呼吸器疾患を有する患者さんで痰の量が多い方を担当し、「なんか痰があるなー」と思うことありますよね。そこで、とりあえず吸引してみたけど、「なんかごろつきがとれないな」という時はありませんか?そんなときは、ポイントが分かれば誰でもできる“呼吸理学療法”がお勧めです!
適切にアセスメントすることで、スッキリ解決することができます!これであなたも排痰マスター!?
呼吸理学療法って?
呼吸理学療法とは、かつては“肺理学療法”と呼ばれ、肺結核の患者さんを対象とした術前術後の呼吸法、排痰法、肺機能回復法、胸郭変形の防止等を目的とするものでした。近年は手術前後の呼吸器合併症予防や慢性閉塞性肺疾患患者の呼吸法、排痰、呼吸筋のストレッチなど、実施する内容も幅広くなってきている注目の領域です。
今回はこの呼吸理学療法の中でも、多職種で実施できる“排痰”にフォーカスを当ててみたいと思います!
排痰のアセスメント
排痰法は様々な方法や機器がありますが、一番重要なのはアセスメントです。
ポイントは①聴く、②触れる、③視るです。
①聴く
聴くとは“聴診”のことです。最も聴き逃してはいけない呼吸音が “気管支呼吸音化”です。
正常な呼吸音を図1にまとめました。本来聴取できる音が部位によって違います。肺胞呼吸音が聞こえるべき部位で”気管支呼吸音”が聞こえる時は,その聴取部位の肺胞が虚脱(つぶれてしまっている)している可能性があるため,換気を改善するためにアプローチが必要です。
もし肺胞呼吸音が聴こえるべきところで、気管支呼吸音が聴こえたら、それは対処すべきポイントだと認識しましょう。
②触れる
触れるとは“触診”のことです。胸郭は肺の動きに合わせて動いています。例えば、右肺の無気肺(肺の一部または全体が、気管支の閉塞などによりつぶれてしまった状態)が出現した際には、左に比べて右胸郭の吸気時の上りが悪かったりします。そっと左右の胸郭に手を当てて動きを確認してみましょう。
③視る
視るとは“視診”のことです。触診同様に胸郭の動きや呼吸補助筋(頸部や肩甲骨周囲の筋肉で呼吸努力が強いときに働く筋肉)の活動などを視覚的にとらえることで、アセスメントするための情報量が増え、より強い根拠をもつことができます。また胸部レントゲン所見も確認することで、より正確に病変部位をとらえることができます。
実践!呼吸理学療法!
アセスメントができたら、基本的な排痰法を実践します。
①体位ドレナージ
体位を整え、重力によって痰をドレナージする方法です。
上記のアセスメントでとらえた痰の貯留部位が、頂点になるような体位に整えます。体位ドレナージを行う際には、ドレーンや褥瘡、医療機器の位置、体位をとる上での関節の動きなど、患者さんの状態によって保持できる体位が異なってきます。そのため看護師や臨床工学士、理学療法士などの多職種がお互いの視点でのアセスメントを持ち寄り、適切な体位を決める連携が図れる非常によいポイントです!
②呼吸介助法
患者さんの呼吸に合わせて、胸郭の動きを介助し、換気を増大させて排痰を促します。多少の技量が求められますので、実践できる理学療法士などと練習してから望むとよいと思います。
①と②の排痰法は、マヨネーズを出すようなイメージでとらえると良いでしょう!
また、①や②については、実践前・中・後の変化を評価してとらえることが重要です。ぜひ多職種でアセスメントして、呼吸理学療法による排痰を実践してみてください!
まとめ
排痰は様々なアプローチがありますが、呼吸理学療法はアセスメントすることで職種に関わらず誰でも行うことができます。排痰でお困りの際には、ぜひ理学療法士にお声かけください!