これから社会人になるあなたへ、先輩STからのメッセージ

私には愛してやまない妹がいます。
妹「私、春で社会人7年目だよ。びっくり!」
私「えー!すごいね、よく頑張ってるね〜」
妹「お姉ちゃんは何年になるの?」
私「私?…12年目…わぉー…」

うかうかしていたら、そろそろ同じ干支の子が入ってくる学年になりつつあります。そう、いつも大切なことは妹が教えてくれます。妹よ、ありがとう。

4月から社会人としてデビューする皆さんへ

さて、今日はそんな私から、4月から社会人としてデビューする言語聴覚士(以下、ST)の皆さんへ、私が大切にしていることや考えていることをお伝えしたいと思います。もしかしたら、違う職種の新社会人や新人を迎える先輩方にも、 通じることがあるかもしれません。自分の状況に置き換えながら読んでもらえると嬉しいです。

まずは、学生生活最後の1年、そして今もなお、いろいろな物事が自由に進まない中ではありますが、社会人デビューおめでとうございます!

「国家試験の後にパーっとみんなで飲み会がしたかった」「卒業旅行で海外に行きたかった」などと、いろいろな思いがあるかもしれません。たしかに、今しかできないこともあるけれど、大丈夫! 社会人になってからでも海外旅行はできるし(場合によっては豪遊できる)、飲みにも行けますよ(場合によっては信じられないほどのおいしいものに出会える、そして奢ってもらえたらラッキー!)。

まだまだ楽しいことが待っているので、まずは「こんにちは!社会人のわたし!」「お待たせ!STのわたし!」って、楽しみな気持ちを持っていてほしいです。

ここからは、私がSTとして大切にしていることを3つお話します。

①「何を話すか」ではなく、「何を聞くか」を考えよう

特に新人さんにありがちなのですが、「自分がしゃべらなきゃ!」と気負わなくていいんです。患者さんと二人きり、シーンとした空気を「気まずい!」と感じることってありますよね。だから自分がたくさん話して、「場をつなごう」としちゃいがち。でもね、いいんです。ちなみに私は、あまり積極的にしゃべる方ではありませんが、患者さんと過ごす中で「静かで気まずい」と言われたことはありませんよ。

もちろん、「この話題をあの患者さんに話そう!」って思うのはとっても大切ですが、自分がしゃべるばかりでなく、患者さんの言葉をどんどん引き出すような質問をしてみましょう。

でも初対面で、出身は?ご家族は?お孫さんは?趣味は?やりたいことは?と矢継ぎ早な質問はNGです。「どう聞かれたら答えやすいかな?」と、あくまでも自分に置き換えて、少しずつ少しずつ相手(患者さん)のことを知っていきましょう。

②STは俳優であれ!

これは学生時代に聞いた、忘れられない言葉のひとつです。たとえば、農家のおばあちゃんと大きな会社の社長さんが患者さんでいらっしゃったとして。どちらにも分け隔てなく丁寧に対応するのは当然ですが、「相手に合わせる(ように演じる)」能力は大切です。論理的に、まずは方針を伝えた方がいいのか、それとも明るく励ましながら、一緒にリハビリを行うのがいいのか…などなど。

患者さんが抱えている疾患や社会的背景だけでなく、個々人でキャラクターもいろいろ。こちらとしても、ひとりひとりに合わせたキャラクターになり分けられるようになると、「いろんな自分になれて楽しい!」なんて思ったりもします。

③自分から孤独な世界へ飛び込むな!

STはリハ職の中でも、理学療法士(PT)と作業療法士(OT)とはリハビリをする場所(物理的な空間と専門部分)が違ったり、お互いの専門用語がわからなかったり、シフト編成まで違います。たとえばお昼時、お腹をぐーぐー鳴らしながら嚥下評価・訓練をしていると、PTとOTがお昼ご飯を食べ終えて病棟に上がってくるとか、お腹ペコペコでリハ室に戻ると、ベッドでぐーぐー寝ているスタッフがいたりとか…。「私だって寝たいのに!」と時にはイラっとしてしまうこともあります。

しかし、私たちの最大の敵は、(空腹ではなく)誤嚥性肺炎だということを忘れてはいけません。この先、自分の担当患者さんが誤嚥性肺炎になって食事を止められたり、入院・転院したりすることもあるでしょう。そんな時、もっと私が勉強していれば、もっと能力があれば、もっと考えてあげられていれば…と自分を責め兼ねません。

だからといって、みんなと使う専門用語が違うから、休憩時間が違うから…と他職種を引き合いに出して、自分からどんどん孤立していかないこと。あなたが経験していることは、きっと周りのSTも経験しています。あなただけではありません。

先輩や上司はいつも忙しそうかもしれません。その場では時間が取れないかもしれないけれど、不安な気持ちを抱えている時は「今度時間をください」って勇気を出して言ってみましょう

1番覚えておいてほしいこと

いろいろお伝えしましたが、1番覚えておいてほしいのは、あなたがSTとして仕事を続けていくことで、何人もの患者さんが救われるということ。今できないことは、時間をかけてできるようになれば良いです。まずは素直に話を聞く姿勢から、しっかり整えましょう。

学生時代、私は「きみはSTに向いていないね」と実習指導者に言われました。就職試験の時も「きみ、こんな成績でうちを受けようって。なめてるの?」と言われました。(◯◯ハラの話は一旦置いといて。たしかにひどい成績でした…)

STになったらなったで、新人の頃は静かで地味だったからか、勉強会とかで会ったことがある人に顔も名前も全然覚えてもらえませんでした。

秀たるものは、今でもそんなにありませんが、こんな私でも「STは天職だね」と周りに言われるほどになりましたし、「一緒に働いていて楽しいよ」と言ってもらえることもあります。いつかやってみたいと思っていた、たくさんのこともできるようになりました。人生は何があるかわかりませんが、私はSTになって自分の人生が少し好きになりました

さいごに

STという仕事を選んでくれて、ありがとうございます。これまでのどんな経験も、これからきっと役に立ちます。そして、あなたのターニングポイントになってくれるような患者さん、同期、先輩、いつかは後輩がきっと現れます。だからひとりひとりを大切に。そんな素敵な出会いがたくさんありますように。学生時代より、これからの方がずっとずっと長いので、細く長くゆっくりゆったり、ともに戦っていきましょう。

執筆者
みややん(ST)

現在は、小児から看取りまでに携わる訪問ST。回復期リハ病院、教員、急性期、ことばの教室もチラッと勤務。摂食嚥下認定STだけど、やっぱりコミュニケーションって1番根っこだよねーと思い返しているところ。

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