あなたは今まで手術後の患者さんと関わる際に「手術中の体位って何だっけ?」と気にしたことはありますか?
手術中の患者さんは、手術を行いやすくするため、仰臥位や側臥位、腹臥位など様々な体位を長時間とることが多いです。
しかし、そのために局所へ持続的な圧迫が生じ、褥瘡や神経症状に繋がるリスクもあります。
今回、手術中にとる主な体位と、体位別に観察すべき褥瘡と神経症状について紹介します。
このコラムを読んで、術後の患者さんと関わる際の観察に活かしてみてください。
手術体位はといったらまずはこれ!仰臥位!
仰臥位は開腹手術などでみられる、手術のなかでは一番ポピュラーな体位です。
主な褥瘡の発生のポイントとして、仙骨部や踵骨部などが挙げられます。
長時間の手術が予想される場合や、高齢者で骨突出している場合には、術前に皮膚保護シートや耐圧分散マットを使用して褥瘡発生予防をしています。
注意しなければいけない神経症状は、腕神経叢麻痺、橈骨神経麻痺、尺骨神経麻痺、腓骨神経麻痺が挙げられます。
神経症状を起こさないためにも、上肢や下肢のポジショニング、圧迫の有無、上肢の過度な伸展に対して注意しています。
恥ずかしいけど手術のためなら頑張る!砕石位!
砕石位は主に腹腔鏡下での婦人科や直腸での手術でみられる体位になります。
下の図を見た通り羞恥心を伴う体位になるため配慮が必要になります。
砕石位では支脚器を使用し、下肢のポジショニングを行います。
褥瘡発生ポイントとして、仙骨部、腓腹部、踵部が挙げられます。
仙骨部は皮膚保護シートを張ることで対策をしています。
腓腹部、踵部などは支脚器の圧迫によって引き起こされるため、手術中に適宜圧迫されすぎていないかを確認しています。
神経症状で特に注意しなければならないのは、支脚器にて腓骨頭が圧迫されることによる腓骨神経麻痺や、股関節部の過度の外旋あるいは屈曲による坐骨神経麻痺です。
また、砕石位の手術で神経障害や褥瘡以外で発生頻度が高いのが、コンパートメント症候群です。
コンパートメント症候群
筋肉は筋膜で覆われており、虚血や持続的な圧迫、外傷などによる菌の増殖といった、腫脹を生じると、その筋肉を含む組織内の筋肉、血管、神経などが圧迫され、動脈還流不全、組織壊死、浮腫、横紋筋融解を生じる事をいいます。
ちなみに下肢コンパートメント症候群のリスク因子は以下の4点です。
- 4時間以上の手術
- 下肢支持器
- 下肢筋肉量、肥満
- 低血圧、脱水、砕石位、頭低位、動脈硬化、血管収縮薬使用、血管損傷
横向き!?いいえ側臥位です!
側臥位は、主に肺の手術でみられる体位です。
体位をとるのは全身麻酔後になるので体の大きい人を横に向けるの結構大変です(涙)
これは、どの体位でも言えるんですが、BMI30超えるひとは術前のダイエットをしてください!!!(筋肉量が多い人は別です!なので、みんな筋トレしよ!)
話が脱線しましたが…側臥位はこんなかんじです。
注意すべき褥瘡発生部位として、まず側胸部、腸骨部が挙げられます。
この部位に対しては、術前に皮膚保護シートを貼ることで対策をとります。
また、下肢では足関節部(内顆・外顆)、下腿外側、膝関節顆部、大転子部も気を付けなければなりません。
褥瘡予防には、体圧分散マットを用いて下肢のポジショニングを行います。
さらに、耳介部分にも褥瘡発生リスクがあるため、体圧分散マットによる予防を行います。
神経症状で注意する必要があるのは、腕神経叢の圧迫による上腕神経麻痺です。
予防のために腋窩に体圧分散マットを入れて腋窩がしっかり浮いてるか確認してます。
他にも、上腕の過伸展や圧迫による橈骨神経や尺骨神経麻痺、腓骨神経麻痺 腓骨頭、膝関節の圧迫による腓骨神経麻痺が挙げられます。
うつぶせ!?腹臥位です!
腹臥位は主に背中の手術でみられる体位になります。
最初は仰臥位にて麻酔導入を行い、挿管したあとに腹臥位になります。
体位変換後に挿管チューブがずれると喚起が不十分となり、患者さんの命に関わるため仰臥位→腹臥位への移動は慎重に行います。
注意すべき褥瘡発生部位として、頭部用体位固定具による前額部、頬部、鼻、下顎部が挙げられます。
また、腸骨部や前胸部への支持器の圧迫や足指、膝関節部などにも注意する必要があります。褥瘡予防には、頭部用体位固定具用のスポンジや、皮膚保護シールを使用します。
男性の場合は性器に気をつける必要もあります。女のわたしはつい忘れがちですが、いつも男性医師がきちんと隙間を作って圧迫されないように細心の注意を払ってくれています!笑
神経症状で注意すべきところは、眼球、眼球周囲の圧迫による動眼神経麻痺や、上肢の過剰な挙上による上腕神経麻痺 、腓骨小頭、膝関節の圧迫による腓骨神経麻痺 などが挙げられます。
まとめ
今回は手術の体位別の褥瘡発生部位や神経症状について紹介しました。
褥瘡は術直後より発赤などでみられることなどがありますが、神経症状は術後しばらくしてからみられることも多いため、病棟での観察が大切になってきます。
神経症状は改善にも時間がかかり、日常生活にも影響が出てくることもあります。
このコラムを読んでいただき、今までの観察項目に追加してみてもらえると嬉しいです。
がんの専門病院で働く薬剤師。Common diseaseや他職種領域・連携についての知識の不足とその重要性を感じてメディッコに参加。今まで薬剤師がいなかった領域でのニーズを掘り出したい。イラストとゲームとねこが好き。
Twitter:@damepharma