テレビでよく見かける救急の現場。実際はどのようなことが行われているのか 、気になるところではありますが、実情は知らないという方も多いのではないでしょうか。
今回は看護師berryさんをゲストにお迎えし、berryさんが勤務している救急現場のリアルに迫りました。
参加者
berry(Ns)
看護師8年目、三次救急、二次救急、ICUで看護師経験を積んできた。twitter:berry
大前(Ns)
元芸人で看護師11年目、救急隊の搬送を直接受けるICUに勤務している。
久原(ME)
臨床工学技士、人工心肺業務をメインに急性期に携わってきた。現在は小児科領域での業務が多い。
たみお(PT)
慢性期病院の理学療法士。急性期、救急という言葉を知らず、ちんぷんかんぷんになると踊りだす。
救急、ICU経験のあるberryさんを迎えて
大前(Ns)
今日は救急の座談会ということで、ゲストとしてberryさんにお越しいただきました。よろしくお願いします。最初に、自己紹介をお願いしてもいいですか?
berry(Ns)
よろしくお願いします! 私は看護師8年目になります。始めの4年間は三次救急で過ごし、そのあと2年半を二次救急、さらに半年間ICUで働き、その後転職活動を経て、現在も急性期で働き続けることにしました。
大前(Ns)
berry(Ns)
そうですね。高度急性期(三次救急)で働くことしか考えていないので、救急やICUしか探していないです!
大前(Ns)
なるほど! berryさんの経歴をもっと掘り下げたいところですが……その前に、ひととおり自己紹介をしましょうか。
たみおです。僕は理学療法士10年目で、慢性期の病院に勤務しています。急性期は経験したことがなくて、素人なのでいろいろ教えてほしいです。
たみお(PT)
臨床工学技士の久原です。僕は心臓血管外科の経験を積むため循環器センターで3年間、その後は経験の幅を広げるために大学病院で2年間勤務し、そこから総合病院に移動しました。今は救急もしつつ、小児科メインで働いています。
久原(ME)
大前(Ns)
申し遅れましたが、僕はICUに所属している看護師の大前です。当院のICUは、心臓血管外科の患者さんだけでなく、外来を通さず直接ICUに入る救急の患者さんなどもいて、救急外来の役割も兼ね備えています。
たみお(PT)
大前(Ns)
そうですよね(笑)。救急現場の想像がつかない方もいらっしゃると思いうので、まずは、berryさんに救急の素朴な“ギモン”から聞いていこうかなと。berryさんいかがでしょう?
berry(Ns)
「二次救急」と「三次救急」の違い、知ってる?
大前(Ns)
berry(Ns)
救急現場というと、皆さん一度はテレビで見たことがあるのではないでしょうか。ドラマやドキュメンタリーでもよく取り上げられていますよね。実際に、ドラマなどで見るような熱血漢の医師もいますし、患者さんにとっては救急搬送されて最初に通る部署でもあるので、病院の顔でもあります。
大前(Ns)
救急車で病院に運ばれてきた人が最初に通る場所ってことですね?
berry(Ns)
そうです。とある医療ドラマのセリフで「救急は医療の原点だ」と聞いたことがありますが、その通りだと思っていて。ずっと昔の医療は、今ほど細分化されていなかったので、「目の前で倒れた人がどんな状態か、どうしたら助かるのか」を考えることが始まりだったと思うんです。
大前(Ns)
初歩的な質問で恐縮ですが、自己紹介にあった三次救急とか二次救急って、どう違うのですか?
たみお(PT)
berry(Ns)
それぞれ施設基準が違っていて、三次救急は救命救急センターを持っている必要があります。二次救急は入院病床があれば受けることができるので幅広いです。二次救急と三次救急の違いは、三次救急の場合は「熱傷や高エネルギー外傷の患者さんが多く運ばれてくる」というのが特徴です。三次救急の方が重症の患者さんが多いですね。
えっ、一次の方が重症かと思っていました!……恥ずかしい(汗)。
たみお(PT)
大前(Ns)
こういう区分って案外知られていないですよね。久原さんはどうですか?
僕も二次救急、三次救急の違いはよくわかってませんでした(笑)。以前働いていた職場は三次救急だったのですが、循環器の急患がとにかく多いところでした。なので、循環器内科や外科の緊急手術を要する患者さんが来るところを「三次救急」とイメージしていました。
久原(ME)
正直まだよくわからなくて(汗)。二次救急と三次救急の違いは、三次救急は重度な外傷が多くて、二次救急は入院施設があれば急性疾患の受け入れが可能ってことですか?
たみお(PT)
berry(Ns)
えーと、病院は都道府県に救急指定病院として登録する際に、一次救急、二次救急、三次救急を選択するんです。大まかに言うと、一次救急は入院の必要がない軽症の患者さん、二次救急は中等度で入院の必要があり、手術できる設備が整っていることが条件です。三次救急は、おっしゃるように重症患者の受け入れが可能で、救命救急センターが設置されているようなところです。
たみお(PT)
berry(Ns)
ですが、この中等度とか重症とかは実際の現場ではきっちり分けられていなくて、二次救急でも重症な患者さんを受け入れることもありますし、CPA(心停止)を受け入れる病院もあります。病院によっては2.5次(二次と三次の中間、後述)としている病院もあります。一次と二次は全然違うのですが、現場からしたら二次救急と三次救急の差は救急救命センターがあるかないかで、患者さんの重症度はほとんど変わらないかもしれません。
ちなみに、救急救命センターってどんなところなんですか?
