【前編】障害児支援の現場ってどんなところ?医療職の働き方について聞いてみた

厚生労働省の資料によると、障害児支援の利用児童数は増加傾向であり、受け皿である事業所数も増加しています。一方で、障害児支援分野での医療職はまだまだ不足しているという現状があり、医療職のニーズが高まっています。今回は、障害児支援分野で働く作業療法士(以下OT)のY田さんをお招きして、障害児支援分野で医療職がどのように働いているかを話し合いました。

参加者

 Y田(OT)
放課後等デイサービスで勤務している作業療法士。回復期病棟や訪問看護、作業所、総合事業の経験あり。初めての座談会に緊張している。

 たみお(PT)
慢性期病院に勤める理学療法士。障害児支援の分野はまったく経験がなく、どんな場所なのか興味を持っている。

 大平(PT)
施設に勤める理学療法士。放課後デイサービスで実際に勤務経験(アルバイト)あり。

 白石(Ns)
看護師兼ライター。肢体不自由児施設や特別支援学校、障害児保育園などの勤務経験(単発派遣含む)あり。

障害児支援の事業形態はさまざま

たみお(PT)

今回は、放課後等デイサービスで働いているY田さんを交えて、障害児支援での医療職の働き方について話し合いたいと思います。まずY田さんが、どのような職場で働いているか教えてもらってもいいですか?

Y田(OT)

僕は放課後等デイサービスと児童発達支援、保育所等訪問支援の3つに関わっています。以前メディッコさんの放課後等デイサービスについてのコラムを読ませていただきました。

Y田(OT)

簡単にいうと、小学生以降の子は放課後等デイサービス、0歳から小学校入学前までの子が児童発達支援という分け方になります。また、保育所等訪問支援は、実際に通っている保育所や小学校、学童保育等の現場にスタッフが訪問して、通所サービスで行われている支援が実際の現場で活きているか、集団場面でどのように過ごすかなどを先生と確認し、支援の検討を行っています。

たみお(PT)

幅広い年齢の子どもたちと関わっているんですね。白石さんは障害児支援の領域に関わったことがあるんですよね?

私は、リハビリテーション病院の中の肢体不自由児施設にいたことがあるので関わったことがあります。対象年齢は0歳~18歳までですね。病院のすぐ隣に特別支援学校があったので、そこに通いながら子どもたちは生活をしていました。他にも障害児保育園で働いたこともあります。

白石(Ns)

たみお(PT)

いろんな事業形態があるんですね。

Y田さんのところのイメージが湧かないので教えてほしいのですが、施設形態としては1つの場所に3つの事業所があるんですか?

白石(Ns)

Y田(OT)

そうです。うちの場合は、放課後等デイサービス・児童発達支援に関しては、事業所に来てもらって1時間療育する形でやっています。

そのように複数の事業をしているところって結構ありますか?

白石(Ns)

Y田(OT)

そうですね。午前中が児童発達支援、午後から放課後等デイサービスというように分けている事業所もあります。というのも、放課後等デイサービスは対象が小学生以上なので、平日は放課後に関わるため、活動できるのが昼からになることが多いんです。

なるほど。

白石(Ns)

Y田(OT)

なので、時間の空いている午前中に、児童発達支援をやっているところもあります。社会的な役割として居場所づくりの意味合いもあるので、子どもが長く過ごせる場所を提供することを目的とした事業所もある印象ですね。

障害児支援では、どのようなアプローチをしているの?

たみお(PT)

では、Y田さんのところの業務内容についてもう少し詳しく聞かせてください。1時間の療育の中で、子どもたちとどのような関わり方をしているんですか?

Y田(OT)

うちの場合は1時間の中で、その子が苦手なことや伸ばしていきたいことに、スタッフがマンツーマンでアプローチするようにしています。1日1時間ずつ3クラスあるんですが、その中にいろんな年齢の子がいて、3歳と15歳の子が一緒のクラスになったりするんです。

たみお(PT)

1クラスに何人いるんですか?

Y田(OT)

3人ですね。クラス分けは児童が来れるタイミングで考えています。30分は3人でトランポリンなどの粗大運動を通じた集団アプローチをして、あとの30分で個別の課題に対してアプローチを行うことが多いです。

たみお(PT)

個別アプローチは具体的にどんなことをするんですか?

Y田(OT)

個別の課題として、手先を使った作業やコミュニケーションの訓練、リーチ動作や道具を使った作業訓練などをしています。最終は個別訓練になるので、違う年齢が集まっても大きく問題はないですね。

なるほどー。

大平(PT)

たみお(PT)

ということは、集団リハビリ中にも子ども1人ひとりに療法士がついている状況ということですか。

Y田(OT)

そうですね。その日の出勤者の状況によってはついていることもあります。うちの場合は、最初の母体が訪問看護だったので、今スタッフが9人いますが、その内訳は療法士、保育士、教員免許を持っている者になっています。

へぇ! 看護師はいないんですか?

