「これからのキャリアをどう構築していくべきか…」このような悩みを持つ医療職は少なくありません。今回、医療福祉の幅広いフィールドでの勤務経験があり、さらには海外でのボランティア、大学院修士修了…現在はロボット関係の一般企業に勤務という経歴を持つたつみさんとメディッコメンバーで座談会をしました。キャリアに悩む医療職必見の座談会です、どうぞ!
参加者
たつみ(PT)
一般企業で、理学療法士としてリハビリロボット部門の業務に従事している。企業へ入職する以前は、急性期・回復期・療養型・総合病院での勤務経験のち、海外のボランティア活動を行い、帰国後は問リハ、通所リハ、デイサービス、予防体操教室などの地域医療に関わり、大学院を修了している。@tatsu7660
喜多(PT)
回復期にて勤務する理学療法士。病院勤務の傍らでメディッコ副代表、オンラインサロン運営、研究会運営、企業アドバイザーなどを行っている。
須藤(OT)
急性期病院に勤める作業療法士。病院では臨床・教育・研究にフルコミットしながら、メディッコの学術部、その他研究会の世話人に携わっている。いつも本気。
医療職のキャリアはどうするべきか?
最近、医療職の間でも「これからのキャリアをどうするべきか?」という話題を見かけます。今回、いろいろな経験を積まれているたつみさんからそのヒントをもらおうと考えています、よろしくお願いします!
喜多(PT)
須藤(OT)
たつみ(PT)
実際、キャリアに悩んでいる人や、今後のキャリア構築をしっかり考えたい人はいると思うし、その気持ちは自分の人生設計にとってすごく大切な考えだとは思います。ですが、皆さんが憧れるようなキャリアを積んでいる人たちは、そんなにキャリアデザインを意識して打算的にキャリアを作っていったのしょうか? と私は思います。
喜多(PT)
たつみ(PT)
僕は、最初から思い描いた計画に沿って綺麗にキャリアを築ける人の方が稀なんじゃないかという認識なんです。
よく知らない有名人だけじゃなく、医療業界の内外に限らず自分の知人・友人にも凄いなと思うキャリアを重ねている人が沢山います。その人たちに共通している事は、それぞれが目的意識を持って、自分の課題に向き合って目標に向かってコツコツ体系的に取り組んでいった経験だと思うのです。その結果、今いるべき場所に辿り着いていて、辿り着いたというよりも皆さん常々道半ばと思いながらやっているように自分の目に映るんです。
何かに取り組むということは、毎日が「トライ&エラー」の繰り返しで、どれだけトライして修正してトライして…その積み重ねが楔(くさび)になっていってそれぞれのキャリアが形成されていっていると思ってます。皆さんが憧れるようなキャリアを積んでいる人たちがいるとしたら、その人たちも「トライ&エラー」を繰り返しているだけで、常に前進中って感じじゃないですか?そう考えると、キャリアをデザインするのがどこまで大切なのかっていうのが自分の考えです。
そう考えると、あらかじめデザイン出来るものではなさそうですね。
須藤(OT)
たつみ(PT)
僕は今の所そういう認識です。ある程度、「どう生きたいか」「何に取り組みたいか」という大枠は定めないとですけどね。目指すべき指針が定まれば、目の前の取り組むべき課題がみえてくるものだと思っていますし、コツコツ取り組んでいれば、結果的にキャリアが(デザイン)積み重なってた。そういうものだと思っています。
医療職のキャリアは市場を考える!
なるほど…とはいえ、キラキラしたキャリアを歩んでいる人を見ると憧れてしまいますね。
喜多(PT)
たつみ(PT)
僕は、キャリアは取り組んだ結果に「オマケ」みたいについてくるものだという考えなので、あんまりキラキラした人を追いかけるのは建設的じゃないというか…
例えるなら、いきなり何も稽古していない素人がハリウッドスターに憧れるのと大差ないように思えて現実味がないように思えてしまうんですよね。まずは、自分は何が出来るか客観的に捉え、自分が取り組みたいフィールド(市場)にとって、自分がどれだけ価値があるかを理解しないといけないと思います。自分の市場価値がある程度測れたら、何を目的に行動するかキチンと定めます。
喜多(PT)
たつみ(PT)
例えば、自分の市場価値を高めたいということが目的なら、何をどうすれば市場価値が高くなるのか、じゃあ何をしていこうという「トライ&エラー」の地道な作業…つまり泥臭いことをやる。何かを成している人って泥臭い地道な努力を継続できる人だというのが僕のイメージです。
世の中は広くて器用な方は沢山おられるので、泥臭さなんて考えたことない人もおられると思いますが、僕に置き換えた場合は、僕みたいな凡人は泥臭いやり方しかないのかなと思ってます。
ちなみに、例えとしてわかりやすいと思って「市場価値を高める」という例を出しましたが、僕はどちらかといえば競うことが合わない性分なので、「自分にしか出来ないこと」と「自分が一生懸命取り組みたいこと」を軸に生き方を構築しています。
キャリアを効率的に組んでいくということを、若い人たちが考えているように感じています。どうしたらすぐ上がれるか、自分を打ち出せるか…。さっきの話だと、まずは現場でやってみる、現場に出向く、現場の空気や雰囲気を知る、そこから始まりますよね。でも、実際にその現場にいる若い人たちは、そこまで感じ取れていないように思うのです。
須藤(OT)
たつみ(PT)