たみお(PT)
berry(Ns)
要件としては、重篤な救急患者を常に必ず受け入れる体制をとること、ICU・CCUを備えていること、医師、看護師、救急救命士など医療従事者に必要な研修を行う体制を有すること、とされています。24時間、重症・重篤な患者さんを受け入れるので、夜間も医師、看護師の確保がそれなりに必要だと思います。
たみお(PT)
三次救急の基準はberryさんのおっしゃるとおりですね。僕が務めている病院は、救命センターとして登録しようとしたけど通らなかった過去があります。
久原(ME)
大前(Ns)
berry(Ns)
常駐している認定医、病床数、施設の設備など、厳しい施設基準が定められていたと思います。
久原(ME)
救急現場にはどんな職種が関わっている?
大前(Ns)
救急室(以下、ER)は病院によって違うので、こうやってそれぞれの特色を共有できる話し合いってすごく意味のあることだと思うんです。例えば、僕の勤めている病院は三次救急までいかないけど、2.5次救急といった位置付けで、心停止や大動脈解離など緊急手術を要する患者さんはERを通らずに直接ICUに運ばれてきます。
berry(Ns)
治療のために必要な設備を考えると、ICUで管理するほうが早いですからね。
大前(Ns)
そうそう。だから、僕はERを詳しく知らないんです。berryさんの働いていたERには、看護師以外のメディカルスタッフっていました?
berry(Ns)
ERの隣にMR室とCT室があったので、放射線技師がいましたね。ME室も近くにあったので臨床工学技士も常駐していました。救急担当しては、放射線技師、臨床工学技士(以下、ME)、薬剤師がいて、リハビリ室の方々は毎日行われるERカンファレンスに来てくれて、治療方針について話し合いをしていましたね。
久原(ME)
たみお(PT)
berry(Ns)
だから、他の病棟の看護師よりも、ERの近くにいた他職種との関わりのほうが多かったですね。あ、ER担当のソーシャルワーカーもいましたよ。
大前(Ns)
え! ソーシャルワーカーさんがER担当ですか!?具体的にどんなことをしていました?
berry(Ns)
緊急で来られた患者さんは、元の生活に戻ることができない場合が多くて、それをできるだけ実現させるために、ER専属のソーシャルワーカーさんが動いてくれていました。
三次救急に来る人は重症ですからね。さまざまな生活環境から急変してERに来るわけだから、たしかにそういう援助は必要ですよね。
久原(ME)
大前(Ns)
そうですね。久原さんはMEとしてどのような形で携わっていましたか?
僕は補助循環装置を装着するときなどに、オンコールで呼ばれる体制でした。ほとんどの場合はカテ室で医療機器を装着するので、常駐が必要になるほどではなかったですね。
久原(ME)
大前(Ns)
なるほど。以前、理学療法士(以下、PT)がERでの働きを進めると文献で読んだことがあるのですが、実際のところはどうでしょうか?
僕の勤務先では、そのようなことはしていませんね。集中治療室でPTが関わるのは聞いたことがありますが。
たみお(PT)
berry(Ns)
以前参加した学会で拝見したのですが、ERに関わっているリハビリの方は、体位変換などを専属で行っているようでした。
大前(Ns)
体位変換は大切ですよね。僕は嚥下訓練を行っている方について聞いたことがあります。リハビリが関われる領域は確実にありそうですし、どんどん連携したいですね。
学生時代、実習先のICUでは、可動域訓練の様子を見学する機会がありました。たしかに、介入できるところはまだまだあるかもしれませんね。
たみお(PT)
大前(Ns)
berryさんのおかげで、救急現場のリアルが少し見えた気がします。多職種連携という視点でみると、まだまだ改善の余地がありそうですね。
berry(Ns)
そうですね! 救急って敷居が高いイメージがあるかもしれませんが、「患者さんを助けたい」という気持ちは皆同じなので、変に身構えずに連携したほうがいいと思うんです。それに、施設間の連携も大事でして……。
大前(Ns)
おっと。続きも気になるところですが、時間が来てしまいました。次回も引き続きberryさんと一緒に、救急の現場についての座談会をお送りします。他施設との連携はそちらで詳しく聞くことにしましょう。それでは、お楽しみに!
まとめ
救急医療は、時に患者さんの生死に直面するハードな現場ですが、多職種による支援はその後の生活をスムーズにする上で欠かせないもの。それぞれの部署で起きていることを知ると、患者さんの状況をより深く多面的に捉えることができるかもしれません。もちろん、救急医療の現場に限ったことではないので、この座談会をきっかけに、多職種連携の幅を広げてみませんか?
[…] 関連記事第一弾:高度急性期を担う看護師が語る! 救急医療の実情と多職種連携 参加者 […]