臨床工学技士(CE:Clinical Engineer、以下、CE) は、院内の医療機器を安全に使用するために、日々、保守点検と管理を行っています。医療機器の専門家であるがゆえに、驚くような機械の修理依頼がくることも。何でも屋さんと思われがちなCEの仕事。今回は他職種を迎えてCEの仕事を解説。本座談会で理解を深めましょう。
参加者
かなこ(Ns)
手術室勤務の看護師。CEさんにはお世話になりっぱなし。
さぼ(CE)
透析クリニックの臨床工学技士。ブロガー。
久原(ME)
:総合病院で勤務する臨床工学技士。医療機器に関するトラブルは色々と経験している。
イサミ(Ph)
病院薬剤師。CEさんに変な修理依頼をしたことはないと身の潔白を主張。
ぶっちゃけCEは院内でどんなことをしているの?
イサミ(Ph)
実は僕、CEとの関わりはそれほど多くなくて…。オペ室で看護師をしているかなこさんはどうですか?
私はCEとの関わりは多いですね!手術機器関係でトラブルがあったら、とりあえずCEに連絡が鉄板です!ほかにもネジが外れたときとか(笑)。
かなこ(Ns)
「ネジ外れた! 」はあるあるです。あとは、「椅子のキャスターが壊れた! 」って修理依頼もありますね。
さぼ(ME)
さすがに私は「椅子が壊れた! 」で呼んだことはないよ!!
かなこ(Ns)
久原(ME)
医療機器のネジや電源コンセントのトラブルなら、まだいいですよ。僕がよく困るのは、手術記録に使用するビデオカメラの修理ですね。ほとんどの場合メーカーに頼みます。
まあ、手術室は医療機器の宝庫なので、CEにお願いする気持ちもわかる気がしますが(笑)。
そういえば、手術記録用ビデオカメラの画面にエラーメッセージが出たときは、「これどうやって消したらいいですか?」って聞いたことがありました(笑)。
かなこ(Ns)
イサミ(Ph)
なるほど。医療機器だけではなく、機械全般の修理依頼がくるんですね(笑)。
CEの仕事は医療機器の修理?
イサミ(Ph)
実際、医療機器の修理は得意なんですか?そもそも、CEの仕事に修理は含まれているんですか?
久原(ME)
正確には『修理』というよりも『保守点検』や『管理』に当たります。修理が必要な場合は、メーカーに依頼することがほとんどです。クラスの高い生命維持管理装置などは、とくにですね。
イサミ(Ph)
久原(ME)
人工呼吸器は『始業前点検』『定期点検』『部品交換』をCEが行います。日々点検や管理をしていますが、何年かに一度はメーカーのオーバーホールを必要としますね。人工心肺装置はほぼメーカーに委託しています。
オーバーホールって聞いたことないなぁ! 修理みたいな感じ?
かなこ(Ns)
間違われやすいのですが、オーバーホールと修理は異なります。「消耗品の交換」なんて呼ばれることもありますね。CEは基本的に『修理』はしていなくて、『点検』『管理』『オーバーホール』の3つが主な仕事です。
さぼ(ME)
久原(ME)
そうなんです。
医療機器は精密機械なので、『点検』『管理』が基本です。修理の必要があったときに
定められた期間内であれば、部品交換を行うことでメーカーが安全を保証してくれています。
いつ壊れてもおかしくない医療機器なんて嫌でしょ? だからCEは、定められた期間通りに部品交換を行って、医療機器を管理していくんです。もちろん、それだけでは心配なので使用前後の簡易的な点検もしています。
イサミ(Ph)
なるほど。『部品交換』と『修理』を混同してたかも!
臨床工学技士業務指針では『修理』に対して明記されています。
さぼ(ME)
参考
7.修理対応
特定保守管理医療機器の修理は、故障が発生した年月日、時間、修理を依頼した年月日時間及び
担当者名、連絡先を記録し、修理が完了した後は当該医療機器への表示の確認をする。なお、院内
の臨床工学技士が行った修理、試験等に関する記録は以下の薬事法を参考に行う。
医療機器管理業務指針(日本臨床工学技士会)
イサミ(Ph)
おお! 『修理』に関して、しっかり明記されてるんですね!
修理の不備があった場合に患者さんの健康を害する可能性のある医療機器はとくに慎重になりますね。けど、椅子とか医療機器じゃない修理はできる範囲でやります(笑)。
さぼ(ME)
医療機器の修理をするには研修が必要!
久原(ME)
実は、臨床工学技士であっても特別な研修を受けていないと医療機器内部の修理を許されていない場合が多いんですよ。生命に関わる機械なので、間違った修理や改造をしてしまうと大変なことになりますからね。
イサミ(Ph)
特別な研修! 先ほどの業務指針にも書いてますね。技士になったあとで、個別に研修を受けないといけないんですか?
透析装置に関してはメーカーによりますね。泊まり込みでの研修もあります!
さぼ(ME)
久原(ME)
人工呼吸器の研修もあります。研修によってはメーカーが病院に来てくれることもありますよ。
点検・管理だけじゃない、CEの働き方
イサミ(Ph)
余談なんですけど…。先日、呼吸苦で搬送された患者さんに、挿管と人工呼吸器とどっちがいいかみたいなディスカッションを医師とCEで交わしていて、「まじかっこいい! 」と思いました。
久原(ME)
くはらさんは心肺とか救急対応もやるんで花形ですよねー()。
さぼ(ME)
久原(ME)
看護師業界だと、救急は「なんかかっこいい! 」ってイメージですが、CE業界でもそういうのってあるんですか?
かなこ(Ns)
久原(ME)
そうだねぇ~。「まかせな! 俺達が助けるぜっ! 」って感じかなぁ(笑)。
さぼ(ME)
久原(ME)
いや、冗談よ(笑)。どの分野でも本気になってる人はカッコいいよ!
まとめ
奥が深いCE の仕事。普段一緒に仕事をしている他職種でも、初めて知ることもあったのではないでしょうか。院内の医療機器を安全に使用できるのは、日々、保守点検と管理を行っているCEがいるから。医療機器の扱いはスペシャリストですが、備品の扱いは…。院内備品の修理依頼もほどほどに。