【前編】現役医師二人と座談会!コメディカルと関わる上で意識していること

これまでに多くの職種と座談会をしてきたメディッコですが、ついに医師との座談会が実現しました…!医師は日頃、どのようにコメディカルと関わっているのでしょうか? 現場で連携が必要なとき医師として思うことを、SNSでも有名なお二人をゲストに迎え、熱く語りました!

ほっち(ME)

今回は、中山医師と志賀医師をお迎えして行う、メディッコ座談会。以前、メディッコでは、「こんな医師と働きたい」というテーマで座談会を行いました。そのアンサー編として「こんなコメディカルと働きたい」をやりたい!!…ということで、この度ついに実現しました! まずは、お二方より自己紹介をお願います。

中山(Dr)

中山 祐次郎と申します。Twitterアイコンと同じ顔じゃないと皆さんわからないと思って…。すみません、この恰好で。

※ドンッ

※ツノの位置が気になるご様子。

中山(Dr)

私は今、消化器外科医をしている39歳(当時)です。病棟や手術室で仕事をしています。よろしくお願いします。

志賀(Dr)

私は救急で医師をしている43歳(当時)です。日本での経験が長いですが、5年間アメリカにいたこともあり、今は病院で働きながら、大学の教員もやっています。

ほっち(ME)

ありがとうございます。メディッコからは以下のメンバーで参加します。

  • ほっち:臨床工学士。現在は医療を中心とするライター、編集者
  • 須藤:作業療法士。大学病院勤務
  • あみ:助産師。病院勤務の経験あり、現在は助産院勤務
  • ぽりまー:薬剤師。調剤薬局勤務の経験あり、現在はWEBメディア編集者
  • 坂場:作業療法士。精神科勤務、大学院の博士課程に進学中
  • タサモ:臨床工学技士。一般病棟勤務
  • かなこ:看護師。手術室勤務
  • 大前(鳥ボーイ):看護師。集中治療室勤務。元芸人

大前(Ns)

では、司会を務めます、鳥ボーイ(以下、大前)です。さっそくですが、中山先生…!そのかぶりものはおいくらするんですか?

中山(Dr)

えっとそうですね、3,500円くらいです。(真顔)

大前(Ns)

ありがとうございます(笑)。そういう和ませムードで来ていただけるのは非常にありがたいです!志賀先生もよろしければ何かかぶっていただいても……(笑)。

志賀(Dr)

かぶりもののリクエストって……(笑)

普段の他職種との関わり

大前(Ns)

さて!中山先生も志賀先生も、それぞれ専門としている領域があると思いますが、どんな職種と一緒に仕事をすることが多いのか、お伺いしてもいいですか。

中山(Dr)

私の場合は、手術室の看護師と臨床工学技士(以下、ME)が多いですね。普段は腹腔鏡手術もやるので、MEさんと会わない日はないです。あとは、病棟の看護師はもちろん、リハビリ職種(OT・PT)、病棟薬剤師、ソーシャルワーカー(以下、SW)とも週に1回は話をします。

大前(Ns)

なるほど。それでは続いて志賀先生…志賀先生!?!?(笑)

※タオルを頭に巻く志賀先生

志賀(Dr)

おまたせしました~。

(ドッと沸くメンバー…先生、無茶ぶりを快く引き受けてくださりありがとうございました!)

志賀(Dr)

私の場合は、看護師、診療看護師、放射線技師、事務、あと救急救命士、SWもっと広くいえば、ほかの部署の医師や看護師さんなどとも関わることが多いですね。

大前(Ns)

ありがとうございます! 普段、お二人がどんな職種と働いているか、少しイメージできました。

「こんな医師と働きたい」記事を読んで

大前(Ns)

さっそくですが、メディッコの「こんな医師と働きたい」という記事、読んでみてどうでしたか?