そうでしょうか。僕が10〜20代の頃と今の時代の若い世代では、もちろん時代背景といいますかバックグラウンドが違っているので、同じようには語れないことも多いと思います。だけど、似たような部分もあると思っています。どの世代にも「宝クジが当たったら、〇〇したい!」みたいに一足飛びで高みにいきたいと漠然とした希望を抱いている人は少なからずいるのではないかという認識です。それって、誰しもが持っている「楽したい」「やりたいことだけしていたい」っていう感情で、世代を跨ごうが人間やっぱり「しんどいことは嫌」っていう考えが自然で、誰もが憧れることだと思います。
確かに、今の時代はインターネット社会ですから、色んな人生モデルがより昔よりも可視化されているから余計憧れやすくなっているのかもしれないです。けれど、僕からしたら、ジャンプできる人達なんてほんとに才能がある一握りの人だけですよ。
そんなジャンプ出来る人というのは、やはり凡人ではあり得ないものですよね。
喜多(PT)
たつみ(PT)
世の中で天才と呼ばれる人って本当に一部のノーベル賞クラスの人で、多くはその他の凡人。つまり皆さんが憧れる存在も大きくみると凡人の部類かもしれないですよ。いや、凡人の中で頑張ってる人かな。
少し話飛躍するかもしれないけど、時々スマートフォンの新しい機種が発売されると「何十万で高い! 」という人みかけますよね。僕、何十万もらってもスマートフォン作れないから、開発者たちの技術や知識を買っていると考えたら全然高いと思わないんです。定職に就いている一般的な人なら、やりくり次第で手の届く範囲のモノって全然高いと思わない。世の中を変える人たちってそういうプロダクトを生み出せる人じゃないかと思う。
凡人が逆立ちしても、出来ないことをする人が世の中を作る天才で、それ以外は大体が凡人。
喜多(PT)
たつみ(PT)
そう考えると、自分たちが憧れる素敵な人達って天才側なのか凡人側なのかって考えに立ち戻ってきて、手の届く範囲にいるなら、たぶんその人も地道な努力を泥臭く積み上げている人なのかなって思います。
須藤(OT)
そうですねよね。今、トップランナーで走っている人たちは、僕たちと同じように悩んで試行錯誤した結果にある。意外と、自分で出来ることをし続けた結果。それって希望ですね。
喜多(PT)
現場で当事者意識を持ち続けよう!
たつみ(PT)
あと、大事なことはどれだけ早く当事者意識を持てるかだと思います。
喜多(PT)
たつみ(PT)
自分がどうするべきか、です。「宝くじが当たったらいいな~」は、自分の力じゃなですよね?何かが良い方向に向かって一発当たったらいいな。有名になれたら~すごい人になれたら~というのは宝くじレベル。
たつみさんは、当時現場で働いていたときにはどんな当事者意識を持っていましたか?
須藤(OT)
たつみ(PT)
特別なことはしていないと思います。ただ単に、目の前の患者さんに自分がもてる最善の方法で関わることを常に意識していました。20年、30年働いているセラピストよりも、自分が専門職として提供できることの引き出しが少ないという状況を自覚し、それでも「この子に担当してもらって良かった」と、患者さんや御家族さんに思ってもらえるように、無い知恵を絞って自分の課題解決に努めました。
喜多(PT)
たつみ(PT)
とりあえず、学校教育で習った知識は基本的なベースとして持っておくべきという考えです。そのうえで、足りない知識を補填する為の専門書を購入したりして、納得いくまで読み返してましたね。何から取り組んだら良いかわからないって人は、学生時代に購入させられた教科書くらいは、取り敢えず全部読み返したら良いんじゃないかな。あ!あと、自分をごまかさないことがすごく大切かな。
須藤(OT)
たつみ(PT)
はい。分からないことは日々勉強しなければいけないし、分からないことはうやむやにしないということです。患者さんの「これなんでやってるの?」に「これはこういう理由、根拠のもとやっています」という説明が詰まるようならば、自分の勉強不足、アセスメント不足、論理的思考不足と反省します。その日わからなかった、不十分だと感じたことを翌日に持ち込まない。その日のうちに解決させていくことを心がけました。(他者が絡むようなすぐに解決しない事柄にも落とし所を設けていました。)大体セラピストの皆さん病院だと1日10人くらいは担当すると思うけど、10人には10通りでキチンと応えられるようにプログラムを組めている状態が理想的かな。
喜多(PT)
たつみ(PT)
時々患者さんの状態とか環境の課題を理由にする人もいますけど、それって最終的に考えたりする項目であって、課題を自分がアプローチできる前提で設定しないと何もならないですよね。それは環境のせいだねとかいってしまったら、専門職としてどう対処するんだよと。対象の課題に優先度をつけて抽出し、どうアプローチするか常に試行錯誤する。それが自分が思う、ごまかさないことですね。
全てにおいて他人事ではなく、自分事(当事者意識)として捉えるということですね。
須藤(OT)
まとめ
あなたが望むキャリアを構築していくためには、目の前にある課題に一生懸命に取り組むことから始まる…。未来も現在もしっかりと見つめながら、日々のトライアンドエラーを繰り返していきましょう!
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