病院と訪問の違いや魅力…そして多職種連携の実際とは!経験者に聞いてみた。

メディッコは、病院の多職種連携をテーマにした記事が多いです。しかし、病院以外の領域で働くメンバーもたくさんいるのです。

今回は、患者さん(利用者さん)のご自宅に行ってリハビリをする「訪問リハビリ」の世界で働く理学療法士と言語聴覚士で座談会をしてみました。訪問の実際や多職種連携のポイントを教えてもらいました!

参加者

 喜多:理学療法士(PT)
新卒からずっと病院勤務。訪問リハビリの経験はないが、何故か訪問リハビリの本を監修・執筆したことがある。

 たみお:理学療法士(PT)
理学療法士11年目。訪問リハビリは1年目のペーペー。病院と在宅でこうも患者さんの生活が違うものかと驚いている。

 みややん:言語聴覚士(ST)
言語聴覚士11年目。訪問分野に関わって7年目(え!と、本人が驚き)。いろいろな人の生活をチラリと見ては、自分の老後を考える。

経験者が語る!病院と訪問では世界が違う?

喜多(PT)

訪問の世界って、病院でリハビリするのと全然違うってことをよく聞くだけど、実際にどんなところで違いを感じる?

「病院は医療者のホーム」「家は患者さんのホーム」ということを、患者さんに言われたことがあります。「そんなことはないんだけど、確かに。」って思うこともありますね。患者さんの行動の自由度が増しているのが一番の違いですかね。

みややん(ST)

喜多(PT)

「患者さんのホーム」って具体的にどんなときに感じるの?場所が病院と家で違うってところ?

もちろん場所も違いますよね。あとは、患者さんが何に囲まれているか、とかね。「今日はこれを見せたくてね」とか奥からゴソゴソいろいろ出してきてくれる瞬間は嬉しいですよ。

みややん(ST)

喜多(PT)

なるほど~!平たい言葉になるけど「全部」がホームって雰囲気を出しているんだろうな。病院で働いていると、なかなかそういう機会はないもんね。

「家は患者さんのホーム」って言葉、すごくしっくりきました!住み慣れた生活空間の中で、患者さんの素が出るというか。「この患者さん家ではこんな感じなのか!」って思うことも多いですね。

たみお(PT)

喜多(PT)

例えば、どんなときに患者さんの素を感じるの?

病院でリハビリしているときは、すごく物静かで話もあまり続かなかった人が、家に帰って家族さんを交えて話するとすごく流暢に喋るようになったりとか。あと病院では強面でも家で飼っている犬に対してデレデレとか(笑)。

たみお(PT)

喜多(PT)

なるほど、全然違う姿が家では見れるんだね。たしかに僕自身も家の姿と家以外の姿って全然違うから、納得する(笑)。

誰でも多面性があるんだよな~って思いました。だから、在宅での本来の生き方にアプローチできる点で訪問リハビリはすごく魅力的だなと思います。

たみお(PT)

今だから思う!病院でのリハビリの在り方って?

喜多(PT)

訪問の世界に行くようになってから気付いたこととか、今だったら病院でこんなリハビリするな〜って思うことある?

私は正直、病院で勤務している時は患者さんが自宅でどんな生活をしていくのか…ってあまり想像できませんでした。機能訓練のことしか考えていなかったかも。今だったら、もっと家族も巻き込んで「家に戻るためのリハビリ」って広く考えられるような気がします。

みややん(ST)

喜多(PT)

STさんだったら、食事介助の方法とか家族が使いやすい会話のポイントを伝えたり…?

まさしく仰る通り。方法、ポイントは絶対です。ただ、家族の負担感まではあの頃考えられなかったなぁ…。

みややん(ST)

喜多(PT)

生活のなかで出来る介助や関りって、分かりやすくて楽で継続出来て…ってことが大切だもんね。病院で働いていると意識していても本当に実践出来ているのかは分からないから、そこらへんはいつまでも悩み続けるんだろうな~と思うよ。たみおさんはどう?

