【後編】現役医師二人と座談会!こんなコメディカルと働きたい!

現役医師をお迎えしてお送りする座談会の第二弾! 前回は、日頃どのようにコメディカルと関わっているのかを伺いました。今回は、普段なかなか聞けないコメディカルへの本音を引き出します…!

ゲスト

  • 中山裕次郎医師:消化器外科医
  • 志賀隆医師:救急医

 

メディッコメンバー

  • ほっち:臨床工学士。現在は医療を中心とするライター、編集者
  • 須藤:作業療法士。大学病院勤務
  • あみ:助産師。病院勤務の経験あり、現在は助産院勤務
  • ぽりまー:薬剤師。調剤薬局勤務の経験あり、現在はWEBメディア編集者
  • 坂場:作業療法士、精神科勤務、大学院の博士課程に進学中
  • タサモ:臨床工学技士。一般病棟勤務
  • かなこ:看護師。手術室勤務
  • 大前(鳥ボーイ):看護師。集中治療室勤務、元芸人

コメディカルが医師に対して意識していること

大前(Ns)

前編では、医師がコメディカルに対して意識している話をメインにお聞きしました。今回は、メディッコメンバーの話も聞きながら、こんなコメディカルと働いてみたいという話もできたら嬉しいです。まず、メディッコメンバーへ。医師に対してコミュニケーションで意識してることはありますか?

私は透析室で働いているので、特に医師と話をすることが多いです。例えば、「あの○○さん(患者名)のことですが……」と医師に伝えても、すぐに思い出せないことがあります。そこで、「シティーハンターに出てくる海坊主みたいな患者さんです」と補足するとスムーズに伝わることがあります。これも1つのコミュニケーションかなと思っているんですけど…、どうでしょうか。

タサモ(ME)

おもしろいですね! 私が過去に働いていた調剤薬局では、医師とのやり取りはほとんどが電話でした。当時、薬剤師になりたてでしたが、医師からすると1年目だろうがベテランだろうが1人の薬剤師なので、ひと通り答えられるように心掛けていました。また、必要なことは端的に伝えるのを意識していましたね。医師は忙しいなかで電話をしてくれていたと思うので…。あとは、基本的なことですが、最初にちゃんと名乗ることも大事ですね。

ぽりま(Ph)

大前(Ns)

なるほど。顔が見えない分だけ、コミュニケーションを図る工夫が必要ということですね。あみさんはどうですか。

前編でも話が出ましたが、私が前に働いていたところでは、チームステップスを活用していました。週1回程度、助産師主体で医師も交えながらシミュレーションのようなことをやっていました。回数を重ねるごとにコミュニケーションがスムーズになっていき、実際に患者さんへ対応するときにも生かせるようになった経験があります。何回も練習をしたので、反射的にできることも増えましたね。

あみ(Ns)

大前(Ns)

そうですね。常々チームで練習しておくのは大事ですね。すまさんはどうですか。

僕は作業療法士で、週に1回の回診や医師との勉強会があるので、そういうときに聞きたいことはまとめて聞くようにしています。よく、相手の職種がやっていることにまず興味をもつことが大事だと聞きますね。例えば、医師が手術でやっている切開の仕方について、ちょっとマニアックなところではあるんですけど、興味を持って調べたり、尋ねたりしてみると、役に立つこともあって。そのおかげで、医師の行動などもある程度予測できるようになりました。

須藤(OT)

志賀(Dr)

それは最高ですね…!

相手に興味を持ってもらう前に、こちらから興味を持って関わっていったほうが、連携がうまくいくように感じています。

須藤(OT)

大前(Ns)

たしかに、相手の領域のことを知りたいというスタンスでいたほうが、信頼関係も築きやすいですよね。かなこさんは手術室でいろんな医師とコミュニケーションとらないといけないから、大変じゃないですか?

いまの職場は規模が小さいので、それほどコミュニケーションに困ってはいませんが、正直やりにくい医師はいます。関わっている回数も影響すると感じますが。私も、こちらからコミュニケーションをとりにいくようには意識しています。普段からコミュニケーションをとれている医師であれば、些細なことでも聞けますが、そうでない医師の場合には、後々知らなかったと面倒なことになるかもしれないので……。

かなこ(Ns)

大前(Ns)

めっちゃわかります(笑)。

医師がコミュニケーションをとりづらいと思うとき

大前(Ns)

医師でも、この人は話しづらいな~とかあるんですか?

