現役言語聴覚士が伝授!食事介助に必要な3つのポイント

「STさんが食事介助してくれると楽だわー。」「STの時間で食事介助が終わらないなら、病棟では介助できません」と、食事介助にまつわるあれこれに揉まれてきたメディッコ言語聴覚士(ST)みややんです。

食事介助って、みなさんどのようにしていますか? 

「食べさせればいいんでしょ? 」とポンポンお口へ運び、「危ないよー」と周りが言いたくなる場面もあれば、「どうすればいいのかな? 」と戸惑う方もいらっしゃるかと思います。そこで今回は、安全に食事介助するために押さえておきたい3つのポイントをお伝えします。

食事介助には楽な姿勢の調整

まずは患者さんを「楽な姿勢で整える」こと、特に足の裏に注意することが誤嚥予防の大切なポイントです。

嚥下障害がある方は一般的に、リクライニング(背もたれを後方に傾斜)しているほうが誤嚥しづらい場合が多いです。リクライニングしてベッドや車いすから姿勢が崩れないように、クッションやタオルで調整しながら楽な姿勢を作りましょう。

そして注意してほしいのが足の裏!足の裏が床についていないと食べづらいんです。(ぜひみなさんもやってみてください)例えばおしゃれなバーで(バーじゃなくても良いですけど…)、高い椅子に座ってお酒を飲むこともあると思いますが、足が疲れたと感じた経験はありませんか?「ごっくん」と飲み込むときはそれなりの力が必要で、足の裏が床についていないとその力が入りづらいのです。姿勢によっては床に足がつきづらいこともあると思います。そんなときはフットレストや、雑誌を重ねた足台などを使って、足の裏がつくように調整しましょう。

一口量=小さめスプーン1杯で

食事介助では多くの場合、スプーンを使います。口の大きさ、誤嚥の有無もいろいろなので、一概には言えませんがなるべく「小さめ」にしましょう。

”スプーン”と言っても、大スプーン(主にカレーを食べる時に使う)、小スプーン(ティースプーン)、その間にあたる中スプーン、パフェスプーンと大きさ、種類は様々ですが、嚥下障害の重度な患者さんほど「一口、1~2回ごっくんで完了(口の中が空になる状態)」にしたいのです。

「少しずつしか食べられないから食事が進まない」と時々言われるのですが、

A)大きいスプーンで食事介助をする→むせて食事が中断する。(時にはかき出すことも必要)

ことと、

B)小さいスプーンで介助する→むせずに食事が終了する。

では、実はBの方がよく食べられることもありますし、むせない分、食べ終わってから患者さんが疲れないということもあります。食べられそうであれば、少しずつスプーンに盛る量を増やすなどしてみていけば良いので、まずは小さめスプーンで介助していきましょう。

食事介助の速さ

しっかり嚥下してから{喉頭(のど仏)が上がって、下りてきてから}、次の一口を介助する。急かさず、時間を置き過ぎず、その人に合わせたスピードで、、、これに尽きます。

前述した一口量の話しにもかかってきますが、大盛1杯だと何回も嚥下しなくてはならず、「もう飲んだ? まだ口の中にある? 」とわからなくなってしまうのです。患者さんの1口量を知り、嚥下するスピードを知ることで安全な介助が行えます。

まとめ

「STが介助すると誤嚥しないけど、他職種や家族が介助すると誤嚥する」ということはよく耳にします。たしかにSTは食事介助も経験数が多いですが、1人の患者さんに1人のSTがついていられるから、余裕を持ってできるということが大きな違いのように感じます。

嚥下障害は「いつも溺れているようだ」と表現されることもあるくらい、時に苦しいものです。時間のない中で、そして不安のある中で、介助をすることは決して楽なことではありませんが、少しでも食事が楽しいと感じてもらえるように、こちらも介助したいものです。

執筆者
みややん(ST)

現在は、小児からお看取りまでに携わる訪問ST。回復期リハ病院、教員、急性期、ことばの教室もチラッと勤務。摂食嚥下認定STだけど、やっぱりコミュニケーションって1番根っこだよねーと思い返しているところ。