志賀(Dr)

記事にも書いてありますが、『人として“まとも”っていうのが大事』だと私も思います。私の友人がよく使う言葉の中で、印象的な言葉がありまして。“救急医はイケメンじゃないといけない”と。もう少しわかりやすく言うと、モテる人を体現しているイメージですかね。謙虚な気持ちを忘れず、間違ったことがあれば謝る、しっかり人に向き合える、そんな人です。信頼関係が築きにくい人って、極端に独りよがりであったり、実力以上に自信があったりだとか…。そういう人だと困ってしまいますよね。その裏返しとして、「イケメン」って言葉がピッタリだなと、記事を読んでいても思いました。

大前(Ns)

なるほど。顔だけじゃない、『考え方や姿勢』がイケメン……ということですね。ありがとうございます。

まだ少しお話を聞いただけですが、カメラ越しでも志賀先生のイケメンオーラがひしひしと伝わってきています(笑)。

ぽりま(Ph)

中山(Dr)

私が記事を読んで印象的だったのは、「ありがとう」という言葉がうれしいっていうところで。実は、この記事を読んでから意識するようにしているんです。ありがとうって、一番コストがかからないじゃないですか。それで、不思議なことに習慣づけて言うようにしていたら、感謝の気持ちも自然と生まれてくるようになって…。「この患者さんの点滴、入ってないんですけど」みたいな、怖い看護師さんから電話が来ても、「ありがとう」って言えるようになったんですよ(笑)。

大前(Ns)

たしかに、「ありがとう」と言われて悪い気はしないですもんね。

志賀(Dr)

私もありがとうの言葉は大事にしていますね。医局で他科の医師に会ったら、必ずお世話になったエピソードを伝えて、「この前はありがとうございます」「あの人、その後どうなりました?」など、必ず感謝の言葉を伝えるようにしています。そう繰り返していると、この人はどんな人で、どんなことを考えている人なのかが、なんとなくわかるようになってきました。

大前(Ns)

なるほど。この記事で、「ありがとうって大事だよね」と言っていたのは、看護師のかなこさんですが、会話のキャッチボールができる人は素敵な医師だとも言っていましたよね。かなこさん、中山先生と志賀先生の話を聞いてどうですか?

会話のキャッチボールができるのは本当に大事だなと思います。例えば、患者さんを前にしても、医師の視点と私たち看護師の視点って、職種の役割や学んできていることも違うじゃないですか? だから、やりとりがないと、どこに向かっているのかわからなくなることがあって…。カルテから頑張って医師の考えていることを読み取ろうとは思うんですけど、それでは限界があるので、やっぱり面と向かってやりとりできたらいいですよね。

かなこ(Ns)

大前(Ns)

それは手術室の看護師としても、手術中のコミュニケーションでも通ずるものがありそうですよね。

ありますね。手術申し込みなどで、けっこう細かく書いてくれる医師も多いのですが、それでも前もって「術式が変わるかもしれない」とわかっていれば、いろいろと準備もできますからね。

かなこ(Ns)

大前(Ns)

なるほど~!中山先生は意識してカルテに記載していることはありますか?

中山(Dr)

たしかに、病状によっては突然治療方針が変わることもあるじゃないですか。なので、なるべく手術申し込みのテンプレートに、「腹腔鏡だが癒着が激しいので、開腹に移行する可能性も“まあまあ”あります」と書いておくなどの工夫はしていますね。ひと言でも、どのように手術するかを書くようにしています。

大前(Ns)

カルテ上でも、その方針をちゃんと伝えておくということですね。坂場さんはどうですか?

診察内容をカルテで確認し、話に挙がっていないであろう薬の副作用が疑われる症状などについて記載するようにしています。例えば、水分を取り過ぎているとか眠気が強そうなどですね。患者さん自身はあまり意識できておらず、先生に報告しなくてもいいだろうと思っている傾向が強いようです。その後、患者さんとも話をして、診察時には症状について伝えるようにお願いしています。

坂場(OT)

大前(Ns)

素晴らしい!

救急医と消化器外科医のリーダーシップ

大前(Ns)

医療の現場は、医師がリーダーシップを求められやすいと思います。志賀先生は救急の場面で、多職種とのコミュニケーションで注意していることはありますか?

志賀(Dr)

そうですね。まずは「自分が疑っているのはこういうことで、自分がやりたいのはこういうことだ」とチームに宣言します。それからあなたはこれ、あなたはこれと役割分担。あとは、いい意味で緊迫感も出していくこともあります。命の危険がある患者さんに対しては、「絶対に助けるから、この目標に向かってみんなはベストを出してくれ、おれは本気でやるから、命をかけてるからついてこい!」と。自分の気持ちと、チームの目標とそれぞれの役割をはっきりさせることを意識しています。

大前(Ns)

めちゃくちゃリーダーシップとっていらっしゃるんですね!