白石(Ns)

Y田(OT)

今はいないですね。放課後等デイサービスで医療型の場合では、医療行為が必要になるので看護師が必要になると思いますが、うちは医療行為は行っていないため看護師はいないですね。また制度的にも事業所に必須なわけではないんです。

たみお(PT)

大平さんがアルバイトしていたところはどうでしたか?

のところは、教師やスポーツインストラクター、ソーシャルワーカーがいて、個別のアプローチではなく、集団の遊びの中でアプローチをしていました。

大平(PT)

たみお(PT)

どんなアプローチをしていましたか?

事業所が体育館を持っていたのでそこを使って遊んだり、週1回は県のスポーツインストラクターの方がきて本格的な集団体操をしていました。他にも週1回は水泳も行っていました。

大平(PT)

たみお(PT)

結構本格的なスポーツが多いですね!事業所によって、働く職種やアプローチ方法も全然違うんですね。

障害児支援分野で働くことになったきっかけは?

障害児支援の分野に興味を持つ人は多いと思うんですが、Y田さんや周りの方は、元々どんな領域で経験を積まれた方が多いですか?

白石(Ns)

Y田(OT)

うちは事業所が立ち上がった時に、発達領域の病院に7年間勤務していた療法士が1人いて、それ以外の療法士は高齢者が対象の領域で働いていたスタッフばかりでした。保育士も一般の保育園で働いていたし、当時務めていた看護師も高齢者領域でした。なので発達の分野で関わってきた職員は1人だけでしたね。

なぜ、高齢者領域の人が発達や小児の分野で働くことになったんでしょうか。そのきっかけって何かありますか?

白石(Ns)

Y田(OT)

僕の経緯としては、法人内で職員の退職を機に、誰かが行かないと人員体制の基準を満たせないということになり、今の施設に入る形になりました。

たみお(PT)

ほーほー、なるほど(笑)。

それは自分で手をあげたんですか?

白石(Ns)

Y田(OT)

元々施設のお手伝いをしていたのもあって。その時は訪問看護で働いていたんですが、僕は総合事業に関わる機会もあったので、担当患者が少なかったんです。他の人は訪問看護で担当患者が多かったので、その中で動けるのは誰だみたいになって…(笑)。

なるほど。

大平(PT)

Y田(OT)

ちょうど僕も、総合事業が終わったタイミングと重なりましたね。僕自身、子どもと関わるようになるとは思っていなかったです。

そうすると、自分の意図しない形で転職するようになったわけじゃないですか。実際に働いてみて、OTとしていい意味でも悪い意味でもギャップがあったと思うんですが、そのあたりを教えてください。

白石(Ns)

Y田(OT)

ポジティブなギャップは、アプローチを考える上での基本的な部分は、高齢者も子どもも大きく変わらなかったことですね。

というと?

白石(Ns)

Y田(OT)

例えば、OTとして作業の獲得に必要な道具を作ったりもしますが、考え方は高齢者領域と差はないです。対象が違うことで戸惑いは感じますけど、回復期でやってきた知識を活かせているので、意外とやれることがあるなと思えたのが一番良いギャップでした。

なるほど。OTとして病院時代に得た経験が活かせた場面が多かったんですね。

白石(Ns)

Y田(OT)

ネガティブなギャップは、対象が子どもになったことで、今までの高齢者への伝え方が通用しないことですね。高齢者だと説明すれば動いてくれたんですが、子どもは理屈では動いてくれないので大変でした。

対象が変わってしまったことで、新しい関わり方が必要になったんですね。

白石(Ns)

Y田(OT)

そうなんです。なのでこちらが道具を選ぶのではなく、子どもが選ぶ道具に合わせてアプローチを変えるという方法にシフトチェンジして、楽しみを感じてもらえるように意識しました。あとは、発達に関する知識が必要になってくるので、同じ年齢のころの自分とも照らし合わせながらやっています。今しているアプローチの難易度が高すぎるのでは?と悩むことが多いですね。

子どもによって年齢だけでなく、発達段階まで考慮した評価とアプローチを行うのは大変そうですね。

大平(PT)

Y田(OT)

よくあるのは、対象となる子どもの年齢と発達段階が一致しないということです。発達がでこぼこな子たちなので、対象となる子どもの発達段階を見誤らないことと、その子に合わせたアプローチを提供するように心掛けていますね。

まとめ

今回は、障害児支援領域で働くOTのY田さんを交えて、どのような働き方をしているのかを伺いました。同じ障害児支援でも、そこで働く職種や事業形態はさまざまということでした。また、アプローチを考える上での基本的な部分は、高齢者も子どもも変わらないという言葉が印象的でした。次回は、医療職以外の職種との関わり方について話し合った内容をお送りします。そちらもご期待ください!

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