志賀(Dr)

怒っている人とかは話しかけづらいですよね~。言語的に怒っていなくても、非言語的に怒っていると感じた場合は、その怒りが爆発しないように気を付けています。なかなか感情の起伏が激しい人は性格変わらないと思うんですけど、その場だけでもうまくいくように盛り立てながらやっています。

大前(Ns)

いろんなところに気を付けてるんですね。

志賀(Dr)

そうですね、やっぱりチームワークができていないと患者さんに影響が出るので。それは悲しいわけですよ…。自分は後悔したくないので。正直なところ、何年かに1回はこの人救えたんじゃないかという人に出会うんです。そのときの悲しみが深いので、自分以外のチームメンバーも、日頃からいいコンディションにしていきたいなと思っていますね。

大前(Ns)

なるほど。たしかに、チーム全体のコンディションを整えておくのはすごく大事だなと思いました。中山先生はどうですか?

中山(Dr)

私はちょっとやり方がウエットかもしれないですが…、オフの会話がない人とはなんとなくやりづらいと思う、昭和タイプの人間なんです。仕事柄、緊急で無理をお願いしなきゃいけない場面も多いじゃないですか。例えば、緊急の手術が必要になったときには、5、6箇所に電話したり、頭下げたりしないといけないので。普段から人間関係を作っておけば、「まぁまぁ、あいつが言うならしゃーねーか」という感じでやらせてもらっています。今のところは、働いてまだ一年半くらいなので、まだその途中段階ですね。

大前(Ns)

なるほど! 田中〇栄みたいな仕事の仕方してますね(笑)。

中山(Dr)

(笑)

大前(Ns)

でも、外科の先生ってひとくくりにするとあれですけど、飲み会が好きな理由ってそういうところもあるんでしょうか。

中山(Dr)

いや~、ただ飲みたいだけですよ(笑)。

大前(Ns)

でも、オフのコミュニケーションで仕事が円滑に進むっていうのはわかります!

コミュニケーションでお手本にしたこと

大前(Ns)

ちなみに、お二人はすごく上手にコミュニケーションを取っている印象ですが、例えば先輩がこうやってたのを見て参考にしたとか、教えられたとかのエピソードはありますか?

中山(Dr)

私の場合はそうでもなかったですね。元々、自分は感情の起伏が激しいほうで。「雨の日はもうダメ…」となることが多いので、ざっくり人間関係を作っておいて、「あいつがいうならしゃーない」という関係性を狙っていくしかなかったんです。例えば、後輩にご馳走したり、年上の看護師さんとずいぶん飲み行った記憶があります。そういう関係性づくりを、独自で切り開いていきましたね。

大前(Ns)

自分がダメだとしても、許してもらえるような関係性づくりでしょうか。

中山(Dr)

自分という人間がダメだって知ってもらうことで何とかなると思ったんですよね。

大前(Ns)

めちゃくちゃ参考になります。志賀先生はいかがですか?

志賀(Dr)

しいて言うと、みんなにいじめられながらも1人で10年もの間、救急をやっていた医師がいるんです。その地域の救急医をゼロから作った人。彼と話すと、いろいろわかることがあるんですよね。

大前(Ns)

その医師とはどのような出会いだったんですか?

志賀(Dr)

私が研修医2年目の頃。その医師とお会いしたくて大学に電話をかけたんです。そうしたら、初めて話したにも関わらず、「ごはんおごってあげるよ」って言われて、「なんだこのジジイ」と驚いた記憶があります(笑)。この医師のように、成功している人って、どこか人たらしというか、自分ひとりではできないことにうまく周りを巻き込めるパワーがあるんですよね。なので、自分もそのようになりたいなとは思っています。

大前(Ns)

お二人ともすごいですね。ちゃんと自分の特徴を掴んだ、人へのアプローチの仕方をしているところがさすがやなと感じます。

コメディカルが距離を作ってしまっている?

大前(Ns)

坂場さんは、コメディカルとしてこうした医師のコミュニケーションのあり方についてどう考えていますか?

僕は精神科の作業療法士なのであまり医師と関わる機会が少ない現状です。でも、実際は医師に対して「こんなこと言っちゃっていいのかな」みたいに悩むことも多くて…。こういう医師が一人でもいたら、些細なことでも報告しやすいんだろうなと思いながら聞いていました。

坂場(OT)

大前(Ns)

なかなかこういうスタンスでいてくれる医師はいないですよね。須藤さんはいかがですか。

医師がいい雰囲気を作ってくれる現場は多くないと思うんですけど …。話しにくい雰囲気を、医師ではなくてコメディカルのほうが作ってしまっている現場もあるんじゃないかと感じています。

須藤(OT)

大前(Ns)

ほう、具体的に言うと?