在宅で関わっていても悩むんですけど、自主訓練とかほんと続けてもらうのが大変だなって思います。わかりやすくて続けてもらえるものってなかなかないなと。病院でリハビリしている時にもいろいろな方法を指導していましたけど、当時実践していた方法じゃ続けてもらうの無理だなって今は反省しています。

たみお(PT)

喜多(PT)

今ならどんな工夫が出来るって思う?多職種で出来ることってあるかなぁ?

在宅だと訪問リハビリ以外にも訪問介護やデイサービスを利用していることがあるので、他の事業所の方に協力してもらうことで継続性は高くなるのかな~と思います。今、自主トレのメニューをシェアしてヘルパーさんに見守りしてもらっていて、継続出来ている利用者さんがいますね。

たみお(PT)

喜多(PT)

そう考えると、自主トレをしていることを多職種でシェアしておいて「どうですか?継続出来てますか?」なんて声かけが出来るだけでも変わってきそうだね。専門性がなくても、誰でも出来る…!

そうですね。それは病院でも出来る連携ですよね!

たみお(PT)

訪問では多職種連携どうしてる?

喜多(PT)

病院だと常にいろんな職種がいるんだけど、訪問だと基本的には一人だよね?他の職種と関わることってある?どんな風に関わってる??

そうそう、訪問自体はひとりですからね。ただ、医師や看護師に定期訪問してくれるので、同じ事業所内とか顔の見える関係の職種とは連携しやすいです。あとは、ヘルパーさんとか訪問歯科さんとかが多いです。関わる方法…私は気になったことは、ジャンジャン連絡しちゃいますね!SNSでの連携も最近は増えているけど、まだまだFAXもめっちゃ使いますよ!

みややん(ST)

喜多(PT)

やっぱりFAX使うんだ!同じ事業所じゃないと顔を合わすことって少ないと思うのだけど、やっぱり気は使う?連携するのって難しい?

いや~…FAXね…ほんっっっと使います(力説)。他事業所だと顔を合わす機会は少ないんですけど、「担当者会議」というカンファレンスの機会に会うことができます。会えない時は、まめに連絡したり。気は使いますけど…そうですねぇ。ケアマネさんのキャラを掴んで(細かく報告が欲しいケアマネさん、ある程度事後報告欲しいケアマネさん、自分も見にいきたい!って言ってくれるケアマネさん…)対応を変えています。他事業所だから特別連携しづらい、ということはあまりないですかね。

みややん(ST)

喜多(PT)

そうなんだ!みややんは上手にやってるんだろうな!たみおさんはどう?

一番関わりが多いのはやっぱりケアマネさんですね。それから、最近は福祉用具専門員さんともよく関わっています。在宅の手すりとか歩行器とか、合う合わないみたいなところをケアマネさんも含めてまめに連絡していますね。連携に使うツールは電話かFAX!!

たみお(PT)

喜多(PT)

やっぱりFAXは使うんだ!この業界からはFAXは永遠になくならなさそうだね(笑)。たみおさんが連携で気を付けているポイントとか教えて!

自分の考えだけ一方的に伝えない、ってところですかね。「自分の考えとしてはこうですけど、どう思いますか?」という風に相互に意見交換できるように話を進めています。

たみお(PT)

喜多(PT)

コミュニケーションの取り方は、病院でも訪問でも原則は同じなんだろうね!僕も病院では、たみおさんと同じようなことを気を付けているよ。

病院でも在宅でも、お互いに尊重しあえる関係性を作るのが連携のポイントですよね!

たみお(PT)

教えて!訪問の魅力とは!

喜多(PT)

ずばり…訪問の魅力を一言で教えてください!

その方の人生を知ることができた時、最期を一緒に迎えられた時、さまざまな瞬間に立ち会えた時に「あー、この仕事はやめられない」と思います。

みややん(ST)

利用者さんが家でどう過ごしていきたいかという、生き方に焦点を当ててアプローチできるところが、訪問の一番の魅力だなと思います。

たみお(PT)

喜多(PT)

ありがとう!訪問の世界…魅力的だ!

まとめ
今回は訪問リハビリの世界で働く理学療法士と言語聴覚士に話を聞いてみました。病院とは異なる実情と連携の形はあるけれども、連携の根っこにある考え方や気持ちは共通するところが多いようですね。是非とも病院から一歩外に出た働き方にも着目してみてくださいね。