ほっち(ME)

かっこいい…

正解がないなかで、はっきりと自分の考えと伝えてくれるリーダーは本当に素敵です。僕が関わる医師は「治療の半分は手術で、残り半分はリハビリ」と言っていて、手術にベストを尽くしていることがわかるので、必然的にリハビリもベストな治療が求められます。言葉にしてもらえると、自然と心と身体が動きますね。

須藤(OT)

志賀(Dr)

診療中のすべての時間に100%の緊張があるわけではないと思うんですよ。私の感覚としては、1日~数日に一度くらいは、ここで踏ん張らなくちゃいけない!という場面が来ます。そういうときに、「絶対に救うんだ!」という、メリハリをスタッフに見せるようにしていますね。

大前(Ns)

なるほど。たしかにICUでも看護師間で集中を高めないといけない場面でそのような役割を中堅やベテランの看護師が担うことはありますが、医師がそのスイッチを入れてくれるのは理想的な連携ですね! 中山先生はどうですか?

中山(Dr)

なるべくコミュニケーションをとる回数や、確実に伝えることが大事だと思っています。手術室だと、MEさんと看護師さんと助手さんがいるので、大事なことは繰り返し伝えるようにしています。例えば、電子カルテに書いて、さらに当日の朝に口頭で伝えて、手術室のホワイトボードにも書いておくなどです。人間なので忘れることもあるし、伝わらないこともあるというのを前提に、やっている感じですね。

私たちも忘れることもあるので、繰り返し伝える手段を用意していただけるのは大変助かります。一人にだけが伝えられて知るのではなく、複数の人が大事なことを共有できるのはいいことだと思います。

タサモ(ME)

大前(Ns)

志賀先生はこうした伝え方の工夫はされていますか?

志賀(Dr)

私も何度も情報共有するようにしていますね。『チームステップス(TeamSTEPPS)』という、医療安全や質の向上に関するチームワークプログラムがあるんです。例えば「輸血を持ってきて」と言うだけではなくて、「持ってきたら、輸血届きましたと叫べ」って、そこまでお願いします。

 

そうしないと、輸血が届いたのにわからないんですよね。あとは、個人的に言っているのは、「自分が何か間違っていたら指摘してくれ」ということです。研修医でも看護師でも、私が間違ってると指摘してくれて、「よく言った、また言ってくれ。君が意見してくれたことで助かる」と返すようにしています。なので、最近ではみんな冗談めかして「先生、チャックあいてるよ」とまで言ってくるようになりました(笑)。

大前(Ns)

あみさんいかがですか?

自分より絶対的に知識や技術が豊富な人、たとえば、医師などに指摘をするって「もし自分が間違ってたらどうしよう」と思ったりして結構心理的ハードルが高いですよね。『チームステップス』では状況を誤って判断している時には「2回チャレンジルール」というものがあって、繰り返し指摘したり、不安な事は不安だとためらわずに伝えたりする「CUS(カス)」というものがあります。けれど、そういうプログラムを知らなくても、志賀先生がやっているように普段から何でも言い合える関係性、雰囲気を作っておくというのは連携をとる際に双方とも心理的ハードルが低くなっていい思います!

あみ(Ns)

大前(Ns)

間違ってもお互いでしっかりカバーし合う…。そういう空気を作るのは、医療の現場ではすごく大事ですよね。ありがとうございました!

まとめ
お二人の現役医師より、普段コメディカルとどのように関わっているのか、また医師として連携の現場で医師として思うことを伺いました。チームとして動くとき、リーダーシップをとる立場になる医師。今回の座談会では、日々どのようなことを考えて行動しているかを知ることができたのではないでしょうか。後編では、『こんなコメディカルと働きたい!』というお話を聞きしたいと思います!

▼座談会協力

医師:志賀隆

Twitter:(@TakSugar:https://twitter.com/taksugar

ブログ等:http://takashi-shiga-md.hatenablog.com/about

著書:Dr.志賀&薬師寺のBOSS論 など

医師:中山祐次郎

Twitter:(@NakayamaYujiro:https://twitter.com/NakayamaYujiro

ブログ等:https://news.yahoo.co.jp/byline/nakayamayujiro/

著書:「医師の本音」「泣くな研修医」など

2020年3月に小説『泣くな研修医』続編が出版予定

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