場所によると思いますが、先輩から「医師にそんなこと聞くな」と止められちゃうんですよね。

須藤(OT)

大前(Ns)

なるほど。医師が「聞いてくるな」ってパターンの反対ですね。私たちも自分たちが作ってしまっている壁を崩さないといけないとか、変な壁を作らないでいきたいと思いました。

お二人は、普段からコメディカルのことを考えているでしょうし、先生側からコメディカル側に働きかけをしてくれているんだと感じました。

ほっち(ME)

中山(Dr)

今日は正直なところ、きれいごとが多かったかもしれないですね(笑)。

志賀(Dr)

私もキレちゃうことはありますよ。でも、キレた後に謝っています。「さっきはごめ~ん~~。オラオラしちゃったよね~~」って。

大前(Ns)

人間ですもんね……(笑)。その「ごめん」があるだけでも全然違うと思います。

コメディカルに求めるもの

大前(Ns)

お二人はいろんな職種への関わり方を意識してくださってると思いますが、連携をする上でコメディカルに求めるものをお聞きできますか?

志賀(Dr)

私からは3つですね。

  1. 向上心
  2. アンガーマネジメント
  3. 患者さんへの思い

中山(Dr)

私は仕事以外の話でも、どんどん医師に話しかけてほしいですね。今、39歳なんですけど、この歳の男性だと若手に声をかけるだけでも、セクハラかパワハラに受け取られることがあるんですよ。気安く「どうなの、最近?」って聞けなくなってしまったので…。

(笑)

ほっち(ME)

志賀(Dr)

めっちゃわかる!ほんとわかる!!

中山(Dr)

それで、最近は若いスタッフと積極的に話ができなくなっちゃいましたね。看護師さんと飲みに行くこともほとんどなくなりました。もし行くとしても、若い研修医を連れて行きます。なので、僕とか僕以上の年齢の医師は、仕事以外の話ができる機会はありがたいんじゃないかと思います。コミュニケーションという意味で。最近はそのように感じます。

なるほど。じゃあ、コメディカル側から「ねぇねぇ、先生〜」って言われたほうがいいんですか?

ほっち(ME)

中山(Dr)

そうなんです。苗字変わったなとか、髪切ったなとか気付くんですが、本人には言えないので、あとでおじさん同士で言うんです。正直いって気持ち悪いですけど、それが現状です(泣)。

大前(Ns)

では、先生はいつも話しかけていいよオーラを出してくださっているんですよね?

中山(Dr)

いや、正直出せていないと思います…。私は毎日ネクタイして、白衣を着ていて早歩きだし…。まだ、答えは出せていないんですよ。悩んでいるところです。

大前(Ns)

ハラスメント系は特に厳しくなっていますもんね。お二人はメディッコの座談会にふらっと顔を出していただけるくらい、コミュニケーションに長けていて、勉強になるお話をたくさん聞けました。本当にありがとうございます。

普段メディッコでは、主にコメディカル同士で座談会をしているので、今回のように先生たちのお話を聞ける機会は貴重で、素敵なお話をたくさん聞けました。例えば、明日からもうちょっと先生に話しかけてみようとか、ありがとうの回数を増やしてみようとか、すぐに実践できることばかりでしたね。先ほど志賀先生がおっしゃっていたアンガーマネジメントもそう。緊急度の高い場面などでは、どうしてもカッとなってしまうときがありますよね。そんなとき、一度深呼吸して気持ちを落ち着かせることができれば、よりチームで同じ目的に向かって頑張れるのではないかと思いました。これ、家庭でも実践できそう…!先生方、今回は貴重なお話をありがとうございました!

ほっち(ME)

志賀(Dr)

アンガーマネジメントは家庭でも役立ちますよ!(笑)ありがとうございました!

中山(Dr)

こちらこそありがとうございました!

先生方、ありがとうございました!!

ほっち(ME)

まとめ
二回にわたって現役医師二人よりコメディカルとの連携方法、心構え、コメディカルに求めていることなどをお聞きしました。現場では腹を割って話すのは難しいこともあります。しかし、本座談会では医師とコメディカルが思いの丈を伝え、そして、受け止めてもらえることでお互いに歩み寄るきっかけができました。実際の現場でも今回の座談会から得たヒントを元に、医師とコメディカルのコミュニケーションに生かしていただければ幸いです。

▼座談会協力

医師:志賀隆

Twitter:(@TakSugar:https://twitter.com/taksugar

ブログ等:http://takashi-shiga-md.hatenablog.com/about

著書:Dr.志賀&薬師寺のBOSS論 など

医師:中山祐次郎

Twitter:(@NakayamaYujiro:https://twitter.com/NakayamaYujiro

ブログ等:https://news.yahoo.co.jp/byline/nakayamayujiro/

著書:「医師の本音」「泣くな研修医」など

2020年3月に小説『泣くな研修医』続編が出版予定