(急性期、回復期、慢性期)であるかを理解しておかなければ、その疾患の病態や状況に合った関わりはできず、患者さんの精神状態を悪化させてしまうこともあります。
うつ状態の方に励ましたり、妄想や幻聴の訴えに対して否定したりしてしまうと、患者さんの中には私たちの意図とは違って捉えられる方も少なくありません。
まずは疾患の特徴を理解することが大切です。
患者さんの”個性”を知る
精神疾患を持つ患者さんも、私たちと同じように性格や気質があり得意なことや苦手なことはそれぞれ異なります。
それぞれ精神疾患の特徴とその症状を理解したあとは、患者さんの性格・個性・気質を観察や背景から理解していきます。
たとえば、同じ疾患を持つ人で比べると分かりやすいかもしれませんね。
丹念に手を洗う患者さんがいたとします。
一見、強迫症と捉えるかもしれませんが、じつはもともと患者さんが綺麗好きなだけかもしれません。
ほかの患者さんとの関わりの薄い患者さんも、もともと1人が好きなだけかもしれませんし、もともと会話が苦手な人だったとしたら、いきなり話しかけても迷惑になってしまいます。
患者さんそれぞれに個性・性格があることを理解すると、どう関わったらよいかがみえてきます。
当たり前のようですが、普段わたしたちがしているコミュニケーションと同じで、相手を知ろうとすることが大切です。
傾聴・共感を”しすぎない”
患者さんによっては、医療者に対して多弁になる方がいます。
この場合、患者さんの不安や不満、悩みを傾聴することも非常に大切ですが、妄想や幻聴による多弁であることもあります。
明らかに妄想とわかる場合でも、頭から否定することはできません。
まずは耳を傾け、「それはとても辛いし、苦しいですね」と共感します。
しかし、稀にこのような対応をしていても、「あの看護師はこういったからいいんだ!」「あの看護師が許可したんだ!」と、医師やほかの医療者に訴えることがあるかもしれません。
このようなケースが考えられるのは、患者さんが現実か妄想かが不明瞭な場合です。
ほかの患者との関係や病院の待遇への不満や要望からくる訴えもありますが、安易に共感するのではなく、患者さんの状況を冷静に判断しながら関わることが必要です。
私たちは患者さんの不安や不満を傾聴し、患者さんの心の負担を軽減できるよう努めたつもりでも、患者さんがどのように受け取っているかを知ることはできません。
精神科は患者さんとの距離を一定に保ちながら、第三者的な視点で対応を見極めることが必要な現場です。
常に冷静に関わる
疾患の状態が安定している方もいれば、ちょっとした要因で不穏になったり、高揚してしまう患者さんがいたりとさまざまです。
興奮気味の患者さんの話を傾聴していると、きついことを言われることがあります。
しかし、医療者も同じ人間ですので時にカチンとくることもあるでしょう。
そんなときこそまずは落ちついて患者さんの声に耳を傾けましょう。
冷静に落ち着いた口調で話すことで、患者さんが医療者側の感情に同調し、落ち着いてくることがあります。
患者さん自身が何に怒り、不満があり、興奮しているのかをゆっくり聞いていくと、怒りの原因が見えてくることもあります。
感情は見えない形でも伝わるものです。
冷静さを見せることが大切です。
まとめ
精神科の患者さんに抱く怖さは、知らないことが多いからかもしれません。
精神科病棟に勤務する看護師として、精神科の誤解を少しでも減らしたいと思い、わたし自身が気をつけている点を紹介しました。
「病気の特徴を理解し、その人を知り、常に冷静であれ」
今回お話したことは、世間一般のコミュニケーションに通じる部分も多いと思います。
患者さんはどんな状況であれ、1人の人間です。
わたしたちと同じように、生きづらさを感じながらもがいているのだと思います。
患者さんとの関わり方に正解はありません。
精神疾患を持つ患者さんとの関わりのヒントになれば嬉しいです。
整形外科から精神科へ勤務中。メンタル系ナースマンとして、地域密着型の医療者コミュニティを形成しつつ、心と身体の予防医療の普及活動中!