専門用語による他職種間でのコミュニケーションギャップに気をつけて!

医療の現場における他職種連携では、専門的な内容をやりとりしなければなりません。しかし、情報伝達の中心となる用語が統一されておらず、その捉え方や解釈が曖昧になったり異なったりすることがあります。こちらが何気なく普段使用している用語も、相手には伝わりにくい場合があるのです。このコラムでは、訪問看護で働く現役看護師が、専門用語を使うときにどのようなことに気をつけているかを紹介します。

他職種に伝わりにくい専門用語

それぞれの職種において、当たり前のように使用している用語が、他職種には伝わりにくいことは往々にしてありますよね。「これくらいなら理解できるだろう」と思って使用している用語が、実は相手には馴染みのない言葉だということもありえます。

私の経験から例を二つ挙げてお話します。

高齢者施設に勤務していた時のことです。介護職員の方へ患者の状態報告をする際、「足趾間浸軟ありました」と伝えたのですが、「浸軟ってなんですか?」と聞き返されたことがあります。足趾間浸軟と言えば、白癬菌により皮膚にトラブルができている時、趾(足ゆび)の間が湿っぽく、白く、柔らかくなるので、それを表現する言葉として用います。普段、看護師同士で当たり前の様に使用していたため、伝わると思い込んでいました。

病院に勤務していた時には、患者の状態を他職種に報告する際に、「タキル」や「A入っている」と言った言葉が伝わらなかった経験があります。「タキル」というのは呼吸や脈が速くなることを意味する言葉で、「A」とは「Aライン=動脈ライン」を示しますが、普段使い慣れていない職種にとっては、分かりませんよね。

この様に、相手にもわかるだろうと思っている用語が、実は伝わらない!なんて経験は誰もが一度は経験したことがあるのではないでしょうか。

あえて専門用語を使う時

一方、あえて専門用語を使う時もあります。

私は、端的に相手に情報を伝えたい時に専門用語を用いることが多いです。先にあげた例においても、「浸軟」と言えば白癬菌により趾の間が湿っぽく、白く柔らかくなっていることを表現できます。また、「タキル」や「Aライン」についても同様です。長々と説明することなく、たった数文字で状態報告ができてしまうのです。

専門的用語が相手に伝わると確認出来る場合などは、他職種であっても使用しても良いかもしれませんね。

専門用語を使わないときのポイント

では、専門用語を使わずに的確な情報交換をするにはどうすれば良いでしょうか。

私は、あれこれ難しい専門用語で表現するのではなく、観察した情報を「見たまま」報告する癖付けが必要だと考えています。

つまり、上記の例だと、「足趾間浸軟」ではなく、目で見た時の状態=趾の間がふやけて白っぽくなっているから水虫の傾向があるのではないか。といった具合です。

また「タキル」や「A」など略語を使って報告するのではなく、その専門用語の意味や指し示す事物を明確にし、それをいかに効果的に伝えるかということを考えることも必要です。

患者さんに関わる時だけでなく、他職種と関わる時にも専門用語には気をつけて具体的にわかりやすく伝えることが大切ですね。

このコラムが、普段の職場でのコミュニケーションを振り返るきっかけになれば幸いです。

執筆者
あずまっち(Ns)

総合病院、高齢者施設の経験を経て、訪問看護の現場へ。子育てと仕事の両立に悩みながら、看護師として枠にはまらないフリーランスな働き方を模索中。